ニュース 仮想空間

自分で作った仮想空間に閉じ込められてしまったら?…ジェイムズ.P. ホーガンのハードSF小説「仮想空間計画」

更新日:

仮想空間計画 (創元SF文庫)

同僚の姦計により自分で作った仮想空間に閉じ込められてしまった科学者の脱出劇を描いた海外のハードSF小説です。自分の意思で行き来できない”閉じられた空間”の内側から事態を把握し解決していくという内容で、SF小説ながらミステリーの要素もあるストーリーとなっています。描き方も、リアルの世界の回想シーンと現在進行形の仮想空間内のシーンが交差するようになっており、仮想空間から抜け出せない閉塞感と共に徐々にどちらがどちらだったか区別がつかなくなる怖さが味わえます。
あらすじは・・・

極秘プロジェクトの一環で人工知能(AI)と仮想空間の開発に携わっていた科学者コリガンは、ある日見知らぬ場所で目を覚ます。どうやら仮想世界へログインするテスト段階の「神経接合」で問題が生じ、その後の記憶が無くなり精神に障害が残ってしまったらしい。そのため開発プロジェクトそのものが破棄され、コリガンはリハビリをしつつしがないバーテンダーとして暮らす破目になる。科学者としてのキャリアも無駄になり、精神障害のため人とうまくコミュニケーションもとれず、さらに妻にまで逃げられるという踏んだり蹴ったりのコリガン。そんなある日、バーに一人の女が現れ、2人とも仮想空間の中に取り残されたままだという衝撃的事実を告げる・・・

興味深いのは、仮想空間内でコリガンら生身の人間の相手をしているのがAIで、これらAIは生身の人間と接することで学習・成長しているという描写。この作品が刊行されたのはもう10年以上も前のことですが、その頃から仮想空間とAIの進化は1セットに考えられていたというのが面白いです。今年の3月にあった、3D仮想空間「Second Life」に4歳児程度の知能を持つ人口知能アバターが現れたという話題をつい思い浮かべてしまいます。また、コリガンたちが仮想空間に閉じ込められた原因が、技術的なことでもなければ開発プロジェクトの進行上の問題でもなく、会社の経営者陣と現場の科学者たちの思惑の違いだった、という設定が妙にリアルでニヤリとさせられます。話の筋は以前ご紹介した小説「クラインの壷」と似ていますが、こちらは無事アメリカらしい”いかにも”なハッピーエンドで終わるので安心して読めます。

仮想空間計画 (創元SF文庫)
仮想空間計画 (創元SF文庫)

-ニュース, 仮想空間
-

Copyright© vsmedia , 2017 All Rights Reserved Powered by STINGER.