ここからは共同ブースではない一社/組の独自ブースが並ぶ「Demo Area」で見かけたVR系の出展ブースのレポートになります。昨年開催された本家「Slush 17」もちょっとしたゲームショウ並みにVR系のデモが軒を連ねていましたが(Slush 17全レポート記事はこちら)それほどではないにせよ、今回のSlush Tokyoでも様々なVR系ブースが並んでいました。
■VR×ブロックチェーン「VRT」
今年のSlush Tokyoはブロックチェーン/フィンテックに関するセッションや出展が多かったのですが、まさに本家SlushとSlush Tokyoのトレンドを併せ持っていたのがシンガポール拠点のソーシャルVRプラットフォームの「VRT World」でした。
同サービスはブロックチェーンに基づいたソーシャルVRプラットフォームで、ユーザーは同サービスのSDKとAPIにアクセスでき、サードパーティの開発者としてVR空間内にコンテンツを作り、分散型のマーケットプレイスで収益を得ることができます。プラットフォームはブロックチェーン技術に基づいており、ユーザーが作ったコンテンツには著作権や知的財産所有権が付与されるほか、お金の流れなども全てクリアにユーザーに開放されます。将来的にはユーザーにこのプラットフォーム内でVRゲームを開発してもらい、さらにe-スポーツ的なイベントも開催してその賞金もブロックチェーンで提供して…といったことも構想しているそうで、4月いっぱいまで1VRT=1USドルのレートでICO(Initial Coin Offering:仮想通貨を使った資金調達方法)を実施中です。「仮想空間内で経済活動をして仮想通貨で収益を得る」というビジネスは10年くらい前から既に3D仮想空間「Second Life」でも行われていましたが、仮想通貨をブロックチェーンにするところがまさに現代。今後はこうした仕組みを持つソーシャルVRプラットフォームも世界中でどんどん増えていくのではないでしょうか?
■お絵描き機能もあるVR空間構築ソリューション「NEUTRANS」
こちらは株式会社Synamonが提供するVR空間構築ソリューション「NEUTRANS」。Slush TokyoではOculus RiftとOculus Touchを使ってデモを展示していました。
「NEUTRANS」は、独自開発の標準機能と、顧客の要望に応じて開発する追加機能やコンテンツを組み合わせられるVR空間構築ソリューションで、企画部分から開発、納品まで一気通貫で提供しています。基本的な使い方は、アバターでVR空間にログインして、複数人でチャットミーティングをしたり、同時にスライドやWebページ、動画を閲覧したりといったもので、VR初心者でも5分程度で使用方法をマスターできるくらい直感的な操作性なのが特徴です。さらにOculus Touchを使って空間内にある3Dオブジェクトを動かしたり、拡大・縮小したり、さらにその場で文字や絵を描き、それをまた3Dオブジェクトとして掴んで動かしたりサイズを変えることもできます。同社では遠隔地にいるスタッフ同士が集まって会議やブレスト、デザインの検討などでの使用を想定しています。
■墨絵・陶墨画家の西元祐貴さんのVR美術館「VR Museum」
こちらは小麦株式会社が制作した、墨絵・陶墨画アーティストの西元祐貴さんの作品をVR空間内で観賞できるOculus Rift向けVR美術館の「VR Museum」。西元さんは墨絵を独学で学び伝統的な技法に捕われず、大胆さと繊細さを持ち合わせたタッチで「 躍動感」「力強さ」を追求した作品を描いているアーティストで、現在では海外にも多くのファンがいます。この「VR Museum」では、VR空間の中に美術館を再現するのではなく、敢えてグリッド空間や森の中、お座敷といった現実ではありえないようなシチュエーションで作品を鑑賞する構成にし、VRならではの表現と体験を作り上げたそうです。
360度眼前いっぱいに広がる西元さんの作品。その中からじっくり鑑賞したいものを移動して探し、Oculus Touchで引き寄せて拡大します。
「VR Museum」は、襖絵の龍が飛び出す「龍の間」、生き物の作品が展示された「森」、日本庭園を背景に戦国武将の絵が展示された「武将画展示室」、滝を背景に自然を描いた絵が展示された「自然画展示室」、グリッド空間にアスリートが描かれた「スポーツ画展示室」、燃え盛る火と共に作品鑑賞できる「陶墨画展示室」から成り、各展示室全体で作品ごとの世界観を表しています。海外にもファンがたくさんいるなたOculus Storeで有料配信すればいいのでは…と思いますが、オンライン上で配信するとなるとどうしても解像度を落とさねばならず、それでは”Museum"としてはやりたくなく、現在は西元さんの展覧会の会場に設置するなどしてコラボレーションを行っているとのこと。ということで西元さんの作品のファンの方はもし展覧会でこれを見かけたら是非試してみて下さい。アートの新たな鑑賞法が体験できます。