米Oculusが、同社が2016年3月にOculus RiftのローンチタイトルとしてリリースしたVRショートアニメ作品「Henry」を先月6月よりOculus Go向けにも配信を開始しました。太っ腹なことにクオリティはそのままにダウンロードは無料です！
「Henry」は、友達を作りたいのに体に生えている針のせいで誰にも近づけない孤独なハリネズミのヘンリーの誕生日を描いたVRアニメです。もともとOculusの子会社だった映画製作会社のOculus Story Studio（現在は解散）が手がけた第一弾作品で、かつてピクサーやルーカスフィルムに在籍していた3DCGアニメのベテランが集結し、監督は「メリダとおそろしの森」や「モンスターズ・ユニバーシティ」を手がけたRamiro Lopez Dau氏が担当しました。それだけのドリームチームが製作した作品だけあって、2016年第68回エミー賞にて「Outstanding Original Interactive Program」部門を受賞。VR作品がエミー賞を受賞したのはこれが初で、これ以降VR作品がエミー賞にノミネートされるのは恒例となっています。
VRアニメ「Henry」、第68回エミー賞の「Outstanding Original Interactive Program」を受賞
友達が誰もいないヘンリーは、家でたった一人自分で自分の誕生パーティを開きます。Oculus Rift向け作品がOculus Goに移植されたので、ヘッドトラッキング機能のないOculus Goではヘンリーの家の中を歩き回ることはできませんが、それでもクオリティは全く損なわれておらず、本当にヘンリーの家の中にいて彼の様子を近くで見ているような気分になってきます。ちなみに開発環境はUnreal Engine 4とのこと。
自分でバースデーケーキを運び、クラッカーや風船を用意し、ロウソクの火を吹き消すヘンリー。その表情はとても寂し気で、たまにちらっとこちらを見る「カメラ目線」に思わずドキッとしてしまいます。
あと素晴らしいのはヘンリーの家の中の雰囲気。このスクリーンショットだと縮小されて見えなくなってしまいましたが、窓から差し込む光に室内のホコリが透けて見えるんですよね。普通ならそんな細かく、かつホコリなんて一歩間違えたら不潔な印象になりそうなものなんか省くだろうに、それを敢えて加えることで、この部屋が「どこかに本当に存在する」ような存在感を持ちます。
で、上を見上げていたら突然日光が陰り、飾ってあった風船が光り出し…
なんと奇跡が起こり、飾りの風船に命が宿ってヘンリーの周りをくるくると回り出しました。たった一人の誕生パーティだとあきらめていたヘンリーは大喜び！しかし…
嬉しくて風船に近づいてしまったヘンリーは、自分の体に生えているトゲでその風船の一つを割ってしまいました。
途端に怖がって逃げ出す他の風船たち。なんとかなだめようとするヘンリーでしたが、風船たちは彼の家の中を逃げ回り、せっかくの誕生パーティの飾りやインテリアもめちゃくちゃにしてしまいます。
ここでまたもや凄いのは、インテリアが自分に向かって転がってくる、クリームが自分の方へ飛んでくるといった視聴者が思わずのけぞってしまうような演出が為されていること。それまで視聴者はヘンリーの家の中に佇み、ただ彼の孤独な様子を眺めている傍観者に過ぎませんでしたが、ここで騒動に巻き込まれる当事者になるわけです。本当に上手い演出！
風船たちと仲良くなることをあきらめたヘンリーは、自ら家のドアを開けて風船たちを外へと逃がします。めちゃくちゃになった室内にたった一人残されたヘンリーがかわいそう…
こうして再び孤独になったかと思われたヘンリーでしたが、実は風船たちは外に逃げたのではなく、ヘンリーの体のトゲが刺さっても大丈夫な新しい友達を探しに行ったのでした。その新しい友達とは…
このように同作はハッピーエンドで終わるハートウォーミングなVRアニメです。トータル10分弱の非常に短い作品ですが、確かにこのクオリティならエミー賞受賞も納得で、繰り返しになりますが無料でこれを見られるなんて本当にお得です。Oculus Goユーザーは是非ご覧下さい。