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【Engage! Expo San Joseレポート】全体を振り返ってみて・・・

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9月23日~24日(太平洋標準時間)の2日間、アメリカ・サンフランシスコのSan Joseコンベンションセンターにて、仮想世界や仮想経済(仮想通貨、仮想アイテムなど)、その他ソーシャルメディア系サービスの展示&カンファレンスイベント「Engage! Expo 2009 in San Jose」が開催された。

■徐々に薄くなる”仮想世界色”
先にも述べたがこの「Engage! Expo」、昨年までは「Virtual Worlds Conference&Expo」という名称だった。しかし今年3月のニューヨークでの開催回から「Engage! Expo」と名称を変更。それに伴いセッション及び展示内容も仮想世界中心から仮想経済、ソーシャルメディア、カジュアルゲーム(MMO)、3Dインターネットと広範囲なジャンルをカバーするものとなった。これはそれぞれのサービスが明確に”これは仮想世界”、”これはSNS”、”これはゲーム”と分けて捉えることができなくなり、お互いが影響し合い少しずつ重なり合うようになった現状を反映していると言えるだろう。
尚、今回設けられたセッション・ジャンルは以下のとおり。
・Social Media Strategies
・Virtual Goods Conference
・Degital Law Conference
・3DTLC Conference

このようにセッションのジャンルからして「仮想世界」だけに特化したものが無くなってしまった(「3DTLC Conference」は仮想環境の教育利用やビジネス利用に関するジャンルなので仮想世界ネタに近いと言えば近いのだが)。ちなみに各ジャンルのセッションとも同時に進行するので、参加したいものの時間帯がかぶってしまうとその選択に非常に迷うことになる。
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↑イベントパンフレットにあるスケジュール。こうして改めて参加したセッションを振り返ってみると、仮想アイテムに関するものに多く参加していたようだ。
■セッションは充実。でも展示は……
会場は各セッション・ジャンルごとに4ホールに分かれており、さらに別に出展各社のブースが並ぶ大ホールが設けられている。しかし今回の出展エリアは全体的に非常にショボく、はっきり言ってスカスカだった。
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↑こんなの
昨年L.A.で開催された「Virtual Worlds Conference&Expo」では、ここと同等の広さのホールに出展ブースがぎっしりと並んでおり2日間だけでは見きれないほどだった。しかし今回はホールの半分も埋まっておらず、空間を埋めるためムダに休憩スペースが設けられていたほど。
このようなイベントは企業が自社のサービスをアピールするプロモーションの場でもある。しかしブース出展は接客スタッフは要るは展示物は要るは出展料はかかるはで大変なことが多いわりには、実はあまりメディアに取り上げてもらえない。もちろん全く取り上げてもらえないわけではないが、メディアの目を引くには相当に気合いの入った展示内容が必要だ(それでまた経費がかかる)。それに比べたらセッションの講演者になった方がはるかにメディアやブロガーに取り上げてもらいやすいし、最近は講演を聞きながらリアルタイムにその内容をTwitterで呟く人が増えているので、その宣伝効果は無視できない(もっとも講演するにもイベントのスポンサーになる必要があるのでお金はかかるのだが…)。
しかし、だからと言って個々の出展ブースから熱気が失われたわけではなく、むしろ新たな出会いやビジネスチャンスを狙って各社とも工夫を凝らした展示を行っていた。
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↑仮想空間にモデレータースタッフを派遣するサービスを提供しているMetavers Mod Squad社のブース。本物の本棚(中の本も全部本物)やソファを持ち込みブースを設営。会社のフライヤーもタイプライターを模したデザインにして全体的にちょっとレトロな雰囲気に。
尚、昨年と比べ出展社の顔ぶれは”全取っ替え”と言ってもいいほどガラリと変わっており、傾向としては新たに「仮想通貨の決済プラットフォーム」などの仮想経済に関する企業の出展が増えていた。個々のブースについてのレポートはまだ別記事にてお届けする。
■色気より食い気
ところでこのイベント、毎回やたらと各ブースで食べ物や飲み物をもらう。というのも、各社とも自社のサービスの素晴らしさを説明しようにも、まずは自分たちのブースの前で参加者の足を止めないことには何も始まらない。こういうとき日本のイベントでは露出度の高いコスチュームを着た美人コンパニオンを用意するものだろうが、ここでは直球で「食い気」に訴える作戦に出る企業が続出。
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チョコレートやキャンディなんてのはまだ徐の口。ジュースやミネラルウォーター、ビールなどは缶やペットボトルで丸ごと配布、その他ポテトチップのロング缶丸ごと1本やバナナの房そのまま、ポップコーンなどなど、一日中イベントに参加していたら本当に食費がかからないほど。
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そこへ来てさらにイベント主催者からは昼食も振舞われる(もう食べてばっかり)。これは講演者や出展社、プレスなどの関係者だけでなくイベントに参加してる人全員が食べられるもので、アメリカでの開催ではだいたい「超ボリュームのあるサンドイッチ」+「炭酸飲料」+「ポテトチップ」といった健康に悪そうな内容。ヨーロッパでの開催だとバイキング形式だったりティータイムが設けられたりする。
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↑ついでにイベント中はスタバコーヒーも飲み放題。
尚、海外のイベントはとにかく朝が早い。基調講演は朝の9:00に始まるのだが、だいたい7:30頃には会場がオープンし参加受付が始まる。気合いの入った人だと8:00前には登録を済ませ飲み放題コーヒーを片手にビジネストークを展開していたり。
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それでいて午後になると今度はビールまで飲み放題になる。やはり酒が入るとコミュニケーションが円滑になるのは万国共通なのか、この頃には完全に立食パーティ状態になる。
これらイベント側から提供される飲食物は実は主催者が全額負担しているわけではなく、通常のスポンサー枠とは別枠で”飲食スポンサー”が付いている。
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↑今回の飲食スポンサーはこちら
飲食関係のスポンサーになると、昼食時にさり気なくテーブルにフライヤーやノベルティグッズが置けたり、飲食会場に看板が立てられたり、配られる弁当やお菓子のパッケージにロゴシールが貼れたりといった宣伝ができる。もしかしたらサイトやパンフレットにロゴマークを掲載する通常のスポンサーより宣伝効果は高いかもしれない。
因みに今回は、一日目の全てのセッションが終わった後に同じ会場内にてパーティタイムが設けられた。これまでは他のバーかクラブを貸し切ってオフィシャルのパーティが行われていたが、やはり不況の影響があったのだろうか。しかしこのパーティタイムの後も、ほとんどの参加者はこの日知り合ったメンツ同士で連れ立って他のバーやらクラブやらに繰り出していた。おそらく深夜まで踊りながらビジネストークをしたのだろう。こういう光景を見るたびに海外イベントはとにかく「スタミナ勝負」だと感じる。
■結局日本って「ナゾの国」
ここまでいろいろ書いてきて何だが、実は筆者、全く英語ができない。読み書きは多少できるが”聞いて喋る”スキルがとにかく無い。では毎回どうやって切り抜けているかというと、Yahoo!やらGoogleやらExciteやらの翻訳サイトを立ち上げっぱなしにして「デジタル筆談」。しかしこれが意外になんとかなる。というか、多少言葉が変でも「日本の仮想世界メディアです」と言うと大抵の人は珍しがって喜んでくれるし(多少お世辞が入ってるかもしれないが…)、当サイトや日本の仮想世界サービスを見せるとこちらがちょっと引いてしまうくらい喰い付いてくる。
因みに今回一番ウケが良かったのは「アメーバピグ」だった。
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特に女性に見せたらCuteだLovelyだとえらい騒ぎ。”ちょこまかと”動くモーションやバリエーション豊富なアバターの「顔」が良かったようだ。アバターとは「ただ着せ替えて面白い」というものではなく、まさに自分自身を表す分身。特に「自分はこうである」と強く自己主張する(しなければならない)アメリカ人にとっては、顔を細かく設定できる機能は魅力的に映ったのだろう。「こんなに良く出来たカジュアルな仮想空間はアメリカには無い」と断言する人までいた。
今回Engage! Expoに参加して強く感じたのは「潮が引くように日本人がいなくなった」ということだ。日本企業の出展は一社も無く、日本人の講演者も一人もいない。ついでに日本から取材に来ていたのも筆者だけ。一見「日本人かな?」と思ってもよくよく会話を聞いてみたら韓国人や中国人だったり、はたまた地元の人だったり(サンフランシスコはアジア系が多い)で寂しい限り。
また講演の内容を聞いていても、韓国と中国のデータや事例はたくさん出てくるのに日本だけ全く出てこなかった。そこでセッション終了後にある講演者に「日本のデータは?」と聞いてみたら、返ってきた答えが「全然分からない」。敢えて書くまでもないが、日本にだって複数の独自の仮想空間やアバターサービスがあるし、仮想アイテムや仮想通貨の取引額だって相当なものだ。しかしほとんどの日本企業は日本語表記のサイトしか用意せず、プレスリリースすら日本語でしか出さない。そしてサービス自体も海外展開を視野に入れていないものが多く、情報が海外に出ていかないのだ。それこそ「翻訳サイトで訳せば?」とも思うが、大抵の場合日本語の文章は妙な翻訳になる(その逆も然り)。
海外の仮想世界業界人も日本に全く注目していないわけではない。しかし正確な情報を知る手立てがなく、「何かありそうだけどイマイチ分からない、不思議で謎の国」だと思っている様子が伺えた。なんだか仮想世界の分野においてもガラパゴス化が進んでいるようだ。
当サイトも日本語しかないので決して偉そうなことは言えないが、やはり世界を視野に入れた動きをしなければ徐々に競争力を失い、狭い世界の中で弱くなっていくだけだろう。言葉の壁もあるだろうが、せめてプレスリリースだけでも英語版を用意したり、YouTubeに公式動画をUPしたり、Twitterで呟いてみたり、Facebookなどのソーシャルプラットフォームと連携したりするだけでも随分違うだろう。日本の仮想世界サービスは内容的には世界のサービスと比べても全く負けていない。それが少しでも世界に伝わればと願っている。
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