【Engage! Expoレポート】もう満足できない!—音楽を「聴くだけ」の楽しみ方から「参加する」楽しみ方へ

   2011/07/16

海外の仮想空間活用事例を追っていくと、どうも仮想空間にも「トレンド」があるらしいことが分かってくる。例えば昨年はとにかく子供・若者向けの、特に女の子向けの「ファッション」をモチーフにした仮想空間や活用事例が多く見られた。しかし現在はそれも一段落し、新たに「音楽」をモチーフにした仮想空間や活用事例が増えている。このEngage! Expoの基調講演も、昨年(名称が「Virtual Worlds 2008」だった頃)は「BarbieGirls」を運営するマテル社のバイス・プレジデントが担当したのに対し、今年はアメリカン・アイドルのHabbo hotelでのコラボ事例の紹介。また、Run-DMCのダリル・マクダニエルズ氏本人も自分たちの仮想空間のスニークプレビューのためだけに会場に来るという気合の入れよう。今、海外の仮想空間と音楽業界には何が起こっているのだろうか?

■仮想空間は音楽コンテンツにとって新天地
【Engage! Expoレポート】音楽は仮想世界を目指す ---「聴く」楽しみ方から「参加する」楽しみ方へ
この「Engaging Youth」コーナーで行われたパネルディスカッション「Music Goes 3D」では、音楽業界と仮想世界の現状や、新しい音楽の楽しみ方としての仮想空間のあり方が議論された。登壇したのはWorlds.comのCEO・Thom Kidrin氏とIMVUのバイス・プレジデントのLee Clancy Jr氏、そしてElectric Sheep CompanyのCEO・Sibley Verbeck氏。
まず冒頭に語られたのは「現在のアメリカの音楽業界の業績は最低」であるということ。特にCDの売り上げの落ち込みはかつてないほどに酷く、つい最近もイギリスのヴァージン・グループのCDショップ「ヴァージン・メガストア」が今年夏までに全米の店舗を撤退することを発表した。Verbeck氏は、「昔と違い今は携帯の着メロやiTunes、YouTubeでのPV視聴と音楽を楽しむ手段が多様になった。それに音楽業界がついてゆけず、未だに伝統的なレコードセールスに執着している。」と分析。
しかしその一方、「ロックバンド」や「ギターヒーロー」「ダンスダンスレボリューション」などの「音楽ゲーム」はCDの売り上げと反比例するかのように大流行している。これを踏まえClancy氏は「もはや消費者は、売っているCDやDVDを買うだけという”受身”の楽しみ方に満足できなくなっている。それよりも消費者は音楽に”参加”して”体験”したいと思い始めているのではないか」と語った。この「参加」と「体験」を提供するのに最も適した場所が「仮想空間」なのだという。オンライン上の仮想空間ならば、市販のゲームよりも気軽に誰でも参加することができるうえに、企業やアーティストの要望に応じて様々なスタイルのコンテンツを作ることもできる。またリアルと連動したヴァーチャルライブやアーティストとファンの交流イベントを開催することも容易だ。
■音楽だって仮想アイテム
またClancy氏は、「音楽も元々は”形のないアイテム”だった。しかし今までレコードやカセットテープ、CDなどの”入れ物”に入れられた形で販売されていたので皆”形のあるアイテム”だと思い込んでいた。現在のダウンロード配信の方がむしろ本来の音楽の姿に近い。」と指摘。つまり音楽も形のない仮想アイテムの一種だというのだ。尚、IMVUではメジャーレーベルと正式に契約を結び、ユーザーがIMVU内で楽曲を購入して自分オリジナルのプレイリストを作成し他のユーザーと共有できる「IMVU Music」と言うサービスを提供している。これをClancy氏は「仮想カセット交換」と表現。「子供の頃、自分の好きな曲だけ集めた”自分ベストセレクション”のカセットテープを作って友達と交換し合った。IMVU Musicはそれをアバターを使用して仮想空間内で行っているようなもの。自分の好きな楽曲を選んで部屋の中で流し、友達を呼んでDJパーティを開くことができる。」と語った。
因みにこれと似たような日本国内の事例として、好きな楽曲を並べ静止画を貼り、「動画」を編集してニコニコ動画にUPする例がある。

これもまた「仮想カセット交換」の一例と言えるのではないだろうか。
■アーティスト本人もちゃんと参加!
そしてディスカッションの最後、Kidrin氏は「ファンとの絆を作りたければ、ちゃんとアーティスト本人をログインさせることが重要。」と語った。「仮想空間はブログやSNSといったテキストベースのコミュニケーションでもなければストリーミングとも違う。今までなかった全く新しい体験を提供できるプラットフォームだ。アーティスト自らがそれに気付き、そして楽しみながらログインできれば、それは必ずファンにも伝わる。」と述べた。これならRun-DMCのダリル・マクダニエルズ氏本人が来場し、スニークプレビューで自ら説明していたのにも納得だ。
このパネルディスカッションで語られたような「音楽と仮想空間のコラボレーション」は日本にも幾つか事例があるが、まだまだ多いとはいえない。今後、新たなプロモーションと交流の場として仮想空間も検討されるように一日も早くなってほしい。
IMVU
http://www.imvu.com/
Worlds.com
http://www.worlds.com/
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