コラム

仮想世界事業モデルのカギは「プラットフォーム」へ Electric Sheep Companyの「WebFlock」

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2007年から2008年にかけて日本では様々な一般ユーザー向けの仮想世界が誕生した。しかし海外では、一般ユーザーに向けてサービスを提供するのとはまた違った仮想世界事業が盛んになっている。それは、アバターや空間をデザインして仮想通貨を用意して仮想アイテムやカジュアルゲームを作って…という「サービス」を提供するのではなく、サービスの土台となる「プラットフォーム」を提供するサービスだ。立ち上げから今まで目立ったプレスリリースも無くいまいちパッとしなかった仮想世界が、昨年あたりから「プラットフォーム提供企業」であることを強く打ち出して”復活”するケースが見られる。主なプラットフォームだと以下のようなものがあり…

・Worlds.com
 http://www.worlds.com/
・ActiveWorlds
http://www.activeworlds.com/
・MULTIVERSE
http://www.multiverse.net/index.html
また、今までプラットフォーム提供企業ではなかったのに独自にオリジナルのプラットフォームを開発する企業もある。今回は、そんな企業の一つであるElectric Sheep Companyの例をご紹介したい。
■参入支援企業からプラットフォーム提供企業へと変身
Electric Sheep Companyはこれまでセカンドライフをはじめとする各種仮想世界にて企業参入やプロモーション、キャンペーンのプロデュースを手がける、日本で言うところの「参入支援企業」だった。同社がセカンドライフ内に構築した広大な「CSI: NY」のSIMは訪問したことのある人もいるのではないだろうか。
しかし2008年7月に同社は企業向けの3D仮想空間プラットフォーム「WebFlock」を発表。他社のプラットフォームの仕様に合わせて企業を参入させるのではなく、同社独自のプラットフォームを提供しつつコンテンツ制作も行うという新たなビジネスを展開し始めた。
仮想世界事業モデルのカギは「プラットフォーム」へ Electric Sheep Companyの「WebFlock」
この3D仮想空間プラットフォーム「WebFlock」はFlashベースで動作しWebブラウザ内で操作できるのが特徴。既存のサイトのページ内に3D画面を埋め込むこともできる。またアバターや空間のデザイン・カスタマイズも可能で、 画像や動画を貼り付けたり、別に作ったカジュアルゲームを設置することもできる。以下はその活用例だ。
■ファン同士でお喋りが楽しめる「The L Word Virtual Chat」
仮想世界事業モデルのカギは「プラットフォーム」へ Electric Sheep Companyの「WebFlock」 仮想世界事業モデルのカギは「プラットフォーム」へ Electric Sheep Companyの「WebFlock」
仮想世界事業モデルのカギは「プラットフォーム」へ Electric Sheep Companyの「WebFlock」 仮想世界事業モデルのカギは「プラットフォーム」へ Electric Sheep Companyの「WebFlock」
「The L Word Virtual Chat」は日本でも人気のあるドラマ「The L Word(Lの世界)」のアバターチャットルーム。番組の公式ページ内に埋め込まれており、ドラマのファンは簡単な生年月日の入力だけで利用することができる。(ドラマ自体が成人指定なので子供は利用不可)
アバターは自分でカスタムするのではなく、ドラマの登場人物を模したデザインの中から好きなものを選択する形式だ。これはチャットルームに入場した際、ファン同士が「ドラマの中の好きなキャラクター」を見分けて、自分と同じ嗜好の人とお喋りができるという利点がある。またチャットルーム内で動画を視聴することもできるので、皆で同じ動画を見ながら感想を語り合うという「ニコニコ動画」的な楽しみ方も可能だ。もし気になるエピソードがあったら、ルーム内のオブジェクトにリンクされているDVD販売ページやダウンロードページに移動して即購入することもできる。

The L Word Virtual Chat
http://www.sho.com/site/lword/virtual_chat.do?source=m_tlw5_home_sept08_vchat
関連記事:
【VWCE in L.A.レポート】企業出展ブースいろいろ写真レポート(3)
■「車」のアバターをカスタム「Ridemakerz」
仮想世界事業モデルのカギは「プラットフォーム」へ Electric Sheep Companyの「WebFlock」 仮想世界事業モデルのカギは「プラットフォーム」へ Electric Sheep Companyの「WebFlock」
仮想世界事業モデルのカギは「プラットフォーム」へ Electric Sheep Companyの「WebFlock」 仮想世界事業モデルのカギは「プラットフォーム」へ Electric Sheep Companyの「WebFlock」
「Ridemakerz」は、パーツを自分で組み合わせて作ることができる車の玩具「Ridemakerz」と連動した男の子向け仮想空間。現実に販売されている玩具を買うと付いてくるコードを入力することによりログインできるという商品連動型のサービスで、ユーザーはリアルと同様パーツを組み合わせて自分のマシンを作り、レースゲームなどのミニゲームで遊んだり他ユーザーと一緒に動画を視聴したり、ワールド内に貼られたリンクから実際の玩具の販売ページに飛んで買い物をすることができる。
なにぶんアバターが車型なので一見似ても似つかない仮想空間に見えるが、アバターの動き方や基本的な機能はほぼ「The L Word Virtual Chat」と一緒だ。ただこちらは6~12歳までの子供向けのサービスなので、セキュリティ対策のため自由にテキストチャットは行えずアイコン(絵文字)の組み合わせのみでコミュニケーションする形式となっている。


Ridemakerz
http://www.ridemakerz.com/
関連記事:
カスタムカー玩具のRidemakerz、WebFlockをプラットフォームに仮想空間を構築
【Engage! Expoレポート】多彩な企業が集結!出展エリアのブースレポート ~その1~
この「WebFlock」、アバター操作は方向キーのみでマウスでの操作ができず、コミュニケーション方法もテキストチャットと絵文字のみでボイスチャットには対応していない。はっきり言って機能的にはもっと優れたプラットフォームも他にあるのだが、プラットフォーム活用において重要なのは「機能」ではなく「活かし方」なのではないだろうか。
特にこの「WebFlock」の場合はWebページ内に埋め込むことができるという特徴があるので、ユーザーに通常のWebページよりも”ちょっとリッチ”な体験を手軽に提供することができる。また、既存のWebページと調和の取れたデザインの空間も自由に構築することが可能だ。
全ての消費者が多機能な3D仮想空間を求めているわけではない。限られた機能でもサービスやコンテンツに見合った使い方をすれば、十分消費者に「楽しさ」を提供できるのだろう。
WebFlock
http://www.electricsheepcompany.com/webflock/
Electric Sheep Company
http://www.electricsheepcompany.com/
因みに日本国内でこのようなカスタム可能なプラットフォームの例を挙げるならば3Di株式会社の「3Di OpenSim」が挙げられるだろう。
3Di OpenSim
http://3di-opensim.com/

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