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【速報現地レポート】シンガポールで仮想世界カンファレンス「State of Play V: Building the Global Metaverse」が開催

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8月20日、シンガポールで仮想世界をテーマとしたカンファレンス「State of Play V: Building the Global Metaverse」が開始された。
カンファレンスイベント「State of Play」はニューヨーク・ロー・スクールなどの主催によって2003年から開催されている。最近、セカンドライフなどの3Dエンジンを活用した映像作品制作手法である「マシニマ」が知られつつあるが、「State of Play」では2003年の初回のプログラムですでに「Mini Machinima Film Festival(ミニ・マシニマ・フィルム・フェスティバル)」というプログラムを組んでいる。マシニマの手法は以前からあるとはいえ、仮想世界との関連を見据えてプログラムが組まれた点は、ポイントをおさえた対応といえる。セカンドライフの運営会社であるリンデンラボのCEO、Philip Rosedale氏も第1回目のスピーカーに名を連ねていた歴史あるカンファレンスだ。主催が学術系であるためか、テーマ設定にも企業セミナーとは違う雰囲気があるのも特徴。
2007年はHarvard Law School, Yale Law School, New York Law School, Trinity University, and Nanyang Technological University in Singaporeの主催で開催される。

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ところで、カンファレンス会場は円卓を囲む形で着席する形式。落ち着きがある点はいいが、壇上に背を向けている席などは見づらく、無駄な席ができてしまっていた。会場の都合だとは思うが、配慮してほしい点だ。
カンファレンスの各セッションのテーマは以下の通り。

【1日目(Conference Day 1)】
・Building Businesses in Virtual Worlds(仮想世界でビジネスを構築する)
・Regulating Virtual Worlds(仮想世界での調整)
・Education, Kids, and Teens in Virtual Worlds(仮想世界での教育・子供・十代)
・Connecting East and West(東西をつなぐ)

【2日目(Conference Day 2)】
・Understanding Virtual World Inhabitants(仮想世界の住人を理解する)
・Space, Place and Culture Inside Virtual Worlds(仮想世界のスペースと場所と文化)
・The Wealth of Virtual Nations(仮想国家の富)
・Building Virtual Worlds(仮想世界の構築)

本記事では1日目の様子をレポートしていく。

■Building Businesses in Virtual Worlds(仮想世界でビジネスを構築する)
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スピーカー(向かって左から)
Ken Brady, Centric (USA, China, Japan)
Guntram Graef, Anshe Chung Studios, Ltd. (China)
Jerry Paffendorf, Wello Horld (USA)
Mandy Salomon, Swinburne University (Australia)
Ted Tagami, Millions of Us (USA)
Bret Treasure, Inside This World (Australia)
本セッション中、「コミュニティ」「コンテンツ」というキーワードが多く聞かれていた。非常に一般的ではあるが、確かに重要な部分だろう。
また、Guntram Graef氏は繰り返し「セカンドライフはプログラミング言語やOSのようなものだ。」と述べていた。「確かにセカンドライフは伸びている。ただ、それはほんのちょっとだけ他よりも確立されているだけなんだ」
結局はその上で何を作るかが価値となると述べた。

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各セッションの間の休憩時間には飲み物と軽菓子を手に参加者間で交流が行われている。仮想世界についてのカンファレンスであっても、(むしろだからこそ)こうした直接交流の機会は必要なのかもしれない。

■Regulating Virtual Worlds(仮想世界での調整)
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スピーカー(向かって左から)
Herbert Burkert, St Gallen University (Switzerland)
Charles Lim Aeng Chang, Singapore Attorney General's Chambers (Singapore)
Joshua Fairfield, Indiana University School of Law (USA)
James Grimmelmann, New York Law School (USA)
David Post, Temple Law School (USA)
セカンドライフなどの「仮想世界」と「ネットワークゲーム」はなにが違うだろうか。「技術的に見れば同じでしょ」とあなたが思っても、いざというときに判断するのはあなたではないかもしれない。
「裁判所にとっては違うらしい」Joshua Fairfield氏はそう語る。しかし一方、ネットワークが世界に広がり、ユーザーの背景が多様化するにつれ、すべてのユーザー間のケースに完全に対応することは困難になってきている。そうした中で示された「(全体的な調整による取り決めではなく、)もう、それぞれ個人が判断スキルを身につけることが必要、ということですね(笑)」という言葉が実は現状に一番近いのかもしれない。

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各セッション後半では会場からの質問を固定マイクで順番に受け付けている。十分な時間をとってはあるが、いつもかなりの列となっている

■Education, Kids, and Teens in Virtual Worlds(仮想世界での教育・子供・十代)
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スピーカー(向かって左から)
Angeline Khoo, National Institute of Education (Singapore)
Betsy Book, Makena Technologies (USA)
Aaron Delwiche, Trinity University (USA)
Doug Thomas, USC-Annenberg (USA)
Karl Wolfgang Mueller-Wittig, Nanyang Technological University (Singapore)
Connie Yowell, MacArthur Foundation (USA)
1日目のセッションの中では、このセッションが一番「仮想世界」の定義が広い。例えば、普通に目で見るとただのカードであるものが、カメラとディスプレイ越しにみるとカードの上に実体が立ち上がって見えるという仕掛けはかなり不思議だ。すべてが仮想であるのではなく、現実との接点があることで心を揺り動かし、よりその体験を強化することができるのであれば、教育ツールとしても価値あるものとなるだろう。Karl Wolfgang Mueller-Wittig氏は、こうした仮想世界とリアルとの融合による効果を「Argument Reality」とよんでいる。

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メイン会場そばの部屋ではスポンサーによる展示が行われており、Thereがデモの説明を行っていた。

■Connecting East and West(東西をつなぐ)
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スピーカー(向かって左から)
Marko Skoric, Nanyang Technological University (Singapore)
Cecil Chua Eng Huang, Nanyang Technical University (Singapore)
Allen Varney, The Escapist (USA)
Joshua Fouts, USC Center for Public Diplomacy (USA)
Judge Unggi Yoon, Busan (Korea)
韓国でネットゲーム普及の足掛かりとなったPC房や、中国で換金目的にネットゲームでゲーム内通貨やアイテムをひたすら集める「ゴールドファーマーについての事例を紹介。こうした背景の違いにつき議論が進められた。
しかし、会場の参加者から中国とも韓国とも背景の異なる日本も「アジア」として一体に分類されていることを指摘されるなど、引き続き検討が必要と思われる。
ところで、テーマには「Building the global metaverse」のように「metaverse(メタバース)」とあるが各セッションでは「Virtual World(仮想世界)」と表現されることが多い。そして、「メタバース」もそうだが「仮想世界」も同様にスピーカーによって解釈が異なっている部分があるように見えた。
今はまだ、それぞれの観察者が一部のみを見ていて全体がみえていないという、いわゆる「巨象を触っている段階」なのかもしれない。

State of Play V: Building the Global Metaverse
http://www.nyls.edu/pages/2396.asp

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