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【Slush Tokyo 2019レポート】アントレプレナー(起業家)ではなく家業を継ぐ”Graft(接ぎ木)プレナー” をフィーチャーする「グラフトプレナー」

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本家のSlushおよび世界各国の”ご当地版”Slushに参加するスタートアップのほとんどはTech系・デジタル系ですが、そんな中でちょっと異質な一角がありました。それがこちらの「グラフトプレナー」のブースです。

【Slush Tokyo 2019レポート】アントレプレナー(起業家)ではなく家業を継ぐ”Graft(接ぎ木)プレナー” をフィーチャーする「グラフトプレナー」

「グラフトプレナー(graftpreneur)」とは、「接ぎ木」を意味する「Graft(グラフト)」と起業家を意味する 「Entrepreneur(アントレプレナー)」を掛け合わせた造語です。「経営者」と聞くと、自分で新たにビジネスを立ち上げて会社を設立・経営する人のことを想像しますが、実は日本国内の99%以上の経営者は中小企業か自営業(個人事業主)で、古くから続く「家業」を継いでいる人達だったりします。しかし少子高齢化や多様な生き方の広がり、または経済的な事情により、「長子が家業を継ぐ」という昔ながらの進路選択がめっきり少なくなり、多くの中小企業や店舗、自営業者が事業の存続に関わる後継者問題を抱えています。
そんな中、「グラフトプレナー」がフィーチャーするのは、家業を持つ家に生まれ、家業を継ぎつつも、ただ両親がやってきた仕事をそのまま続けるのではなく、先祖代々引き継いできた有形無形の資産を活用し、家業の隠れた魅力や新たな価値を世の中に提案し、提供する次世代の経営者。「グラフトプレナー」では、日本各地で既存の家業を土台に自分の夢やアイデアを探究している経営者をゲストに2018年9月よりSlush Tokyoとともに都内でイベントを開催しています。

【Slush Tokyo 2019レポート】アントレプレナー(起業家)ではなく家業を継ぐ”Graft(接ぎ木)プレナー” をフィーチャーする「グラフトプレナー」
こちらが「グラフトプレナー」ブースの中。野菜やコーヒーが並んでいて一瞬フードコーナーかな?と勘違いしてしまいそうになりますが、勿論これらは立派な”プロダクトの展示”です。

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んふんふ(とは言えしっかり試食もさせて頂いたのですが)

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こちらはカレーフードスタンド「KITSUNE CURRY STAND」の展示コーナー。同店は、JAの規格に合わないという理由から収穫後に廃棄されていた規格外野菜を商品化するフードロスビジネスに取り組む栃木県のキュウリ農家「若松農園」と共同で、規格外野菜を材料にピクルスを開発しています。

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カラフルでシャレオツな見た目のピクルスですが、これらの材料も全て規格外野菜。私の実家も秋田県横手市の農家なので規格外の農作物のフードロス問題についてはよく知っています。曲がっている、凹んでいる、形が変、大き過ぎる、小さ過ぎるetc...JAに限らず、農作物を商品として売る際に最も重要視される基準は、それが美味しいかどうかという「味」ではなく、外見の美しさという「見た目」なんですよね。でも形が変でも農作物には変わりないので味は同じ、むしろサイズが小さいものの方がギュっと旨味が詰まっていて風味が豊かだったりします。なのに生産の現場に近ければ近いほどそれをいとも簡単に捨ててしまう。あまりにも身近だからこそ命の大事さや食べ物に対するありがたみが麻痺してしまうのが現実なのです。

【Slush Tokyo 2019レポート】アントレプレナー(起業家)ではなく家業を継ぐ”Graft(接ぎ木)プレナー” をフィーチャーする「グラフトプレナー」
このミニトマトのピクルスも元は規格外野菜。それぞれのサイズがバラバラで、収穫時に既に完熟の状態だったため、加工・販売する頃にはドロドロに溶けてしまうというのが理由ですが、完熟状態で収穫されたということは栄養満点で糖度も高い最高の状態まで育っていたということ。これが美味しくないわけがありません。

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【Slush Tokyo 2019レポート】アントレプレナー(起業家)ではなく家業を継ぐ”Graft(接ぎ木)プレナー” をフィーチャーする「グラフトプレナー」
んふんふ(こちらはインドに古くから伝わる健康食品「GHEE(ギー)」を国内で生産している「満月のGHEE」のコーナー。「ギー」とは、牛の生乳を発酵させたのち精製したクラフト万能オイルで、チーズでもなければバターでもない、独特の芳醇な風味とコクがあるのが特徴。このようにパンに塗るもよし、普段の料理に混ぜるもよし、本国インドではチャイに混ぜて飲んだりもするそうです。)

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んふんふ(ブースではギー入りのコーヒーが振舞われていました。コーヒーにオイルを混ぜる?!と思われるかもしれませんが、これが不思議と脂っこい感じが全くなく、かつコーヒーの風味とギーの風味がいい感じに同居していて、なんとも言えないコクのある味になっていました)

「満月のGHEE」では、純国産のギーを生産するため、岡山県の酪農家と共同で土地を取得して牛の放牧を開始。自然に近い環境でのびのびと乳牛を育てることで、質の高いギーを生産しています。ただし2頭の母牛の生乳から一日に作ることができるギーはわずか4瓶だけ。なのでまだ量産するまでには至っておらず、公式サイトで購入希望者を対象にニュースレター登録を募っています(次回販売の際に優先的に連絡するとのこと)。

現在「グラフトプレナー」は毎月東京都内でイベントを開催していますが、こうして改めてブースを見て、これは地方でこそやるべき取り組みではないか?と思えてきました。以前なら、「家業を継ぐ」という進路は「自分で選んだ仕事を辞める」「自分の夢をあきらめる」というネガティブな側面を持っており、だからこそ家業を継がない進路を選択する若者が増えたのでしょう。しかし「グラフトプレナー」が紹介する次世代の経営者は、家業を継ぎつつも、それを土台にイノベーティブな活動を行っています。こうした人はきっと日本中にまだまだたくさんいるはずです。実際、私も実家のある秋田県横手市および近隣の湯沢市にてそうした100年単位で続く家業を継いで革新的なプロジェクトを展開している経営者を何人か知っています。いつか「グラフトプレナー東北スペシャル」を開催してほしいなあ…なんて思ってしまいました。

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