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【特集コラム】Instagramで実家の畑を撮影したら横溝正史テイストになった

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突然ですが、私は昔から廃墟や廃屋、廃村の写真が好きで好きでたまりません。所謂「廃墟萌え」というやつです。人工物が朽ちていく独特の退廃美がたまらなく好きで、市販の廃墟写真集や廃墟特集の雑誌のみならず、最近ではコミケなどの同人誌即売会に行くと必ず廃墟系のスペースをチェックしてしまうほど。

これまでコミケなどで買った廃墟系の写真集の数々。

しかしこうして様々な廃墟系写真集を見ていくうち、いつの間にかある思いを抱くようになりました。それは、

「私の実家も寂れっぷりでは負けていない」

私の実家は秋田県で果樹園(主にりんご)をしているのですが、その環境がはっきり言ってヤバイです。

どうしてこんな場所に住んでいるのだろうかと。まあそれはご先祖様が落武者だったからなのですが。しかしこうして改めてGoogle Earthで見ると、まさに落武者のためにあるかのような引き蘢りベストスポットですね。昔の人の土地を見抜く目はスゴイ!

私の実家のある集落はまだ「限界集落」(人口の50%以上が65歳以上の高齢者になり社会的共同生活の維持が困難になった集落のこと)というレベルではありませんが、それでも最近は若い跡継ぎが不足し高齢者だけでは山奥の畑の手入れが行き届かなくなり、さらに昨年の冬は豪雪でりんごの木が痛んでしまい畑自体がどんどん荒れてきているとのこと。

そこで、ちょうど今年の夏に農作業の手伝いで帰省する機会があったので、実家周辺の景色を題材に「廃墟写真」っぽい写真を撮影してみることにしました。といっても、私はちゃんとした撮影機材一式どころか一眼デジカメすら持っておらず、取材時でさえコンパクトデジカメとiPhone4のカメラで済ませてしまう有様。というわけで、お手軽且つ無料でそこそこなクオリティの画像が作れる人気iPhoneアプリ「Instagram」を使って撮影することにしました。

「Instagram」については既にあちこちで書かれているので今更説明の必要もないかもしれませんが、このアプリの便利なところは、あらかじめ撮影した写真にも様々なフィルタをかけてどれが一番良いか検討できるということ。フィルタの種類が違うだけで同じ写真でも全然印象が違ってくるから不思議です。

というわけで早速やってみましょう!まずはこちら、山の畑に行く時に通るあぜ道です。

これにInstagramのフィルターをかけると…

あれ?…なんか…ホラーテイストになった?… なんかこう、向こうから”何か”がやって来るような雰囲気が…

まあ気にせず次にいってみましょう!

こちらは先ほどのあぜ道の写真あった樫の巨木の根元にある石神。子供の頃から親や年寄りに「これは神様だがら前通るどぎは拝め」と言われていましたが、未だにどんな謂れがあるのか全く知りません。もしかしたら親や年寄りも知らないのかもしれません。

これにInstagramのフィルターをかけると…

これはヤバイ。なんかホラー系のサウンドノベルの画像素材に使えそうです。

気を取り直して次!

これは全国どこでもそうだと思うのですが、山の頂上には必ず神社が祀られているもの。なので山道の途中にこんな鳥居が設置されています。横にある杉の木との対比がなんか良いなと。

これにInstagramのフィルターをかけると…

この鳥居をくぐると”見知らぬ世界”へ行けそうな気がする。そして二度と戻って来れなさそうな気もする。

次!

扉ぐらい直せと。これは山道の途中にある祠(これも詳細不明)なのですが、もう壊れっぱなしです。

これにInstagramのフィルターをかけると…

ヤバイ。もうヤバイという言葉しか出てこない。

ちなみに祠の中はこんな感じになってます。

これにInstagramのフィルターをかけると…

やらなきゃよかった

 

…と、予想外に横溝正史の田舎モチーフの作品テイストになった山道を抜けて、やっと畑エリアに到着!

これにInstagramのフィルターをかけると…

やっとホラーっぽくない写真が撮れた…。やはりカラーだと不気味な感じは無くなりますね。しかし、なぜかそこはかとなく”昭和臭”が漂っています。とても21世紀の風景とは思えません。

道の真ん中に早生りんごが落ちていました。

これにInstagramのフィルターをかけると…

お!これは我ながら渋い写真になったような。この一点透視図法な構図が良いんじゃないかと思うのですがどうでしょう?りんごが虫に食われているのも良いアクセントになっているような気がします。

しかし実際に畑エリアを見て衝撃的だったのは、自分が実家にいた頃とまるっきり風景が変わってしまっているということでした。以前はそこらじゅうにりんごの木が生い茂っていたのに、どこの家もどんどん畑を棄てているので山が丸坊主になっています。

これはりんごの木を伐採したあと。伐採後切り株を掘り返さずにそのままにしておくと、根っこは生きているので次世代の芽が出てきます。

また丸坊主どころか、畑の跡地が猛烈な勢いで森に還っている光景も随所で見られました。

ここは去年まで普通にりんご畑だった所なのですが、もはやそんな面影は全くありません。もう眼前に草木が”迫って”くる。実際にこういう光景を目にすると、森とは「浸食」するものだということが実感できます。ふと「宮崎駿さんの『風の谷のナウシカ』の腐海は自然の描き方として正しかったんだなあ」なんて思ってしまいました。

そしてさらに山奥の畑に行くと…

おらこんな村いやだ

これは、昨年末〜今年の初めの雪害でりんごの木が修復不可能なくらいに折れてしまったもの。もう再生できなくなってしまった木は、通常だと切り倒して薪にしたり木工品の材料にしたりとリサイクルするのですが、高齢者だけだとそうした力仕事もままならず、こうして放置されたままになってしまいます。もはやこの風景には寂寞感しかありません。

そしてふと、りんごの木が全て伐採されているのに農作業小屋だけポツーンと残されている場所に目が止まりました。

しかしこの農作業小屋も打ち捨てられているようです。

脇にあった農作業用水の井戸もかなりヤバイ空気を出しています。絶対貞子が這いずり出してくる。

もうちょっと高いところから見下ろすと本当に丸坊主になっているのが分かります。

それで後から母に聞いたのですが、なんでも昨年1年間だけでここの谷で計5人もの人々が首を吊って自殺しており、先程の農作業小屋はその自殺現場の一つだったとのこと。

そういうことは早く言ってくれ

ちなみに秋田県は自殺率日本一と言われている自殺大国で、特に6月に自殺する人が多いのだそうです。自殺ダメ!絶対!

なお、これらのInstagram写真を母に見せたところ「何だが八つ墓村みでぇだ。まあ家も八つ墓村どたいして変わらねぇがw 」と言っていました。やはり母の目にも横溝正史テイストに映ったようです。

 

廃墟ディスカバリー
廃墟ディスカバリー

八つ墓村 (角川文庫―金田一耕助ファイル)
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ワイド版 風の谷のナウシカ7巻セット「トルメキア戦役バージョン」
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