2008年バーチャルワールドの展望を語る インタビュー

第4回「大手ITベンダー」第1部 日本IBM 早野誠也氏

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2007年秋に発表された「国内ITブランド調査2007」(調査:アイ・ティ・アール)で1位、2位を獲得した日本IBMと富士通。既存のITビジネス分野で確固たる地位を築く両社は、バーチャルワールドに何をみるのか。
IBMといえば、2006年にCEO自ら3Dインターネットを含む10種類のイノベーションアイデアを推進するため、2年間かけて1億ドルを投資していくと発表して以来、さまざまな取り組みを行っている。新しいところでは2007年秋にリンデンラボと共にバーチャルワールドのオープンな標準規格を開発するための共同研究を行なうことで提携した。日本IBMもこうした世界的な動きに加え、セカンドライフで独自のSIMを構築し、研究を始めている。大手ITベンダー第1部は日本IBM グローバル・ビジネスサービス P&e UCDサービス マネージング・コンサルタントの早野誠也氏に話を聞いた。
【特集:2008年バーチャルワールドの展望を語る!】第4回「大手ITベンダー」第1部 日本IBM 早野誠也氏
グローバル・ビジネスサービス P&e UCDサービス マネージング・コンサルタント 早野誠也氏
―― IBMはバーチャルワールドなどの3Dインターネットに対しても力を入れていますが、どういった活動があるのでしょうか。
インフラを後押しする、標準化するということをサポートしています。それにはたゆまぬ努力が必要なのですが、同時にどういった見返りがあるかもわからない、というリスクもあります。
ただ、3Dインターネットに限らず、IBMとしては以前からそうしたインフラに対するサポートをしてきました。インターネットもかつては研究者のものであったころは、ネットで物を買うということは考えられなかったと思うんですが、そうしたインフラをより安定した安心なものとするための働きかけをIBMとしてもしてきました。3Dインターネットへの活動もこの流れに沿うものです。
―― そうした活動の検討はどのように行っているのでしょうか。
IBMの場合は「リーダーを決めて、メンバーを集めて、合宿して」というのではなく、いきなりネットで集まって「ジャム」ですね(ここでは音楽演奏でいうジャムセッションのように共同で検討することをさす)。例えばIBMでは2006年の7月に全世界で72時間の連続して議論を行う「イノベーション・ジャム」を開催しました。その際には議論をテキストマイニングして「今熱いトピック」といったものを随時わかるようにする工夫も施されていました。IBMの中にはVUC(virtual universe community)という3Dインターネットを研究するコミュニティがあるのですが、ここでもジャムを主催しました。
また、社内で3Dインターネットにかかわっているのは5000人くらいですね。そのうち、セカンドライフ関係は1割くらい。調査研究活動の中には「War of World」といって各バーチャルワールドのレポートを競う活動もあります。こういった活動を見ていると、自分の会社ながら「こいつら本気だな」と思いましたね(笑)
―― 日本での活動はどうでしょう。
2007年はだいたい30社くらいにプレゼンしましたが、「IBMはどういうことを考えて3Dインターネットに取り組んでいるのか」ということをよく聞かれますね。つまり、「セカンドライフやバーチャルワールドのことはなんとなく知っているけど、実態はよくわからない」という実情があって、では果たしてどれくらいビジネスとして取り組んでいいものかがわからない。なので、その目安としてIBMの考えを聞きたいという方が多いです。
―― その要望は多そうですね。IBMとしてバーチャルワールドに取り組む理由というのはどういった点があるのでしょうか。
長期的にみると、コンピュータが個人でも使えるようになり、携帯が高度化したりしていく中で、以前に比べてユーザーのやりたいことがどんどん増えてきました。3Dインターネットも、やりたいことを実現するためのITサービスのひとつとしてお客様に出さなければいけないと思っています。
―― なるほど。
(バーチャルワールドのような)3Dに関して「皆が躊躇している間に先にやりたい」というお話もあることが結構多いんですが、そうした場合も、まずはお客様の3Dに対する立ち位置とか、実際にどういった目的を考えているのか、といったところまでディスカッションをするんですね。そうすると、3Dインターネットに行きつく前に、他のWebサービスを活用してコミュニティを育てるってことになるかもしれませんし、携帯を使うということになるかもしれない。当り前の話なんですけど、そうした基本的なところをディスカッションして、というところからアプローチしていますね。
―― お客様としては3Dやバーチャルワールドでなにかできるかもしれないと思っていても、実は他の手法のほうが適していたり、バーチャルワールドを利用する場合もより生かした活用方法があったりするということですね。
3D空間を活用する場合もセカンドライフばかりではなく、Webで利用できるフラッシュベースの軽いものや別のサービスを利用することも考えられます。そうやって目的によってセグメンテーションされて、それらが全体として「バーチャルワールド」ということになれば、今われわれが(セカンドライフの運営元であるリンデンラボ社などと)進めているオープンスタンダードなバーチャルワールドであったり、ユニバーサルアバターであったり、セキュリティソリューションといった試みと合わさっていくのかな、と。そうすれば、バーチャルワールドというものがどんどん広がっていっても、どこかで基本的な部分はちゃんとつながっていて、個人はIDなりでアイデンティティが保たれる、という安心感ができる。そうした世界が来るんだろうな、という感覚は変わってないですね。
―― お客様とディスカッションする中で適切な解を提案するためにも、そうした先を見据えながらの継続した調査・検証は必要なのですね。
最後に、2008年の展望を聞かせてください。

2007年はやはり研究的な部分が大きかったので、来年は実行していく年にしたいですね。実際に制作するか、コミュニティ形成を後押しするのかといったようなレベルはいろいろあると思いますが。日本IBMとして、日本のお客様を理解しているという立場をうまく出していけるとよいと思っています。

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