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【TGS2018レポート】リアルなクソ田舎の描写と若者言葉のローカライズが秀逸過ぎるアクションアドベンチャーゲーム「Night In The Woods」

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【TGS2018レポート】リアルなクソ田舎の描写と若者言葉のローカライズが秀逸過ぎるアクションアドベンチャーゲーム「Night In The Woods」
株式会社アクティブゲーミングメディアが、同社が日本国内向け配信を手掛けるアクションアドベンチャーゲーム「Night in the Woods」の日本語版を東京ゲームショウ2018のインディーゲームコーナーに試遊出展していました。本作は米ペンシルベニア州ピッツバーグに拠点を置くインディーゲームディベロッパーのInfinite Fallが開発したタイトルで、開発にあたりクラウドファンディングプラットフォームの「Kickstarter」にて資金を調達し、2017年に英語版をリリース。絵本のようなかわいいキャラデザインおよびアートワークとは裏腹に、衰退していく地方の現実と様々な社会問題、人間の成長について描いたストーリーが高く評価され、インディーゲーム業界最大のイベントの一つである「Indie Game Festival 2018」にて大賞にあたるSeumas McNally Grand Prizeと、優れたストーリーのタイトルに与えられるExcellence in Narrativeをダブル受賞しました。そんな高評価のタイトルがアクティブゲーミングメディアにより完全日本語化され、2019年にPC / PlayStation 4 / Xbox One / Nintendo Switch向けにリリースされます。

【TGS2018レポート】リアルなクソ田舎の描写と若者言葉のローカライズが秀逸過ぎるアクションアドベンチャーゲーム「Night In The Woods」
本作の主人公は、大学を中退して故郷のポッサム・スプリングスに帰郷した20歳の女の子・メイ。ポッサム・スプリングスはかつて鉱山で繁栄したものの、町の経済を支えてきた鉱山が閉鎖されたことですっかり衰退し見る影もないクソ田舎と化しています。そんな中、メイは高校時代の友人知人と以前のように居心地の良いぬるま湯のような毎日を過ごすことを望みますが、そうは問屋が卸さないのでした…。

【TGS2018レポート】リアルなクソ田舎の描写と若者言葉のローカライズが秀逸過ぎるアクションアドベンチャーゲーム「Night In The Woods」
基本的なゲームの流れは、メイがどこかへ行き、家族や町の住人と話し、どこかを触ったり動かしたりすることでギミックが発動し、それによってイベントが始まるというもの。まあ一般的なアドベンチャーゲームなのですが、「一日」の概念があり、朝起きて家族に挨拶し、町中に出かけ、誰かと会い、家に帰り、父親とテレビを見て、寝ることで一日が終了します。その一日の中で、誰と話して誰と過ごすか決めることでストーリーが分岐していきます。

【TGS2018レポート】リアルなクソ田舎の描写と若者言葉のローカライズが秀逸過ぎるアクションアドベンチャーゲーム「Night In The Woods」
本作をプレイしてまず気づくのは、グラフィック自体はかわいいのに「衰退するクソ田舎」と「クソ田舎の住人」の描写が残酷なくらいリアルなことです。おそらく地方出身者や現在進行形で地方に住んでいる人がこれをプレイしたら一発でそれに気づくでしょう。メイは何事にも無気力でやる気がないくせに口だけは悪い無職のプー、要するにクズなのですが、そんな彼女のセリフから地方の衰退の現実がこれでもかと表現されます。例えば彼女が帰郷した直後、普通だったら担当者がいるべきバス乗り場の受付に誰もいません。そう、「普通だったらできる当たり前のこと」ができなくなるのが人口減少なのです。

【TGS2018レポート】リアルなクソ田舎の描写と若者言葉のローカライズが秀逸過ぎるアクションアドベンチャーゲーム「Night In The Woods」
バス乗り場の壁にかかっている繁栄していた頃のポッサム・スプリングスの絵を見て「クソ胡散臭い」と言うメイ。これもまた急激に繁栄して急激に衰退した地方のあるあるですね。

【TGS2018レポート】リアルなクソ田舎の描写と若者言葉のローカライズが秀逸過ぎるアクションアドベンチャーゲーム「Night In The Woods」

【TGS2018レポート】リアルなクソ田舎の描写と若者言葉のローカライズが秀逸過ぎるアクションアドベンチャーゲーム「Night In The Woods」
何かを見たら何かをdisる口の悪いメイ。しかしそれがただのdisりではなくすべて真実なのだから救いがありません。衰退してしまった町はどこもかしこも錆びだらけでボロボロ。”ちゃんとしている”ところが何もなく、朽ちた場所は自然とゴミだらけになりますが、地元民にとってはもはやそれが日常の風景なので、そもそも補修したり清掃したりして綺麗にしようという選択肢がありません。

【TGS2018レポート】リアルなクソ田舎の描写と若者言葉のローカライズが秀逸過ぎるアクションアドベンチャーゲーム「Night In The Woods」
そして町が衰退すると住民の心も荒んでいきます。メイは帰郷して友人知人に会い、また高校生の頃のように気楽に暮らそうとしますが、町には貧困や鬱病、児童虐待といった問題が蔓延しており、そんな中かつての仲間はみな仕事をしながら町にしがみ付いて生きていることが明らかになっていきます。大人の階段を登ろうとしている仲間と子供のまま成長しない自分…それはどんなホラーよりも恐ろしい現実です。

ストーリーや台詞、雰囲気が重要なタイトルなので、当然日本語翻訳の質が気になるところですが、これがもう最初から日本語で開発されたのではないか?と思えるくらい自然で、若者言葉の再現も全く違和感がありませんでした。特に秀逸なのは、呑気ながらもどこか諦めを含んだクソ田舎の住人特有のセリフ回しです。プレイを進めれば進めるほど「そう!これぞクソ田舎!」と心底実感できる部分が多数出てきて、開発者も翻訳担当者も、このゲームに関わった人はみんな地方出身者ではないかと想像してしまいました。

【TGS2018レポート】リアルなクソ田舎の描写と若者言葉のローカライズが秀逸過ぎるアクションアドベンチャーゲーム「Night In The Woods」
警察官まで顔見知りなのもクソ田舎あるあるですね。

あまりにも衰退する地方の描写がリアルなので、私はプレイ中何度も「メイ!お前今すぐこの町から逃げろ!親や友達を捨てることになっても早く逃げろ!そうしないとお前の人生台無しになるぞ!」と思ってしまいました。なので地方出身者や地方在住者は、本作をプレイするといたたまれない気持ちになり精神的に苦しくなるかもしれません。しかし本作はただ地方の衰退の現状と若者の自立を描いた作品ではなく、終盤に急展開を迎えるスリラー調のミステリーとのこと。ここから一体どうやってミステリーになるのか見当もつきませんが、ますます期待が高まります。英語版は既にSteamにて配信されていますが、台詞の意味や雰囲気が重要なタイトルなので、日本語版のリリースを楽しみに待ちましょう。

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