「here AND there」は、2018年11月3日~4日に開催された、「もし、藝大にゲーム学科ができたら?」というコンセプトの企画展『東京藝術大学ゲーム学科(仮)「第0年次」展』から生まれたiPad向けの「動く絵本」です。開発者の小光(Komitsu)さんが東京藝大に通いつながら描いた作品がほぼそのままデジタル化されており、紙の本では不可能な、まさにゲーム的アプローチならではの「発見の楽しみ」が味わえるタイトルでした。
オリジナルの作品はサインペンで描かれています。敢えて筆致と塗りムラを残した作風が、むしろデジタル化した際になんとも言えない味わいを生み出します。
本作には、ステージを進むとか、敵と戦うとか、なにかを解き明かすといった所謂「ゲーム性」はなく、また笑えたり感動したりといった明確なストーリーも存在しません。タイトル名の「here AND there」は「あちこち」という意味で、異なる3種類の場所で思い思いに過ごす人物たちと彼らを取り巻く環境を観察し、気になるところタップして、新たな反応を発見するというのが主な操作方法です。それはゲームで遊ぶというよりも、玩具を動かして遊ぶ感覚に近いかもしれません。
部屋の中でくつろく男性。傍らの犬をタップしたら、それまでの平べったくなっていた姿から一変、シャキッと(?)立ち上がりました。
また、本作は端末の傾きにも対応しており、画面をタップするだけでなく、見る角度を変えることでも新たな何かを発見することができます。
実際に角度を変えて窓の景色を見たら…何かいる?!鳥?
こちらは街のベンチでくつろぐ女性。何気なくバッグをタップしたら…
中からジッパーを開けて長い腕が伸びてきました。しかし腕は見えるものの体は見えず。犬?猫?一体何者なのでしょうか?
どこかをタップしたら何かが起こるというシステムは、ポイントクリックアドベンチャーに似ているかもしれませんが、本作はインタラクティブな仕掛けを随所に仕込んでいても、前述のとおりゲーム性には主眼を置いていません。また、インタラクティブな仕掛けに触れてもらうためのUIも敢えて排されており、チュートリアル的な導入部さえありません。つまり、どうやってプレイして、どうやって楽しむか自体もプレイヤー自身が探して見つけなければならないというわけです。だからこそ、思いがけない挙動や隠し要素を見つけた時は感動もひとしおです。
本作はiPad専用アプリとしてなんと完全無料で配信されています。ぜひ実際に触って、それぞれの風景の中に隠されたキャラクターや挙動を見つけて下さい。