2008年バーチャルワールドの展望を語る インタビュー

第6回「バーチャルワールドプラットフォーマー」第1部 スプリューム 梶塚千春氏

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2007年7月、リクルートは同社のフリーペーパー「R25」の3周年企画として、学園祭をモチーフにした「R25的ガク祭」を仮想世界で実施した。そのプラットフォームとして選ばれたのがスプリュームだ。スプリュームはその後もマイクロソフト主催のイベント「REMIX07 TOKYO」での活用や、フジテレビからの出資、インターネットエクスプローラー用のプラグイン提供開始など様々な活動を行い、国内発の3Dバーチャルワールドサービスの先駆者として注目を集めている。2008年に入ってからもブラウザの機能強化など「3Dコミュニケーションプラットフォーム」としての魅力をより高めるための活動を積極的に進めている。

スプリュームのこれまでとこれからについて同社代表取締役の梶塚千春氏に話を聞いた。

――仮想世界に取り組み始めたきっかけはなんでしょうか。
【特集:2008年バーチャルワールドの展望を語る!】第6回「バーチャルワールドプラットフォーマー」第1部 スプリューム 梶塚千春氏
代表取締役の梶塚千春氏

「1980年代から3次元CGに関わっていたこともあり、3Dでどういうことができるのか、と考えたのがきっかけでした。これまで3DCGは業界のハイエンド環境で行う歴史が続いていましたが、近年、ゲーム機やPCの進化などでユーザー環境が次第に整ってきました。これによって、かつて業界のハイエンド環境でやってきたことが、およそ10年ほどの期間をおいてユーザー環境でも活用されるようになり、その活用が『仮想世界』の形で出てきているのではないかと考えています。例えば、90年代後半に話題になったモーションキャプチャ―などもそうですね。もちろんそのまま活用するのではなく、今のユーザー環境を見ながら、どういった形で提供するのが適切か、フェーズを分けて考えています。」

――そのひとつが昨年発表されたインターネットエクスプローラー用プラグインですね。今年の2月にはさらに機能が強化されました。
「そうです。今後はユーザーリサーチで希望の多かった、仮想世界に自分の部屋を持てる3Dsm(ソーシャルメディア)を導入します。
今まで仮想世界に興味のなかった皆さんにもスプリュームを活用していただけるよう、この3Dsmを提供していきますが、スプリュームの基本は『オープンエンド』なプラットフォームであるということです。ユーザーは既存のWebサーバーを使って自分の『セカイ』を作り、それを『空間リンク』によってサーバーを越えてシームレスにつなげていくことができます。」

――「空間リンク」についてもう少し教えてください。
「スプリュームではユーザーが自身のWebサーバー上に構築した仮想空間を「セカイ」と呼んでいます。『空間リンク』は既存のウェブのリンクと似ていますが、ウェブのようにページが切り替わるイメージではなく、自然にセカイとセカイがつながっていくイメージになります。こうした仕組みを統一的なサーバー環境に依らずに実現できるのがスプリュームの特徴のひとつです。」

――なるほど。実際に(スプリュームの「セカイ」を体験するためのブラウザである)「CRbrowser」を使ってみると、サーバをまたいだ時に「セカイ」を表すURLが切り替わるのがわかります。ところで、今年もすでにブラウザのバージョンアップや、電通ドットコムからの出資のニュースなどがありましたが、スプリュームのこれからの動きについて教えてください。
「今まで弱かったアバターやその動きのカスタマイズも順次進めていきます。アバターのCGM化ですね。また、少しずつですが鏡の質感の再現など表現力も向上し、バージョンアップを繰り返しています。空間のJavaScript制御もリリース予定です。また、3Dsmの導入にともなって、新しいメディアとしてのスプリュームという側面も強化していきます。
仮想世界はユーザー体験をよりよくする仕組みだと考えています。一方で、今は仮想世界に興味がある人とない人のギャップが深いのが現実です。こうした課題に対しては、利用開始までのハードルを下げるため、ブラウザのプラグイン提供などを行うなどをしてきました。今後はインタフェースを簡便にする仕組みや3Dsmなどのサービスなどによって慣れ親しんでもらいたいと考えています。」

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