今回Japan Expoの取材を行うにあたり事前にいろいろと自分なりに調べてみたのですが、どうも数年前よりJapan Expoに「ジャパン」じゃないアジア人が日本人になりすまして紛れ込んでいるのではないか？という噂が囁かれているとのこと。そこで、果たしてそれは事実なのか実際に会場で調べてみました。
…といいますか、もうわざわざ探すまでもなく日本関連以外の企業・団体は普通に参加しています。例えば分かりやすい例だと韓国Tech界の雄・サムスン。今回同社はサムスン名義では出展していませんでしたが、フランスのガジェット販売サイト「LDLC.com」のブースにロゴがドーンと展示されていました。
そういえば会場の最寄り駅であるParc des Expositions駅の構内に貼り出されていたのは韓国の漫画家・キム・ビョンジン氏の作品「Warload」のポスターでした。キム氏は今回のJapan Expoにゲストとして招待されており、出版社のブースにてサイン会も行われました。
現在では日本の漫画のみを取り扱っていた出版社も韓国人漫画家の作品を取り扱うようになっているとのことで、Japan Expoの売り場にも日本の漫画と一緒に彼らの作品が陳列されていました（左上のやつ）。
こちらは日本だけでなくアジア地域のアーティストの楽曲販売を手がけるフランスの「Musica: Asia World Music」のブース。販売されていたものは日本のアーティストと韓国のアーティストが半分ずつといったところで、日の丸と太極旗が一緒に飾られていました。Japan Expoの出展要項には一応「出展は日本関連のものに限る」とあるのですが、これだけ膨大な出展者数と販売物の前には当日チェックなんてほぼ不可能ですし、ヨーロッパ人の目には日本人も韓国人も日本語も韓国語も区別が付きません。日本人がフランス人とベルギー人を区別できないのと一緒です。
こちらは日本と韓国のグッズ販売を手がける「TAIYOU」のブース。こちらも日本と韓国が半分ずつといったところですが、会期中はブース前でスタッフがK-POPをBGMにパフォーマンスを行ったり日本のアニメソングの韓国語バージョンを流したりとかなり韓国を全面に押し出していました。
「TAIYOU」が販売していた商品ですが、よく見たところ偽物が非常に多かったです。アーティストやキャラクターのグッズは権利表記の無いものが多く、一見オリジナルと思しき商品もどこからかモチーフを引っぱってきて流用したものだったり。それにしても日本人や他の国の人が旭日旗をモチーフに使うとムチャクチャ怒られるのに、Japan Expoでは太極旗の横で旭日旗モチーフのアイテムが普通に売られているというのが複雑です。金になるならOKなのかよ！というか今気付きましたがJapan Expoのロゴも旭日旗モチーフでした。
日の丸と太極旗が一緒に飾られている光景は既にJapan Expoでは別段珍しいことではないのかもしれません。
出展者？一般参加者？誰かは分かりませんが何者かによって勝手に会場内に貼られたK-POPアイドルのフライヤー。剥がされてもすぐに新しいものが貼られるのでイタチごっこです。
なお、Japan Expoに参加しているのは韓国だけではありません。
こちらは台湾から来たドライフルーツ屋さん。ブース内では高麗人参も販売していました…って日本にぜんぜん擦ってもいないし。まあフード出展の内容自体は日本に限定されていないのでOKっちゃOKですが。実際食べてみましたが結構美味しかったです。
そして最もカオスなのはグッズ販売エリア…
す ご い
ここのエリアに本物の商品はほとんど無く、日本人の業者は誰もいません。ほぼ中国人、韓国人、その他の東〜東南アジア人ばかり。見分けるのは簡単。お店番の人達に日本語で話しかければいいだけです。せいぜい喋れるのは「こんにちは」「ありがとう」などの挨拶だけで誰もちゃんと日本語は話せません。どこも接客はフランス語と英語、スタッフ同士の会話は母国語という感じです。
バカ売れだった日本刀販売ブース。複数ありましたがどれも日本人の業者ではありませんでした。しれっとスウェーデンのMojangのサンドボックスゲーム「Minecraft」の剣も売っています。それ日本のじゃないしw
このタイプのショルダーバッグはほぼ例外なく偽物です。もはやオリジナルのコンテンツの絵すら使用しておらず、pixivで評価の高い絵師さんの作品を無断でプリントしたものもあり。またここでも日本のコンテンツと韓国のK-POPアイドルがごっちゃになっています。しかし安価で収納力があるので一般参加者にバカ売れ。会場で買ったものをまとめて入れて帰るには便利ですからね。
これらももちろん全て偽物。
「となりのトトロ」のバッグ。一見刺繍が施されてしっかりした作りなのですが…
タグを見ると「スタヅオヅブリ」。真面目にやれwww 東北の年寄りかよ！
このピカチュウのTシャツももちろん偽物。このブースの数メートル先に任天堂のブースがあるんですが…凄い度胸だ…。
着物と一緒にチャイナ服も販売。どちらもナイロン製の偽物。
…と、このように偽物グッズや「これなら浅草に行った方がもっと良いものが安く買えるのに…」という粗悪なお土産もどきを売る店がてんこ盛りでした。しかしそれでも皆大繁盛しているのです。Japan Expoには「偽物の売買禁止」という出展要項もあるのですが、申し込み段階ではそのブースが偽物を売るかどうかを判断することはできないし、当日主催者側のスタッフが見廻ってチェックをするには手が足りないでしょう。また前述のように、フランス人には日本人とそれ以外のアジア人を、日本語と中国語・韓国語を、正規品と偽物を見分けることは困難です。
興味深いことに、Japan Expoでは日の丸を掲げたブースこそ日本人ではないのです。もともとJapan Expoは”日本”に特化したイベントなのだから、出展者はわざわざ日の丸を掲げる必要はありません。日本人ではない出展者は手っ取り早く信用を得るために敢えて日の丸を掲げているのです。
しかし我々は彼らを非難できるでしょうか？そもそも、なぜJapan Exponで日本人以外のアジア人がビジネスをしているのでしょうか？それは日本人の会社が来ていないからです。また、なぜJapan Expoの一般参加者達は彼らから偽物の商品を買うのでしょうか？それは日本人が正規品をヨーロッパで販売しないからです。さらに彼らは英語とフランス語で難なく接客をしていました。一方日本人は大卒者でさえフランス語はおろか英語すら習得していない人がザラです。もし日本人以外のアジア人がJapan Expoに参加するより先に日本のグッズ販売業者やコンテンツ企業がたくさんJapan Expoに参加していたら、おそらくここまでひどい状況にはならなかったはずです。Japan Expoは今現在フランスで起こっていることの”縮図”です。パリに異常増殖する寿司屋や日本オタクショップで売られている商品と同様のことが、ここJapan Expoでも起こっているのです。このままでは「日本的なるもの」は良い意味でも悪い意味でも溶解し、いずれ近い将来Japan Expoは事実上「Asian Expo」になってゆくでしょう。
私は、この件で一番悪いのは危機感もなく語学力もなく海外の情報を知ろうとせずガラパゴスな環境でボンヤリしている日本人だと思います。そんな我々にJapan Expoに紛れ込んでビジネスをしている他アジア人に対しヘイトスピーチをする資格も時間もありません。そんな時間があったら語学学習や海外市場のリサーチに充て、むしろ彼らのスピード感とバイタリティを見習わなければなりません。そして彼らを凌ぐ規模で日本人自身がJapan Expoに参加しなければなりません。