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米大学の日本人教授、江戸時代の民衆文化とセカンドライフを比較した論文を発表

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米大学の日本人教授、江戸時代の民衆文化とセカンドライフを比較した論文を発表

アメリカのニュースクール大学大学院社会学部教授の池上英子氏が、徳川幕府政権下の江戸時代の民衆文化とセカンドライフを比較・考察した論文を発表した。

池上英子氏はニューヨークを拠点に比較歴史社会学の分野で活躍しており、日本でも「名誉と順応―サムライ精神の歴史社会学」「美と礼節の絆 日本における交際文化の政治的起源」の著書がある。
池上氏は実際にセカンドライフにも頻繁にログインしており、そこで得た体験と氏のこれまでの研究を元に、仮想世界業界の批評刊行物「The Journal of Virtual Worlds Research」に論文「Avatars Are For Real: Virtual Communities and Public Spheres」を発表。
氏曰く、江戸時代に俳句を詠んでいた趣味人たちは、士農工商の階級のある現実世界(ファーストライフ)の垣根を越えて全国各地で歌会を開催した。そこに集う人々は本名とは違う”ペンネーム”を使い、社会的階級の区別なく共同の創造行為を楽しんだ。たとえば連歌のように、歌の詠み手達はひとつの仮想世界(セカンドライフ)を共有していたという。
このような俳句や短歌、また利き酒や茶道など江戸時代における趣味的な芸術サークルの活動は、徳川幕府の政治的統制を逃れることができており、詠まれる歌は自由の気風に満ちていた。こうした緩やかな民衆のネットワークが、明治以降の日本の近代化・民主化プロセスにおいて重要な役割を果たしたと氏は考察しており、セカンドライフは江戸時代の趣味芸術サークルが果たした「新しい公共圏」の役割を現代において担うことになるかもしれないとしている。
残念ながら論文は全て英文で書かれているが、PDF(全19P)で公開されているので興味のある人は是非読んでみてほしい。

論文はこちら(PDF)
http://journals.tdl.org/jvwr/article/view/288/219

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