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【Japan Expoレポート】パリで寿司屋が異常増殖 その意外な理由とは?

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今回のJapan Expo取材中、私はパリのナシオン (Nation)地区に泊まり主に地下鉄とバスで移動していました。ここは高速地下鉄RER、普通の地下鉄、バス、トラム(路面電車)とほぼ全ての交通機関の拠点が集まっているうえに、下町の買い物エリアとして地元の若者にも人気のバスティーユにも歩いて行こうと思えば行ける距離という非常に便利なところだったのですが…

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ナシオン広場

このナシオン地区に異常に寿司屋があるのです。どれくらいたくさんあるかというと、ナシオン広場から宿泊先のホテルまでの約10分の道のりに3件ありました

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↑こんな感じ。寿司屋といっても、日本のようにカウンター席に座るのではなく他のパリのカフェと同様に外のテーブルでドリンクを飲みながら友達や家族と談笑できるような、レストランやカフェ、パブのような店構えです。こんなに密集してお客さんの取り合いにならないんだろうか?ちゃんと採算取れてるんだろうか?と疑問に思いましたが、毎日Japan Expoの帰りに店先を覗いてみたところ、どの店も連日満員で店員さんもてんてこ舞いのようでした。

そこでスマホ向け位置情報SNS「foursquare」でざっと検索して調べてみたところ…

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半径2km以内に出るは出るは…もう「道を歩けば寿司屋に当たる」状態です。異常増殖と言ってもいいくらい。

個人的に面白かったのはこれ↓

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Otaku Sushi

なんだこれwwwwwwwwwww
やはり連日ヲタクが集まるお店なんでしょうか?時間が無くて実際に行って確かめられなかったのが本当に悔やまれます。

JETRO(日本貿易振興機構)によれば、フランスでは2000年代に入り日本食を扱うお店が激増したとのこと。今ではその数はパリだけでも1500件以上にものぼり、寿司以外のうどんやラーメンなどの軽食も含めるともはや数を把握できないくらいなのだとか。しかしその大半は中華レストランから転身した中国系を中心にしたアジア人による経営で、日本人が経営するお店は2ケタ程度だそうです。今では「日本と言えばウケる」と普通のカフェでさえ途中から寿司屋に転身するまでに。

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例えばこちらのお店ですが、店構え自体はごくごく普通のフランスのカフェですが、テーブルの上には箸が置いてあります。黒と赤で統一されてオシャレな雰囲気ですね。

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寿司の隣に「TANDOORI」(タンドゥーリー)の文字が。寿司とインド料理ってどういう組み合わせだよ!絶対後から寿司始めただろ!というお店w

…という感じで、実際のところは中国系を始めとする日本人以外のアジア人が経営しているお店ばかりです。日本人が経営するお店のほとんどはアッパーミドル層を対象にしており”富裕層のお店”になっているようです。なんだか家電製品と同じような状況に…

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とは言え、中国系寿司屋が安いというわけではなく結構良いお値段です。私もいくつかのお店に入ってみたのですが、ちゃんと食べようと思えば10ユーロ以上するのは当たり前。現在のレートで1ユーロは129.8円なので10ユーロだと約1300円。1300円の食事って豪勢ですよね。

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こちらは味噌汁とサラダとドリンクが付いたシャケ丼セットですがお値段は16ユーロ。日本円に換算すると2000円超え!1食2000円なんてどこの金持ちのメシだ!!

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参考までにフランスのファーストフードチェーンのメニューはこんな感じ。10ユーロ以上のメニューはまずありません。

というわけで、中国系寿司屋も決して「安い店」ではありません。それなのにどこのお店にも毎日お客さんが入っていて客の取り合いになるわけでもなく共存している。そんなにフランス人は寿司が好きなのでしょうか?もし好きならどういった点に惹かれるのでしょうか?

そこで、泊まっているホテルのフロントの人が英語が喋れるノリの良い兄ちゃんだったので試しに質問してみたところ、意外な答えが返ってきました。彼によれば寿司は「誰もが食べられるパーフェクトな料理」なのだとか。
というのも、現在のフランスは所謂”白人”の国ではなく、アフリカ系、アラブ系、南〜東南アジア系などありとあらゆる人種・民族が混じり合って暮らす多民族国家です。当然宗教も多様化しており、キリスト教徒だけでなくイスラム教徒やヒンズー教徒もたくさんいます。しかしそこで問題となるのが食事です。イスラム教徒は豚肉が食べられず、ヒンズー教徒は牛肉が食べられません。さらに最近では動物由来の食物を一切採らないベジタリアンも増加してきており、学校の友達同士や職場の同僚同士で一緒にご飯を食べようとすると、どの店に行くかを決めるのが非常に困難なのだそうです。

ところが寿司の場合、メニューの中心になるのは魚介類で肉を使う際もせいぜい焼き鳥の鶏肉くらい。鶏肉が禁忌の宗教はさすがにありません。またベジタリアンでもかっぱ巻やたくあん巻、かんぴょう巻、アボガド巻と食べられるメニューが複数あり、さらに味噌汁や大根サラダ、漬け物、枝豆などのサイドメニューも楽しめるので「ガマンして他に付き合う」ということが無くありとあらゆる宗教・信条の人々が一緒に食事できる貴重な存在なのだとか。これが中華料理や韓国料理、インド料理など他のアジア系料理だと、どれも必ず肉を使用するので様々な人が一緒にテーブルを囲むのは絶対に不可能です。つまり、寿司はただ日本ブームや健康ブームに支えられて食べられているのではなく、多民族国家となったフランスの食事事情にピッタリはまったということなのでしょう。こうした事情は日本国内ではなかなか知ることはできません。

それにしてもこの状況は勿体無いです。パリ市内1500件以上の日本食レストランのうち日本人経営の店が僅か2ケタしかなく、しかもそのほとんどが富裕層を対象にしているとは…。例えば、ちゃんと料理の心得のある日本人が大衆向けの日本食レストランやカフェを経営したらどれだけウケるでしょうか。実際、現地の人々も大衆向け寿司屋が日本人以外のアジア人の店であることを知っています。しかし日本人のお店が無いのだからそこに行くしか無い。最初から偽物の日本食を食べるしか選択肢が無いのです。そう考えると、和食系の職人さんは親方に怒鳴られながら何年もブラックな状況で修行をするより、一通り仕事を覚えたらさっさと海外に出て独立開業した方が本人にとっても日本文化にとっても良いのではないでしょうか。

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