私の中でベストオブインディーゲームおよびベストオブ雰囲気ゲームな謎解きパズルアクションゲームがあります。それがこの「Tengami」です。もうビジュアル、ギミック、サウンドいずれも文句のつけようがありません。私が本作を初めて見たのは2013年の東京ゲームショウでしたが(当時のレポート記事はこちら)、デモをプレイした瞬間「今年の東京ゲームショウの優勝はこれだ」と思ったものです。
見てのとおりの和風モチーフのゲームで、開発したのはイギリスのゲームディベロッパーRare出身の開発者が設立した日英混合スタジオの「Nyamyam」です。
文机の上に置かれている本を開くと…
本のページが開き、仕掛け絵本(または飛び出す絵本)のような画面が展開しました。これこそが本作最大の特長です。繊細な和紙の質感と仕掛け絵本の構造を完全再現した複雑かつ美しいアートワーク。テキストまで丁寧に仕掛け絵本式のギミックで表現されているこだわりっぷり!”3Dなのに2D”という不思議な世界観を堪能できます。
新しいステージに移動するのも仕掛け絵本のページをめくるのと全く同じ。画面を横にスライドするとそれまでのステージ(ページ)が折りたたまれ、新しいステージが開きます。
ゲームのストーリーは、枯れて花が咲かなくなってしまった桜の木を蘇らせるため、主人公が様々な季節のステージを冒険して新たな桜の花を集めるというもの。よく見ると足元の階段も紙を折りたたんで作ったような表現になっていて細かい!
操作方法は、移動したい場所をダブルタップすると主人公が自動的に歩き、気になるところがあったらタップしたりスワイプしたりして動かすというもの。主人公の動きが若干もっさりしている感がありますが、そこは慌てず急がずじっくりグラフィックを鑑賞する時間だと思って待ちましょう。
息をのむくらいに美しい画面!これぞ雰囲気ゲーです!ただ綺麗なだけではなく、葉っぱや花びら、雪などが散るアニメーションが加えられていたり、動物も動いて鳴いたり、ページ(ステージ)の中にさらに小さな”仕掛け”が隠されていたりと細かい演出が仕込まれています。
例えばこの画面では、向こう岸に渡らなければならないのに途中で道が途絶えています。そこで…
ちょうど道が途絶えている部分をパタンッと下にスライドして倒すと、通れる道が現れました。
こちらは川で分断された道。ここでは…
川のある部分をスライドすると折りたたまれた橋が出てきて…
向こう岸に渡れるようになりました!隠されたギミックを見付けた時は本当に仕掛け絵本を読んでいるかのような気分になります。
なお、ここでは主人公の後を狼が追いかけてきて、この狼の集団が最後の関門を邪魔してきます。彼らを足止めしないと先に進めませんが、この木にぶら下がっている音の鳴るアイテムを決まった順番で鳴らせば全てを一度に眠らせることができるとか。さてどういう順番なんでしょうか?
この序盤のシーンだけでも本作がいかに美しいゲームかお分かり頂けたでしょう。ちなみにグラフィックだけでなくBGMとサウンドも素晴らしいので、イヤホンやヘッドフォンを使用してプレイすることをオススメします。
さらにギミックは先へ進むほどダイナミックかつ複雑になっていきます。ここは古井戸の中に入ってあるアイテムを拾うシーンですが、まず主人公を光る部分に立たせて…
画面の右端をスワイプすると、古井戸全体がひっくり返るように折りたたまれて…
なんと井戸の中に入ることができました。空間移動自体を仕掛け絵本の”折りたたむ”ギミックで表現しているんですね。
巨大な神殿もこの通り!全部が綺麗に折りたたまれ、ページをめくることで一気に立ち上がります。
この神殿の内部にはクリアに必要な桜が隠されています。どうすれば柵の内側に入れるのでしょうか?神殿の一階に降りて改めて中の階段を昇ればいいのかも?
一旦神殿の外に出て周囲を探索し、石灯籠がたくさんある所に来ました。この石灯籠をいろいろ動かすと隠し通路が現れます。
ちゃんと地面の下に通路があると分かる仕掛けになっているのが凄い!あと発光する石灯籠が綺麗です。ここをずっと進んでいくと…
やはり神殿の一階に通じていて、見事桜をGETできました。これにて最初のステージはクリア!
とりあえず桜が一房咲きました。こうして全ての枝に桜を咲かせるのが本作の目標です。
本作は2014年にiOS版がリリースされましたが、世界各国のアワードを受賞しまくって高く評価され、iOS版、Android版、PC/Mac版、Wii U版と様々なプラットフォームに移植されました。いずれも内容は同じですが、雰囲気ゲーは大画面の方が堪能できるので、スマホよりはタブレット、タブレットよりはPCでプレイした方がいいかもしれません。進むに従い脱出ゲーム的なアイテム使用や暗号解読など本格的な謎解き要素が増してきて、全てのステージをクリアした後は、まるで1冊の本を読んだ後か映画を見た後のような満足感が得られます。
以下は私が好きなシーンやギミックです。