株式会社サイバーエージェントが、12月2日(月)の22:00に2D仮想空間「アメーバピグ」のPC版のサービスを終了しました。これは米Adobe Systemsが2020年末にFlashの提供を終了することを踏まえたもので、併せて「アメーバピグ」と連動するWebブラウザゲーム「ピグライフ」「ピグカフェ」「ピグワールド」「ピグアイランド」「ピグブレイブ」も終了となりました。
PC版アメーバピグは2009年2月にサービスを開始しましたが、私はもともと個人ブログにアメブロを使用していたこともあり、サービス開始から2時間後にはアバターを作成してログインしていたほど超初期からのユーザーでした。そしてログインしてすぐにレポート記事を公開したものです。
当時の記事:
第36回「アメーバピグ」
あの時のシンプル過ぎる自分の部屋は最終的にこうなりました。
ドラえもんだらけ
個人的にドラえもんが大好きなので、ドラえもんとのタイアップにかなりの額を課金しました。
当時の記事:
アメーバピグに映画「ドラえもん のび太のひみつ道具博物館」ガチャが登場!
アメーバピグには藤子・F・不二雄ミュージアムとテレビ朝日のコラボエリアがあり、ドラえもんの新作映画の公開に合わせてコラボガチャを提供していました。そこで課金しまくって結果をスクリーンショット付きで個人ブログに書いたところ、なぜかその画像を海外のゲーム関係者にパクられ、それを使用したスライドをたまたま行ったサンフランシスコでのカンファレンスで偶然目撃し、後から講演者に「そのスクショ私のブログのなんだけど」と言ってムチャクチャ気まずい空気になったことがありました。
これらがパクられたスクショ。2012年に提供されていたドラえもんガチャなんですが、2012年と言えば「コンプガチャ騒動」の真っ最中だったので、その例としてスライドで使用されたのでした。
今改めて数えてみたら、このサイトに掲載したアメーバピグ関連の記事は合計370本!我ながらよくぞこんなに書いたものです。そこで、サービス終了の節目に改めてアメーバピグの歩みを振り返りたいと思います。
アメーバピグは2009年2月にサービスを開始し、それから3か月後に札幌にて開催された「インフィニティー・ベンチャーズ・サミット」にて、有望なスタートアップおよびサービスを表彰する「Launch Pad賞」に入賞するなど注目を集めました。正式な獲得ユーザー数はアナウンスされませんでしたが(本家のAmebaのユーザー数とかぶるから?)、この時既に35万ユーザーがログインしていたとのこと。
アメーバピグ、札幌インフィニティー・ベンチャーズ・サミットのローンチ・パッド賞5位入賞
リリースから約1年後の2010年3月には、早くも英語版(海外版)の「Ameba Pico」をリリースします。当時は既に仮想空間サービスは下火になりソーシャルゲームの波が来ていましたが、Webブラウザベースの2D仮想空間はまだギリギリ健在で、かつ当時は明確な年齢制限もなく、中国のグレートファイアウォールにも引っ掛かっていなかったアメーバピグは海外からのアクセスが結構多かったのです。
Ameba Piggが遂に海外進出 英語版「Ameba Pico」をリリース
「Ameba Pico」のリリースはそれを受けたもので、同時にFacebook内からもアクセスできるFacebookアプリ版もリリースし、当時流行していたFacebook内でプレイできるソーシャルゲームの波にも乗りすぐに10万ユーザーを獲得、Facebookアプリのユーザー獲得数ランキングに浮上します。
その一方、本家のアメーバピグも好調で、芸能人や企業とタイアップしたエリアやアイテムの提供も開始し、2009年内だけで100万人以上のユーザーを獲得、翌年2010年4月にはエイベックス所属のアーティスト「AAA」が実際にアメーバピグにログインするイベントを開催します。これはイベントのチケットとなるアイテムを有料課金で販売し、それを持っているユーザーだけが会場に入場できるというシステムで、会場内ではアーティストと実際にチャットで交流でき、楽曲と映像の配信も行われました。これは現在ソーシャルVRサービスで普通に行われていることで、それを2010年の時点で実現していた”速さ”に今更ながら驚かされます。
【レポート】AAAピグLIVE「AAA Heart to ♥ TOUR 2010」に参加しました
なお、アメーバピグはこのイベントで培ったノウハウを生かしてその後様々なアーティストや企業、キャラクターとタイアップし同様のファンイベントを開催。遂には来日中の海外アーティストが出演するイベントも開催するようになります。
その傍ら、海外版のAmeba Picoでは逆に日本のアーティストやキャラクターとのタイアップを開始。また2011年8月にはアメーバピグの中国版「小人国(シャオレンゴウ)」をリリースします。この頃はアメブロを含むAmebaのサービス全体がグレートファイアウォールに引っ掛かるようになっていたので、中国本土のユーザーに向けた施策だったのでしょう。
AmebaPico、ユーザー数200万人を突破! ヴィジュアル系バンドAlice Nineとのコラボも実施
Ameba Pico、初音ミクとのタイアップを開始
アメーバピグが中国進出!中国ローカライズ版「小人国」を中国のローカルSNS「Kaixin001(开心网)」にて提供
こうして、日本国内向けにはアメーバピグ、海外向けにはAmeba Pico、中国本土向けには小人国と、最盛期には3種類のアメーバピグが存在し、それぞれで独自の機能やタイアップ企画を行っていました。当初こそアメーバピグで提供されていた機能やアイテムが少し遅れてAmeba Picoと小人国にも導入されるという流れでしたが、逆に独自機能が先にAmeba Picoで提供され、それが少し遅れてアメーバピグにも導入される逆輸入パターンも出てくるようになりました。
ちなみに中国版の小人国のサービスが始まった後、中国の大手ポータルサイト「新浪」(sina.com)がどこからどう見てもアメーバピグをパクった2D仮想空間「火星微社区」(Huoxing)を公開していてぶったまげたものです。大手サイトが堂々とパクりサービスをリリースする肝っ玉の太さは勿論のこと、開発スピードの速さも凄い。事の善悪を抜きに感心してしまいました。
第41回 中国のアメーバピグパクリ?仮想空間「火星」にログインしてみた(1)
第41回 中国のアメーバピグパクリ?仮想空間「火星」にログインしてみた(2)
第41回 中国のアメーバピグパクリ?仮想空間「火星」にログインしてみた(3)
第41回 中国のアメーバピグパクリ?仮想空間「火星」にログインしてみた(4)
ところが2012年12月、英語版のAmeba Picoのサービスが終了します。
アメーバピグの英語版「Ameba Pico」、12/17を以てサービス終了
【Ameba Pico】Ameba Picoで中国人の聖飢魔II信者に会った話
以後、Ameba Picoで提供されていた機能やアイテムはアメーバピグに導入されます。加えて、本家アメーバピグと連動するWebブラウザソーシャルゲームやスマートフォン向けのカジュアルゲームが複数リリースされました。
今度のピグは街づくり! サイバーエージェント、アメーバピグ連動新作ソーシャルゲーム「ピグワールド」をリリース!
「ピグワールド」を死ぬほどプレイして建設したドラえもんのツリーハウスとデコアイテム。派生サービスでもタイアップが頻繁に行われていたので、ドラえもん関係は一通りプレイしてアイテムをGETしました。
その後もアメーバピグではタイアップエリアやアイテムの提供、イベントの開催などを行っていましたが、2013年10月に青少年の保護のため18歳以上と18歳未満とで空間を完全に分離する施策を開始します。
サイバーエージェント、仮想空間「アメーバピグ」にて青少年ユーザー保護を目的に年齢による空間分離を実施
アメーバピグはリリースから長らく明確な年齢による利用制限を設けておらず、そのため不正アクセス事件が相次いで発生し、警察からも対策を講じるよう要請されていたという経緯があり、前年の2012年3月にも15歳以下のユーザーの利用を事実上ほぼ全て制限する施策を行い大炎上していました。この空間分離はそれを踏まえたもので、未成年ユーザーと成人ユーザーのいる場所を分けて交流できないようにすることによってトラブルを回避する狙いがあったようです。でも、前年の15歳以下ユーザーの制限によって離れてしまった未成年ユーザーが、果たしてこの時どれくらい戻ってきたのでしょうか?
なお、2014年以降も毎月のように何かしらのタイアップエリアやアイテムが提供されましたが、以前ほどのユーザーコミュニティの盛り上がりは感じられなくなりました。というのも、全機能を利用でき、かつ好きなだけ課金できる成人ユーザーは忙しく、わざわざPCを開いて長時間仮想空間にログインするだけの時間的余裕はありません。また、2014年ともなれば世間はすっかりモバイルファーストになっており、時間と金を使う場所もスマートフォンアプリに移行していました。
ちなみに私がアメーバピグで最も課金していたドラえもんのタイアップアイテムも2013年を最後に提供されなくなってしまい、翌年よりタイアップ先は「LINE」と「モンスターストライク」になりました。そういえばLINEの仮想空間アプリ「LINEプレイ」が正式サービスを開始したのは2012年末。今改めて振り返ると、アメーバピグにとっての分岐点は2012年~2013年だったのかもしれません。
「LINE」の仮想空間アプリ「LINE Play」、本日より正式サービスを開始! プレオープン段階で100万ユーザー獲得
サイバーエージェントは、「Flashを使わずにPC版アメーバピグを継続するための技術検証を重ねてきたが、困難を極めたため終了を決定」したと発表しています。もしアメーバピグがもっと早い時期にFlashから移行してスマホ対応していれば、PC版アメーバピグの機能をそのまま利用できるネイティブアプリ版をリリースしていれば、また違った結末になっていたかもしれません。歴史に「if」はありませんが。
「さよなら青春」
最終日に最も多くのユーザーが集まっていたエリア。あるユーザーが発した「久々にPC開いた」という言葉が全てを物語っているように思えました。