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【レポート】メルティングドッツ主催「バーチャルワールドの勉強会及び親睦会」

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去る2月29日(金)、東京・秋葉原のAKIBAスペース6.0にて株式会社メルティングドッツ主催の「バーチャルワールドの勉強会及び親睦会」が開催された。
講演では株式会社スプリュームの梶塚千春代表が登壇、またアメリカ・サンフランシスコで開催されたゲーム開発者向けイベント「GDC2008」の報告会や野村総合研究所の山崎秀夫氏も出席してのトークセッションも行われ、実にバラエティに富んだ興味深いイベントとなった。

■誰もが自分の仮想世界を持てる「オープンエンドな世界」
イベントはまず、仮想空間「splume」を運営している株式会社スプリュームの代表取締役・梶塚千春氏の講演とsplume実演から始まった。

梶塚氏は自身でsplumeにログインし主にユーザーが製作した”セカイ”を回りながら概要を説明。同社ではsplumeを”完成された仮想世界”として捉えるのではなく、もっといろいろな要素や表現方法を含んだ「プラットフォーム」として捉えているのだという。splumeの専用ブラウザ「CRブラウザ」のベースには、テキストで仮想空間を製作できるファイルフォーマット「VRML」が使用されており、高度な3D空間を比較的容易に製作できるようになっている。実際、splumeのへヴィユーザーはオリジナルの仮想空間を製作し自分のWEBサーバ(無料サービスのものでも可!)で公開しており、さらにそれらをまるでホームページ同士をリンクさせるようにシームレスに繋げて”セカイ”を拡大させていた。 

梶塚氏は上記の図で、空間を提供するサーバとアバターを提供するサーバが別になっているsplumeの仕組みを説明。仮想世界とアバターが必ずしも同じ場所に存在しなくてもよく、それぞれ別に管理しても仮想世界は成り立つという構想からは、いずれ近い将来訪れるであろう”メタバース→マルチバース”という流れが感じられた。
■広義の意味での「バーチャルワールド」
次に株式会社メルティングドッツの山田直行氏により、GDC2008の出張報告及び海外最新事情の紹介が行われた。

「GDC」は年に1回アメリカで行われる大規模なゲーム開発者向けイベント。一般客が来場するようなイベントではなく完全に関係者向けのイベントなのだが、それにも関わらず今回は18000人もの来場者が集ったという。

GDCの中には所謂”分科会”のような分野別の200人ほどの規模の「サミット」が数多く開催されており、その中の一つ「World in motion summit」では、「バーチャルワールド」をMMOやソーシャルネットワーキングサービスと並列する「第三の勢力」と位置づけ様々なセッションが行われたとのこと。
海外ではウェブアプリケーションやソーシャルネットワーキングサービス、オンラインゲームなど「一度に多数のユーザーが参加するWEBサービス」を全部含めて広義の”バーチャルワールド”と考えているようで、その中でも特に成功がめざましいのは子供向けのサービスだという。実際に海外の話題を追っていると、既に多くの子供向け仮想世界が存在しているにも関わらず、日々さらに新しいサービスが生まれていることが分かる。
尚、海外では仮想世界の認識は日本よりも高く市場自体も大きいものの、アバターサービスに関しては日本に比べかなり遅れている状態で「ウェブ・マネーでアバターアイテムを買う」という概念もまだ根付いたばかりなのだという。それを反映してか、仮想世界エージェンシー・Millions of Us社のルーベン・スタイガー氏は講演内で「今後はSNSがアバター化し、逆に仮想世界がSNSに近くなるのではないか」「仮想世界は映画やテレビドラマとのタイアップ企画が増えるだろう」と未来予測をしたとのこと。これらを踏まえて考えると、ウェブ・マネーが一般的なものになりモバゲータウンが10代に支持され、SNS型仮想空間サービス「ViZiMO」があり映画「バンテージ・ポイント」を原案とした携帯電話向け仮想空間「Lamity」がある日本は、意外と仮想世界分野で最先端を走っていると言えるのではないだろうか。

■セカンドライフの現状は?
次に、株式会社野村総合研究所上席研究員の山崎秀夫氏とセカンドライフウォッチ管理人のak Yip氏、株式会社メルティングドッツ代表取締役の浅枝大志氏の3名によるトークセッションが行われた。

山崎秀夫氏

浅枝大志氏
まず「セカンドライフの現状」というテーマでは、山崎氏は「大企業が撤退している中、アメリカで今一番本気になって参入しているのがテレビ局。2011年の地上波デジタル化を視野に入れているのではないか。」と分析。またak Yip氏は「最近ではトルコやインド、中国など今まで後進国と思われていた国の企業も気軽にセカンドライフを使うようになっているのが面白い。」と語った。それを受けて浅枝氏は「リンデンラボのページに掲載されている登録ページの中で最近特に目立って成長しているところがあり、どこかと思ったら中国のオリエンテーションだった。アカウント数もアクティブ率も非常に高かったのが印象的だった。」と語った。このセッションからは「先進国」や「大企業」が必ずしも有利ではない、「強者の理論」が通用しないセカンドライフの奥深さが垣間見られた。
また次の「企業SIMトラフィックの向上」というテーマでは、山崎氏は「企業SIMはつまらない」と一刀両断。その代わりSLingの「Kourinbou」SIMで行われた”お参りイベント”や個人が運営する花畑風ダンスホールを例に「SIMの同時入場人数」に頼らない、敢えて非同期型のサービスにした試みを紹介した。
またak Yip氏はスタッフが常駐しているカード会社のSIMや毎週オフィスアワーを設けているMagSL内の「ムービングエス」などを紹介。ただ建物を作って放っておくのではなく、セカンドライフならではの”コミュニケーション”を重視したサービス展開が重要であることを示した。

さらに後半「はスプリュームの梶塚氏が再登場。グラフィックとそれを製作するツールを例に示し、「昔は”作品の作風が製作ツールの性質に引っ張られる”という現象からいかに脱却するかというのが課題だった。それと同じことが現在の仮想世界にも言えるのではないだろうか。」と分析した。
そして最後は「バーチャルワールドの今後について」というテーマの浅枝氏の講演だったのだが、予想外にトークセッションが盛り上がってしまい残念ながら時間が短くなってしまった。
■メルティングドッツ、仮想世界エージェンシーに

ここで浅枝氏はメルティングドッツが今後展開していく新メニュー「ソーシャルコミュニティオンラインイベント事業」と「オンラインコミュニティ事業」の2つを発表。日本型の「セカンドライフ参入支援企業」からさらにもう一歩踏み込み、どの仮想世界に参入するかという”選択”から初心者のサポートまで幅広く手がける、アメリカのElectric Sheep社やMillions of Us社のような「仮想世界エージェンシー」へ進化することを発表した。
日本でもセカンドライフ以外の仮想世界が増えてきた。このようにセカンドライフへの参入支援だけにこだわらない幅広いサービスを提供する企業の事例が今後も増えてくることを期待したい。
株式会社メルティングドッツ
http://meltingdots.com/

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