実はリリース当時に見逃してしまいニュース記事を書けていなかったのですが、イギリスのロックバンド「Radiohead」が今年2月にアルバム「The King Of Limbs」の発売に合わせ無料のスマホアプリ「PolyFauna」を配信しました。
普通、バンドが新譜のリリースに伴い配信するスマホアプリなんてプロモーション用に決まっています。ところがこの「PolyFauna」、もうプロモーション云々語るのがアホらしくなるくらい意味不明で退廃的且つアシッドでアバンギャルドな中毒性の高い内容です。どんなアプリかと言うと…
「ただ当て所もなく異世界を彷徨い歩くアプリ」です。起動すると画面いっぱいに上記のような砂漠を思わせる荒涼とした空間が広がります。黙って見ていると自動的に前に進み、端末の位置や向き、角度を変えることで方向転換や視点移動が行えます。そう、この空間は360°対応なのです。
端末は縦持ちor横持ちどちらでもOKで、空間の広がりを実感したい場合は横持ちがオススメです。空間内には不思議な異世界を演出するアンビバレントなBGMが常に鳴り響いていますが、もちろんこれもRadioheadによるもの。本作は「The King Of Limbs」のレコーディング中に生まれたアイデアをベースに、イギリスのデザインスタジオのUniversal Everythingとのコラボレーションにより開発されたとのこと。ヴォーカルのトム・ヨークのTwitterに本作の原案と思しきスケッチがいくつがUPされていたので、もしかしたらこの空間のデザインもメンバー自身が行っているのかもしれません。
空間には様々なバージョンがあり、起動するたび異なる空間が眼前に広がります。たまたま上記のスクリーンショットはモノクロのみですが、フルカラーの極彩色空間もあり、幻想的な風景の中をずっと彷徨っていると本当に魂を持っていかれそうになります。
こちらは木の切り株のようなオブジェクトが並んでいる樹木伐採後のような空間です。ランダムに空間全体の色が変化し、そのたびに影が生成されるのが美しい…。まるでシュールレアリズム絵画の中に入り込んだかのようです。
こちらは穴がたくさん開いた砂漠のような空間です。穴の中から異形のオブジェクトが次々と飛び出し空中に浮かんでいき、さらに様々な形状へと変化していきます。
視点を動かすとオブジェクトの輪郭が残像のようにぼやけます。
またオブジェクトは指で触ることもできます。指でなぞった軌跡に沿って絵の具がにじむようにぼやけるのが直感的で面白く、まるで水で溶いた絵の具同士をわざと混ぜて遊んでいるような感覚が味わえます。
ここまで来るともはや色の洪水の中を漂っている状態…
ふと思ったのですが、本作はVR(仮想現実)ヘッドマウントディスプレイ「Oculus Rift」に対応した方がより楽しめそうです。というか絶対するべき!本作では前述のように端末本体を動かすと空間内での方向転換や視点移動ができるのですが、それを頭の角度でできるようになればより没入観が増すでしょう。起動すればするほど「Oculus Riftで見たい!この世界に入り込みたい!そしてここでずっと旅したい!」と思えてきます。
私が思う本作の楽しみ方は…
1.真夜中に
2.たった一人で部屋に閉じこもり
3.室内を真っ暗にして
4.イヤホンかヘッドホンを使って
見ることです。そうするとヘッドセットなしでも結構な没入感を得られます。アバターもソーシャル要素も無いけれど、本作を見ていると「やっぱり3D仮想空間って良いな」と心から思えてきました。Radioheadのファンではなくても3DCGや雰囲気ゲー、VRコンテンツが好きな人なら必見のアプリです。