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【VW Londonレポート】ヨーロッパ地域の仮想空間企業が集った2日間~レポート(1)~

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10月20日(月)・21日(火)(イギリス時間)の2日間、ロンドンのQueen Elizabeth II Conference Centreにて、ヨーロッパ地域の仮想空間関連企業の出展とカンファレンスのイベント「Virtual Worlds London」(Virtual Worlds Europe)が開催された。

同イベントの運営は、先月アメリカのロサンゼルスで行われた「Virtual Worlds Conference and Expo」を主催したVirtual Worlds Managementが開催するもので、昨年に続き今年で2回目の開催となる。しかし正直に言うと、イベントの規模そのものはL.A.のときに比べるとかなり小規模で、一瞬肩透かしを食らってしまった。

【VW Londonレポート】ヨーロッパ地域の仮想空間企業が集った2日間~レポート(1)~
こちらが会場のQueen Elizabeth II Conference Centre。展示会及び会議用のイベント施設で国会議事堂の近く、さらに道路を挟んで向かい側がウェストミンスター寺院という好条件な場所なのだが、東京ビッグサイトや幕張メッセのような広い施設ではなく、小さな部屋がたくさん集まっているような施設だ。

【VW Londonレポート】ヨーロッパ地域の仮想空間企業が集った2日間~レポート(1)~
こちらがステージのある一番広いホールだが、200~300人が入れば満員になりそうなところで、取り立ててもの凄く広い場所というわけではない。

【VW Londonレポート】ヨーロッパ地域の仮想空間企業が集った2日間~レポート(1)~
ということで会場は4階に分かれており移動がかなり面倒だった。しかも1階と4階が講演フロアで、2・3階が展示フロアという構成なので始終上ったり降りたりの繰り返し。なお、イギリスでは建物の地上階(通常の1階)を"ground floor"と呼び、その上の階層を" first floor (通常の2階)"、"second floor (通常の3階)"…と数えるので慣れないと少々ややこしい(案内を手書きで書き直しているのもそのため)。

ロンドンという開催場所からかヨーロッパ地域の企業が多く出展しているが、出展ブース数もL.A.に比べると少ない。それにしては入場料は995ポンド(約15万円)と結構な価格だが、このイベントは一般人向けのものではなく業界関係者向けのものであり、考えようによってはこじんまりとした環境でゆっくりと交流・商談できるのは貴重な機会ではないだろうか。特に海外のイベントでは講演者も自分の出番が終わった後は普通に会場内を歩いているので、普段は会えない有名人や大物とも話せるチャンスがある。

■仮想空間はこれまでのWebを補う存在
【VW Londonレポート】ヨーロッパ地域の仮想空間企業が集った2日間~レポート(1)~
そんな「Virtual Worlds London」のトップを飾ったのは、Second Lifeを運営するLinden LabのCEOであるMark Kingdon氏。氏はまず現在のSecond Lifeユーザーの概要を説明。それによると、現在のSecond Lifeユーザーの45%が18~24歳までの若者で、「プラットフォームが若返っている」状態にあるという。また氏は現在のSecond Lifeに「第二の波が来ている」と分析。「第一の波では、ユーザーはSecond Lifeの中で様々な試行錯誤をし、ダイナミックな実験を行ってきた。それは非常に楽しいものであり、多くのユーザー同士の絆を生んだ。しかし第二の波では、今度は企業がビジネス活用という視点から仮想空間を考え始めている。我々は、3D仮想空間がこれまでの2DのWebにとって代わるものではなく、むしろWebを補うものであることに気づき始めているが、それは歓迎すべき変化だろう」と語った。また氏は、離れた場所にいる人同士が簡単にコラボレーションできる革新的な協業ツールとしての仮想空間についても言及。実際Linden Labの全スタッフの約20%は、アメリカの本社から離れた場所でそれぞれ仕事をしているが、彼らはSecond Lifeのインワールドでお互いコラボレーションをしているという。氏は「仮想空間を協業ツールとして活用すれば、家に居ながらにして世界的なイベントにも出席できるだろうし、災害時の避難訓練シミュレーションや言語学習、新商品のデモンストレーションなど様々なイベントに参加できるだろう。そう考えると、企業利用の可能性には限りがない」と例を示した。
なお、同社はこの日、仮想空間エージェンシーのRivers Run Redと共に、企業でのコラボレーションを支援するツール「Immersive Workspaces 2.0」の提供を開始すると発表した。

また氏は、現在ファイアーウォールでSecond Life内のエリアを管理し、より安全な環境で作業ができるようαテストに取り組んでおり、第1四半期中にはβに移行したいと抱負を語った。そして最後に「Second Lifeは今後もユーザーが様々な実験を行えるクリエイティブな場でありながらも、より革新的な発展を遂げていくだろう」と延べ講演を締めくくった。

氏の講演の中にあった「(仮想空間は)Webを補うもの」という言葉は、今年5月に出されたGartnerのリリースにも繋がるものがあり、実に興味深いものだった。そもそも世の中に革新的なものが生まれた際、いくら革新的とはいえいきなり従来のものにとって代わることなどあるだろうか?例えば電球が発明された以後もランプやロウソクが完全に無くならなかったように、ものもサービスも緩やかに人々の生活に溶け込み、徐々に移り変わっていくのではないだろうか。今回の氏の講演からは、仮想空間も最初期の熱狂的に迎えられ試行錯誤が繰り返された時期を一旦過ぎ、じっくりと腰を据えて具体的な活用方法が模索される時期に入っていることがうかがえた。

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