米カリフォルニアに拠点を置く非営利団体「Not Impossible」が、アフリカ・スーダンで3Dプリンタ製の安価な義手を製作する活動を行っている。
スーダンでは以前より紛争が多発しており、2011年7月に同国南部の10の州が分離し南スーダン共和国として独立したが、そこでもなお内戦の危機が続き多くの人々が犠牲となっている。
2012年のある日、Not Impossibleの創設者であるMick Ebeling氏は偶然TIME誌で牛の放牧中に政府軍の爆弾に被弾し両手を失ってしまったDaniel Omar君という14歳の少年の記事を読み、すぐに「彼を助けなければならない」と思ったという。もともとNot Impossibleはテクノロジーで障害者を支援する活動を行っており、以前より手が欠損している子供のために3Dプリンタで安価な義手を作るプロジェクトも手がけていた。そこでEbeling氏はこれをOmar君にも応用することを思い付き、新たに「Project Daniel」を発足。国境を超えて人工装具製作チームを結成し、Intelと大手医療機器メーカーのPrecipartから資金援助を受け、2013年11月にOmar君の地元の病院の隣に義手製作ラボを建設した。ラボでは個人向けデスクトップ3Dプリンタで義手のパーツを出力し、医師や看護師、地元民らでそれらを組み立てるという活動を行い、Omar君も早速第一号の義手を装着。義手は樹脂製でワイヤーで動く簡素な作りだが、全行程6時間で製作でき費用も約100ドル(約1万円)と安価で、Omar君はこれを使い事故後初めて自力で食事をしたり農作業ができるようになったとのこと。なお、ラボでは引き続き他の四肢欠損者のために義手を作り続けており、現在Omar君はラボの技術者となり他の人のために義手を作っている。
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