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【Engage! Expoレポート】男の子たちはどこいった?女の子向け仮想空間もいいけれど…

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3月10日(火)~11日(水)(現地時間)に開催されたカンファレンス「Engage! Expo」には「Engaging Kids」「Engaging Youth」「Virtual Goods and Gifts」の3つのテーマが設けられ、それぞれで多くの興味深いセッションが行われた。もちろん全てに出席することは不可能で、面白そうなセッションが同じ時間に重なり悔しい思いをすることもしばしば。そんな中、筆者が出席できたセッションから特に印象に残ったものを紹介していきたい。

「Where The Boys Are?」
【Engage! Expoレポート】男の子たちはどこいった?女の子向け仮想空間もいいけれど…
2008年は女の子向け仮想空間が大ブレイクした年だった。マテル社の「BarbieGirls」やディスニーの「Pixie Hollow」、セレブ着せ替えSNS「stardoll」などは多くのユーザーを獲得し、仮想アイテムや仮想通貨の売上で大きな利益をあげている。しかし、”男の子向け仮想空間”はどうだろうか?残念ながら女の子向け仮想空間と同等の成功を収めるどころか、そもそも「種類自体が少ない」のが現状だ。
男の子の心をつかむにはどんな仮想空間を提供すればよいのか?またどうすれば女の子向け仮想空間と同等の、もしくはそれ以上の成功を収めることができるのか?このセッションでは、それぞれ男の子向け仮想空間を提供しているディベロッパー三社の重役がパネルディスカッションを行った。ちなみに三社とも「車」をモチーフとした仮想空間を提供している。
パネルディスカッションに登壇したのは、男の子向けの3Dのレースゲーム「Webcarzz」のCEO・Chris Bergstresser氏とカスタムカー玩具のRidemakerzのZEO・Larry Andreini氏、2009年9月に公開予定の仮想空間「GoCarz」の創始者・Paula Brillson氏。
三者はそれぞれ男の子向け仮想空間を発展させるポイントを挙げた。
1.ママを味方につけろ
Bergstresser氏曰く、「ママも昔は女の子だった。だから女の子の気持ちも好みも理解できる。しかし男の子の場合はそうはいかない。また、家計の主導権を握るのは常に主婦で購入品の90%は彼女らが責任を負っている。だからママを味方にできなければ我々は終わりだ。」とのこと。またAndreini氏は「パパに焦点を合わせようとしても、そもそもパパは子供やママと一緒にショッピングモールに買い物に行きたがらないし、行ったとしてもパパの意見など家庭では重視されない。」と一刀両断。子供向けのサービスを提供する場合、まずは子供の両親の理解を得ることに注力しなければならないが、その「どちらに」焦点を合わせるかをまず考えなければいけないということか。しかし家庭におけるパパの存在って…。
2.「現実の遊び」と「ソーシャライズ」を忘れずに
Bergstresser氏によれば、男の子たちは遊ぶ際にも常に他の誰かを意識して競争しているという。だから仮想空間を構築する際にも、簡単に他のユーザーと知り合い繋がれるようにし、競争とその結果をより分かりやすい形にする必要があるとのこと。
3.ゲームの理論を適用しよう
Andreini氏曰く、「たとえ”仮想空間”といえどもゲームとゲーマーを無視していては世界が広がらず発展は望めない。だから様々なタイプのゲーマーにも訴求できるサービスを構築するべきだろう。クエストをこなすのが好きな人や友達を作りたい人、モノ作りをする人、探検が好きな人など、あらゆるタイプのユーザーに対応できるサービスを作れば全世界に通用する」とのこと。
4.うまく感情が表現できるコミュニケーション方法を提供しよう
これは三者誰もが指摘していたことだが、男の子と女の子ではテキストチャットの使用に違いがあるのだという。女の子は現実にお喋りしているのと同じように自然に(そして長時間)他のユーザーとチャットをすることができる。しかし同年代の男の子はそうはできず、コミュニケーションというよりも「感情のぶつけ合い」のようになってしまうのだという。それをテキストチャットで行うと、途端にケンカに発展し”荒れた”状態になってしまう。そこで、荒れることなく上手く感情を表現できるコミュニケーション方法が必要になるという。Andreini氏によれば「Ridemakerzの仮想空間は敢えてテキストチャットではなく”絵文字”で会話する形式にした。悲しいときは泣いている顔のアイコンを出し、腹の立つことがあったら怒った顔のアイコンを出す。絵で表現されるとゲームっぽくなり文字よりも角が立たない」のだという。

5.年齢層の把握
Andreini曰く、「一口に”子供”と言っても年齢層によってタイプが異なってくる。例えば、だいたい3~7歳ぐらいまでは男女とも子供のレベルには変わりはない。しかし7歳を過ぎる頃になると男女で精神的な成長に差が出てくる。Club PenguinとWebkinzは男の子と女の子どちらにも支持されているが、それはちょうど3~7歳の子供を対象にしているからだ。」とのこと。つまり子供向けサービスを提供する際、ターゲットにする年齢層を見誤ると失敗するというのだ。
このセッションは「Engaging Kids」の中の一つだったが、なんだか「子供」についてより「ジェンダー」について考えさせられる内容だった。女の子は子供の頃から実は既に「大人」で他者とのコミュニケーションもできる。それに対し男の子は他者と競争し感情をぶつけ合う…。仮想空間サービスとは元々女性の気質と相性が良いのかもしれない。
しかし最後の最後にパネリスト達は「男の子向けの仮想空間と言っても女の子を締め出すつもりはありません。女の子の参加もいつでも大歓迎です」と言ってスピーチを締めくくっていた。

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