普通「恋愛シミュレーションゲーム」と聞くと、男性向けであれ女性向けであれ自分が主人公となり様々なキャラクターとの恋愛を体験するノベルゲーム的なものを想像しますが、これはちょっと違います。なぜなら自分ではなく他人の恋愛の世話を焼くゲームだからです。
この「キティ パワーズ・マッチメーカー」は、もともと2014年9月にイギリスのインディゲームディベロッパーのMagic Notionがリリースした恋愛シミュレーションゲームで、発表されるや否や各国のゲーム系メディアやアワードで絶賛されたタイトルです。それをロンドンに拠点を置くパブリッシャーのコーラス・ワールドワイドが日本のプレイヤー向けにカルチャライズ＆翻訳し今月日本国内にてリリースしました。オリジナルの英語版は300円の有料アプリですが、この日本語版は広告入り＆アイテム課金制のF2P（基本プレイ無料）タイトルとなっています。
ゲームの内容は、”ビデオゲーム・ドラァグクイーン”のMs. キティ・パワーズが経営する恋愛相談所の職員となり、相談所に訪れる愛に飢えたお客さんを好みの相手とカップリングさせていくことで業界随一の恋愛仲介人（マッチメーカー）を目指すというもの。ちなみにこのキティ・パワーズ、なんとMagic Notion代表で本作の開発者であるリチャード・フランキ氏本人が扮するキャラクターです。素顔はこんな人↓
化粧ってすごい
フランキ氏は「Little Big Planet」などで有名なゲームデベロッパーのMedia Moleculeのシニア・アーティストですが、自分のゲームスタジオを開設した途端にドラァグクイーンとしての活動も始めてしまったという面白過ぎるキャリアを邁進されています。ゲーム開発者兼ドラァグクイーンなんておそらく現時点では彼が世界初ではないでしょうか。
なお、本作は日本展開にあたりキャラクターデザインが若干アレンジされています。
こっちがオリジナル
こっちが日本版
このようにオリジナルの作風と雰囲気を損なわない程度にキャラクターがリ・デザインされています。日本版のビジュアル制作・監修は恋愛ゲーム「はーとふる彼氏」で話題となった玻都もあさんが担当されているとのこと。気合の入ったカルチャライズです。
本格的にゲームを始める前に自分のアバターを作ります。興味深いのは、アバターのデザインを決める前にキティ・パワーズからの質問に答えて性格診断的なものをやること。これが後々ゲームの進行にも影響してきます。
そしてアバターを選択。自分の好みのデザインに一番近いものを選び…
次の画面でさらに細かくカスタムしていきます。
こうして社員証が完成！いよいよ業務開始です。
まずは町にあるお店の中から恋愛相談所の広告を出稿する場所を決めます。ドクロにフライングVという”いかにも”なクラブがあったのでとりあえずそこを選択。
それにしても凄いのはゲームの各画面に実写のキティ・パワーズが登場すること。しかも表情やポーズ、小道具が全て違います。一体何枚写真撮影をしたのでしょうか？ここまで開発者自身が頻繁にゲームに登場するタイトルも珍しい！
お客さん第一号ｷﾀ━━━━(ﾟ∀ﾟ)━━━━!!
趣味が「ボディペイント」「読心術」「墓地巡り」
なんだコリャ？
自分のアバター設定で「先鋭的」を、広告出稿先で「ナイトクラブ」を選択してしまったために個性的過ぎるお客さんが来てしまった…。
お客さんはそれぞれ男性・女性どちらに興味があるか？タイプの外見は？と好みが異なるので、なるべくそれに近い候補者をリストから選んでデートをセッティングします。ここで重要なのは外見よりも「職業」。お客さんや相手が「弁護士」などの士業や経営者といった高収入な職業であればあるほどカップリングが成立しやすくなりますが、肉体労働系や「事務員」など地味な職業だと会話が弾まずデートの雰囲気もビミョーに…。こちらとしてもカップリング件数が自分の評判を左右するので、なるべく高収入なお客さんに来て欲しい…このゲーム、ブッ飛んでいるように見えてなかなかリアルな内容です。ただし上記の場合は「都市探検家」と「陰謀説研究家」のデートなので高収入云々以前の問題です。そんな職業があるか！
お客さんのデート相手を選んだら、次はデートに使うレストランを選択します。最初に選べるのは「中華」「インド料理」「和食」の3種類。デート相手はかなりの確率でベジタリアンであることが多いので、最初のうちは和食レストランにしておくのが無難です。
お互いの外見の好みが一致しているとデート序盤から良い雰囲気になります。結局人間は見た目が9割か！やはりリアルなゲームです。
基本的な会話の流れはスロットを回して決めますが、ここはもう完全に運次第。ランダムに決定される3つのテーマの中から好きなものを選べますが、同じ話題を2回選んでしまうと「退屈な奴」と思われて最悪の場合即フラレてしまうので要注意です。また、低収入っぽい職業の相手に「職業」の話題を振ったり、どう見てもダサい外見の相手に「髪型」「服装」の話題を振るのも墓穴を掘る結果になるので避けましょう。
この後、わざと心にも無い答えを選択してごまかしきれるか、それともボロが出るかをルーレットを回して決めたり、神経衰弱や間違い探しなど「記憶」を試すミニゲームをいくつもこなしてデート成功を目指します。ぶっちゃけ脳トレ的なミニゲームの連続なのですが、そこに「違う個性のキャラ同士のデートを成功させる」という目的とストーリーがあるので、何度プレイしても飽きることがなく、むしろプレイする度に異なるハラハラドキドキ感が味わえます。
幸いにもこのカップルは見事成立となりました。まあ一番最初のお客さんはチュートリアル的なものだろうから、余程のことがない限り失敗することはないと思いますが。
本作はジェンダーフリーなゲームなのでLGBTのお客さんもたくさん来ます。それにしてもなんでみんな揃いも揃って黒服なんだろうか…
LGBTのお客さんでもデートの流れや難易度は変わりません。性的指向よりも重要なのは「選択」とそれによって変化する「会話」。どうも私は一番最初の選択で無駄に難易度を上げてしまったようです。開始時に「先鋭的」を選択してしまったために会話の選択肢までこんなことに…
残念ながらこのお客さんはカップル不成立に終わってしまいました。とは言え、1人のお客さんにつき3回までデートをセッティングできるのでやり直しは可能です。3回とも失敗するともう二度と来てくれなくなりますが。
次はゲイのお客さんです。趣味が「ラジオ鑑賞」「ヘビメタ音楽」「戦車」は私のお客さんの中では普通の部類なのでこれはいけそう！
リスト上のイチオシの相手が「白魔術師」
いい加減にしろwww
デートでお互いの職業を言い自己紹介。白魔術師の相手に対してお客さんは「オフィス・アシスタント」というパッとしない職業です。正直に真実を言うべきか？それとも嘘を付いて乗り切るか？…って嘘の答えが盛り過ぎ！
ウェイターに渡すチップを計算する算数問題を解きます。ここで間違うと相手に「計算もロクにできないバカ」と思われてしまうので慎重に答えを選びましょう。
相手の職業が謎でしたが、幸いにもデートを良い雰囲気のまま終わらせることができました。思い切って「付き合ってくれますか？」を選択してもいいかも？
やった！一発でカップル成立！
こうしてカップルを成立させていくと徐々にレベルが上がり、それに従いオフィスも少しずつ大きくなっていきます。
本作の魅力は何と言ってもクレイジーなキャラクターの設定と会話です。恋人を求めるお客さんと相手、ちょいちょい出てくるキティ・パワーズと、このゲームには普通の人は一人も出てきません。とにかくデートの超展開が面白く、これまで恋愛シミュレーションゲームをプレイしたことのない人でも楽しめること間違いなしです。
あとローディング画面に至るまで凝りに凝っています。いちいち違うメッセージとキティ・パワーズのどうでもいい情報が表示されるのが楽しい！
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