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【TGS2018レポート】フィンランドの国民叙事詩「カレワラ」をゲームで体験 ゲーム開発者育成プログラム「Oulu Game Lab」から生まれたシミュレーションゲーム「Please the Gods」

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東京ゲームショウ2018のゲームスクールコーナーを巡っていた際、偶然こんなゲーム画面を見つけました。

【TGS2018レポート】フィンランドの国民叙事詩「カレワラ」をゲームで体験 ゲーム開発者育成プログラム「Oulu Game Lab」から生まれたシミュレーションゲーム「Please the Gods」
ピクセルアートでこの表現力!荒々しい岩とその上に生えている苔の質感表現が細密かつ美麗で思わず立ち止まってしまいました。このタイトルのキャプションを見ると…

【TGS2018レポート】フィンランドの国民叙事詩「カレワラ」をゲームで体験 ゲーム開発者育成プログラム「Oulu Game Lab」から生まれたシミュレーションゲーム「Please the Gods」
こちらはECCコンピュータ専門学校のブースで、これはフィンランド・オウル市にあるオウル応用科学大学のゲーム開発者育成プログラム「Oulu Game Lab」で開発されたタイトルとのこと。同校はOulu Game Labと教育提携しており、毎年約1週間のゲーム短期交換留学を行っているそうです。
このOulu Game Labについては私も以前からよく知っています。というのも現在私が住む宮城県仙台市はオウル市と友好都市協定を締結しており、やはりゲーム開発者育成においても協力関係にあるからです。ちなみにOulu Game Labの学生チームは来年2月開催予定のアプリ開発コンテスト「第5回仙台ゲームアプリコンテストDA・TE・APPS!2019」にも参戦予定(過去記事はこちら)。なのでこのキャプションを見た時は思わず、「仙台だけじゃなくECCコンピュータ専門学校とも提携してたのかよ!」と思ってしまいました。

【TGS2018レポート】フィンランドの国民叙事詩「カレワラ」をゲームで体験 ゲーム開発者育成プログラム「Oulu Game Lab」から生まれたシミュレーションゲーム「Please the Gods」
本作はOulu Game Labで結成されたオウル応用科学大学の学生による開発チーム「Surma Games」が手がけた、フィンランドの国民叙事詩「カレワラ」をモチーフとしたPC向けシミュレーションゲーム「Please the Gods」です。プレイヤーは主人公「Sisu」となって森の中でシャーマンや様々な神様の導きによりサバイバル生活を送りつつ、カレワラで描かれるフィンランドの古い伝説・伝承について知ることができます。

【TGS2018レポート】フィンランドの国民叙事詩「カレワラ」をゲームで体験 ゲーム開発者育成プログラム「Oulu Game Lab」から生まれたシミュレーションゲーム「Please the Gods」
基本的な画面はこんなの。横スクロールで、進みたい方向にマウスをクリックするとキャラクターがそこまで歩き、拾いたいものや使いたいものがあればそこにカーソルを合わせてクリックしたりドラッグすることで展開するなど、基本的にマウスクリックですべてを操作します。

【TGS2018レポート】フィンランドの国民叙事詩「カレワラ」をゲームで体験 ゲーム開発者育成プログラム「Oulu Game Lab」から生まれたシミュレーションゲーム「Please the Gods」
Sisuの隣にいる狼の毛皮をかぶっている人がゲーム冒頭の説明役でもあるシャーマン。「ちょっと寒い?暖かくするなら火をおこさないと」。そう、北欧フィンランドは気温が低いので体温の低下は命取りなのです。

【TGS2018レポート】フィンランドの国民叙事詩「カレワラ」をゲームで体験 ゲーム開発者育成プログラム「Oulu Game Lab」から生まれたシミュレーションゲーム「Please the Gods」
ということで、とりあえず森の中に落ちている枝を拾い集めて…

【TGS2018レポート】フィンランドの国民叙事詩「カレワラ」をゲームで体験 ゲーム開発者育成プログラム「Oulu Game Lab」から生まれたシミュレーションゲーム「Please the Gods」
ある程度集まったところで火打石で火を着けます。マッチではなく火打石を使っていることで、本作の時代設定が近現代ではなく、それどころかフィンランドがキリスト教化される以前のはるか昔ではないかと想像できるわけです。

【TGS2018レポート】フィンランドの国民叙事詩「カレワラ」をゲームで体験 ゲーム開発者育成プログラム「Oulu Game Lab」から生まれたシミュレーションゲーム「Please the Gods」
生命維持に必要最低限の火の気が確保できたら、次は食料の確保です。シャーマンから罠をもらって地面に仕掛け…

【TGS2018レポート】フィンランドの国民叙事詩「カレワラ」をゲームで体験 ゲーム開発者育成プログラム「Oulu Game Lab」から生まれたシミュレーションゲーム「Please the Gods」
獲物がかかったらそれを取ります。しかしこんな簡素な罠では獲れるのは小動物ばかり。そこで槍を使って大型動物を仕留めることにしますが…

【TGS2018レポート】フィンランドの国民叙事詩「カレワラ」をゲームで体験 ゲーム開発者育成プログラム「Oulu Game Lab」から生まれたシミュレーションゲーム「Please the Gods」
森にいる大型動物といったら狼や熊、ヘラジカなど危険な奴らばかりで、槍を持ってはいるもののとても無傷では仕留められません。自然と共に暮らす生活は常に死と隣り合わせで過酷です。

【TGS2018レポート】フィンランドの国民叙事詩「カレワラ」をゲームで体験 ゲーム開発者育成プログラム「Oulu Game Lab」から生まれたシミュレーションゲーム「Please the Gods」
しかしシャーマンは言います。「ここは神々の地だ。彼らを敬えばご加護があるだろう。」

【TGS2018レポート】フィンランドの国民叙事詩「カレワラ」をゲームで体験 ゲーム開発者育成プログラム「Oulu Game Lab」から生まれたシミュレーションゲーム「Please the Gods」
せっかく命がけで獲った獲物なんだから全部自分のものにしたいところですが、シャーマンの導きによれば神様に半分お供えした方が良さそうです。ここで「全部自分のものにする」という選択肢を選んでもバチが当たってどうにかなるなんてことはありませんが、ここはゲームの内容を鑑みてお供えしておきましょう。

【TGS2018レポート】フィンランドの国民叙事詩「カレワラ」をゲームで体験 ゲーム開発者育成プログラム「Oulu Game Lab」から生まれたシミュレーションゲーム「Please the Gods」
こうして狩猟の神様「Nyyrikki(ニューリッキ)」に狼の肉を半分お供えしたら、今後は海の神様が現れて魚を捕る網をくれました。山の幸の次は海の幸を獲りに行きます。それにしても本当に見事なピクセルアート!

【TGS2018レポート】フィンランドの国民叙事詩「カレワラ」をゲームで体験 ゲーム開発者育成プログラム「Oulu Game Lab」から生まれたシミュレーションゲーム「Please the Gods」
こうして海に魚の網を張ってしばらく待つと…

【TGS2018レポート】フィンランドの国民叙事詩「カレワラ」をゲームで体験 ゲーム開発者育成プログラム「Oulu Game Lab」から生まれたシミュレーションゲーム「Please the Gods」
やった!ちゃんと魚がかかりました!先ほどの狼の肉に加えて魚もあれば当面は食料に困ることはありません。

【TGS2018レポート】フィンランドの国民叙事詩「カレワラ」をゲームで体験 ゲーム開発者育成プログラム「Oulu Game Lab」から生まれたシミュレーションゲーム「Please the Gods」
ところが海辺で作業していたため体温がすっかり奪われてしまいました。早く火をおこさないと体力ゲージがどんどん減って死んでしまう…大急ぎで枝を拾い集めて火をおこします。

【TGS2018レポート】フィンランドの国民叙事詩「カレワラ」をゲームで体験 ゲーム開発者育成プログラム「Oulu Game Lab」から生まれたシミュレーションゲーム「Please the Gods」
ギリギリのところで間に合った…あとちょっと遅れていたら体力ゲージがカラッポになってゲームオーバーになるところでした。

こうしてゲームを進めていくと、近代以前のフィンランドの暮らしがいかに厳しいものだったかを心底理解できると共に、「身の回りの至るところに神様がいる」「命を与えもするし奪いもするのが自然であり神様でもある」という、日本古来の宗教観であるアニミズム(Animism:有機物・無機物を問わずあらゆるものに魂が宿っているという考え方)と同様の宗教観をフィンランド人もかつては持っていたことが分かります。以前、北欧・ロシアに分布するフィン・ウゴル系民族の神話をモチーフとしたインディーゲーム「The Mooseman」のレビュー記事でも書きましたが、ゲームはその地域ならではの独自の文化や歴史を他の文化圏や民族に属する人々に分かりやすく伝えるメディアとしても機能するんですよね。遠い異国の見知らぬ人が開発したゲームをプレイして、彼らの先祖が自分たちと似た宗教観を持っていたことを偶然知るなんて、実に贅沢で貴重な体験です。

【やってみた】北欧・ロシアに分布するフィン・ウゴル系民族の神話を体験できるインディーゲーム「The Mooseman」

現時点で本作はまだ開発段階で、2019年1月にSteamにてリリース予定なのだとか。つまり実際にプレイするならECCコンピュータ専門学校のブースに試遊出展されている今がチャンスです。テキストはすべて英語ですが、そんなに難しいことは書かれていないのでなんとなくの感覚でも理解できるでしょう。もし何が書かれているのかサッパリ分からなくても、この秀逸なピクセルアートを見るだけでも十分完成度を理解できるでしょう。

東京ゲームショウ2018レポート一覧はこちら

 

カレワラ物語―フィンランドの神々 (岩波少年文庫 587)
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