グリー株式会社の新スタジオ「Wright Flyer Studios」が、不思議な傘を持った男の子が様々な場所を冒険して障害物を避けながらゴールを目指すスマートフォン向けカジュアルアクションゲーム「el（エル）」をリリースしました。9月11日にiOS版の提供を開始し、それからわずか10日で30万ダウンロードを突破するなど順調に推移しており、現在はAndroid版も提供中です。
本作は幻想的なアートワークとピアノ演奏の美しいBGM、凝った世界観が特徴の所謂”雰囲気ゲー”です。人物やオブジェクトは全て黒一色で描かれ、ステージをこなすごとに展開する物語はまるで昔のサイレント映画のよう。物語の冒頭、少年はなぜか断崖にある牢獄で目を覚ましますが、その理由は一切明かされません。本作にテキストやゲームの具体的な説明はほとんど表示されず、全てが影絵のようなアートワークで示されます、少年はなぜ牢獄にいるのか？壁に描かれている羽のような絵は何を意味するのか？なぜ彼のもとに空飛ぶ傘が落ちてたのか？そんな疑問が次々と湧いてきます。
そして少年は空飛ぶ傘を使って外の世界を冒険します。ゲーム中の基本操作はタップとフリックのみで、タップをすると傘が開いて上昇し、閉じると下降、フリックで風を吹かせて前後に移動させるという仕組みです。飛んでいると少しずつ画面左上にある傘のゲージが減っていくので、ステージ中に出現する光る羽を拾って回復させつつゴールを目指します。
物語の展開によって新しいキャラクターに出会うこともあります。例えば女の子に出会うと…
次のステージでは女の子と一緒に飛んだり。キャラクターと障害物はシルエットのみで描かれ、背景は和紙のような質感と色合いで表現されています。何気に遠近感も表現されているのが細かい！ゲーム自体はそんなに難しくなく、失敗しても3～4回くらいやり直せばクリアできる感じです。海外の雰囲気ゲーは「死にゲー」であることが多く、「せっかく美しいアートワークを鑑賞したいのに肝心のキャラがすぐ死ぬ」ということになりがちですが、本作ではゲームをプレイしながらじっくり独特の世界観を堪能できます。
途中でゲームオーバーになるとどこまで進んだか表示されます。だいたいいつも「あともうちょっとだったのに！」というところで力尽きてしまうのですが…
なお、プレイしていくうち徐々に物語の背景に戦争の影があることがなんとなく分かってきます。
そういえば前のステージ、荒廃して爆弾みたいなものが飛び交っていたような…
ちなみに結論から言うと本作は悲しいお話で、結末には賛否両論あるかもしれません。しかし雰囲気ゲーとしてはかなりの良作です。普通だったらこのレベルのタイトルは100～500円くらいしそうなのに、ダウンロード価格は無料なうえにスタミナ制でもなく、課金要素も一切なければ画面中に広告すら表示されず、本当に一つの独立した「作品」です。太っ腹！雰囲気ゲーが好きな人は是非プレイしてみて下さい。