2008年バーチャルワールドの展望を語る インタビュー

第2回「テレビ業界」第1部 テレビ東京 横銭秀一氏

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【特集:2008年バーチャルワールドの展望を語る!】第2回「テレビ業界」第1部 テレビ東京 横銭秀一氏
この夏、テレビ東京では「テレビ」と「レトロ」をテーマにした夏の祭典「テレトロ祭り」をセカンドライフで開催した。島(SIM)ひとつを丸ごとプロデュースする手法は「日本のテレビ局として初めて」(同社プレスリリースより)の試みという。THE SECOND TIMESでも開催中に一度インタビュー取材を行っている。
同企画ではセカンドライフでのコミュニティ形成、ユーザー主導コンテンツの扱いやその効果、運営上の課題、広告媒体としての可能性など、様々な視点で活用が行われた。その結果は後日報告書として発表されている。セカンドライフでの活動がこうした形で発表されるのは珍しい。
同局の取り組みについて、株式会社テレビ東京メディア事業推進本部デジタル事業推進局局次長の横銭秀一氏に話を聞いた。

―― この夏にセカンドライフを活用していかがでしたか?
「表現しているクオリティが格段に上がってきていると感じています。
まだ、規模としてマスではないけれども、表現としては次世代のものとして有力と考えています。3Dだけで表現しようとするとPCのスペックの問題などで難しいかもしれないですが、(すでにある表現である)テキストと組み合わせることで(今までの表現方法とは)違うものができてくるのだろうなと思います。最近はご存じのようにテレビでCMの広告収入が減少傾向にある中で、もちろん今後の主流も番組の提供ではあるのですが、例えば番組のホームページでもビジネスができないかと考えています。
現在の番組ホームページは画像とテキストであらすじがあるだけといったものも多いのですが、ここが3Dで表現できるものになると番組とは違った形で視聴者が参加できるメディアに変わるんじゃないかと。番組から派生する3Dの世界を視聴者の皆様に楽しんでいただくという形ができれば、番組とは別の収益源となるものができるかもしれません。3Dだけでというのは限界があると思いますが、これを(コンテンツのひとつとして組み合わせ、)応用すれば、映像とはまた違った『売れるコンテンツ』ができるのではないかと期待を持っています。ただ、可能性はあるのですが、すぐ結果がでるわけではないので、そこが会社を説得する材料としてはまだ弱いという現状はあります。可能性はすごくあると思っています。」

―― これまで企業参入事例は多くあっても、その具体的な結果について積極的に公表されることは少なかったと思います。そうした中で、今回、テレトロ祭りの結果について報告書がまとめられたことは大きな意義のひとつだと感じました。
「検証の意味でこうした分析は必要と考えていました。みなさんにお渡しした報告もすべてではなくて、社内ではもっと細かく様々な分析を行っていました。この報告書がそうです。」

―― これは厚いですね!
「アクセス数や、どういったコンテンツに興味を持ってもらえたかなどのほかにも、広告をお願いする場合もどのような手順で進めたか、そして成約に至らなかった場合はどこがネックになっていたのかということまで分析しています。例えば、あるメーカーさんなどはぜひ出したいといってくれたのですが、そのメーカーさんのキャラクターの権利をメーカーさん自身が持っていなかった。そして、権利を持っている作者の方は2Dのキャラクターを3Dに作り直すことができないということで、結局お断りされてしまったということもありました(笑)そうした課題をまとめています。」

―― テレビ東京さんというとアニメに強いですが、3Dで展開しようとすると同様の課題がありそうですね。
「そうですね。そういう方向にいきたいというのはありましたが、2Dのキャラクターを3Dにするということがまず難しく、2Dの作者の方が自身で作るわけのではないので、3Dにすることに抵抗を感じしてしまうという面もあります。また、アニメは出版社さんが版権を持っていることが多いので、調整が難しいという事情もあります。今後は、例えばすべての権利を自社で持って3Dを前提にしたアニメの制作も検討したいと考えています。放送局なので、まずは地上波にかけるということが第一ですが、放送にプラスアルファする形で3Dで展開できるかもしれないと考えています。」

―― 権利関係以外にはどういった課題があるでしょうか。
「セカンドライフは発展途上ということもありますが、まだ不安定さがありますね。テレトロ祭りでも花火イベントで人がたくさん集まったときなどにSIMが落ちてしまうことがありました。グランドフィナーレのときも軽くするために裏で一生懸命オブジェクトを消していたりしました(笑)
また、技術的にはサーバ分割などで、1000人同時アクセスくらいはいけるのではないかということだったのですが、メディアとして考えたら『それでも1000人か…』と。マスメディアとして生かしていきたいと考えるとまだ厳しいです。
またアニメのターゲットである若い層のことを考えると、多少解像度などの制約はあってもスペックが高くないPCでも見られた方がいい。もちろん、できればきれいなのがいいですが、多くの人が見られるという面を優先したいです。」

―― その他にはどういった活用法を考えているのでしょうか。
「一方通行の3Dコンテンツ提供だけではなく、コンテンツの中に入って視聴者同士がコミュニケーションする、ということが新しいので、それは注目しているところです。コンテンツの3D展開以外にはCMとの連動を考えています。例えば、遊園地の新アトラクションのCMをうって、仮想世界でそのアトラクションを疑似体験してもらい、意見をもらってクライアントに伝えるということができるだろう、と。テレビCMは広く認知させるという力は非常に強いのですが、販売促進効果やユーザーの動向というのはつかみにくい。組み合わせによってこれがつかめるものにし、視聴者が実際に体験してその反応をフィードバックできるものになれば面白いと思います。そうした検討も進めています。」

―― テレトロ祭りの成果のひとつとしてコミュニティの形成があると思います。これは当初から意識していたものなのでしょうか。
「ユーザーの方が自由にものを作ったり置いたりすることへの懸念が一部であったため、7月当初は(ユーザー主導コンテンツを)置く予定はありませんでした。ただ、やっていくうちにあまりがんじがらめでは広がっていかない感触を持ったので、サンドボックスを作ったりしてみました。また、ユーザーの方と話しているとみなさんいろんなアイデアを持っている。そして話していると『あ、この人絶対悪いことはしないな』というのもわかるわけです。それでお任せしようかな、と。また、ある時、居酒屋の店長が風邪をひいてしまい、(お店番がいなくなることで)お客さんが来なくなってしまったことがあったので、セカンドライフの中で面接して店員の仕事をお願いしたりしました。『じゃあ、100リンデンドルくらいで…』とか(笑)(セカンドライフ内でお金を稼ぐ方法のひとつの)キャンピングよりも割がいい、ということで引き受けてもらえました。それで人の輪が広がったのは面白いなと思いましたね。」

―― そのコミュニティがその後も続いている「いせや」ですね。(※テレトロ祭りのSIMにあった居酒屋「いせや」は現在、ユーザーの手で「Honmoku」SIMに再建されている)では、最後に来年の展望を聞かせてください。
「番組ホームページコンテンツの一部に取り入れられたらいいなと思っています。しばらく遊んでもらえるような、ホームページだけで楽しめるものにしたい。そのために3Dのコンテンツを利用できれば。しかも、低スペックなPCでも大丈夫、と。
その前段階としては動画の活用を考えています。きちんと撮影して編集すれば、低スペックなPCでもきれいな3Dの映像を楽しんでもらえるのではないかと思っています。
低スペックPCでもOKにする方法ということでいうと、他のバーチャルワールドサービスの活用もあるかもしれません。
あと、テレトロ祭りをやったことで、3D業界関係の方からのアプローチがたくさんあったのもよかったですね。私自身もリアルビジネスのコミュニティが広がりました(笑)」

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