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【レポート】~リアルとバーチャルの接点~「セカンドライフまちづくりプロジェクト」成果発表

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2月10日(火)、株式会社内田洋行の「ユビキタス協創広場 CANVAS」」にて東京大学公共政策大学院主催の「「セカンドライフにおける持続可能なエネルギー・環境まちづくりコンペ」の講評会が開催された。

これは昨年6月から始まったプロジェクトで、一般の人々に社会が求める「環境を体現したあるべき街の姿」をセカンドライフ内に表現してもらい考察していくというもので、財団法人第一住宅建設協会の助成によって行われた。
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プロジェクトは、お互いに顔見知りではない一般ユーザーの応募者から構成された2チームがまちづくりを競い合う「コンペ」と、SIMを小区画に分けて希望者に無償で貸し出し、区画ごとに「町内会」で話し合って都市計画を議論するという「レンタル区画」の2種類が行われた。
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まず「レンタル区画」は、チームを「1丁目」と「2丁目」に分けてそれぞれ別に町を作ってもらったところ、1丁目はゆるめの都市計画になったのに対し、2丁目は建築物の色彩まで制限する厳しい都市計画となり、まるで正反対のまちづくりになったという。
一方、コンペも2チームに分けて、それぞれ協議しながら「持続可能な環境とエネルギーを備えたまち」を検討してデザインするようにしたところ…
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「チーム1(2名で構成)」は、実際の京都にある水路橋「水路閣」をイメージした水路とエネルギー循環型のセンタービルを備えた見事な街を作り上げた。
しかし「チーム2(4名で構成)」は………
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なんと更地のまま。これは、街を作る前にチームの中でそれぞれの意見が衝突し、そのすり合わせができずに結果的にチームそのものが崩壊してしまったためだという。
東京大学公共政策大学院特任准教授の松浦正浩氏によれば、「チーム1は2名で、一人はセカンドライフ自体は初心者だがやる気があり環境技術に興味のある人で、もう一人がもの作りの実作業を担当した。”ネタ出し”と”製作”の作業分担がしっかりできており、目標の共有がしやすかったため成功したのではないか」とのこと。
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……ということで自動的に優勝はチーム1となった。首都大学東京の渡邉英徳氏は、「仮想世界でクリエイティブなディスカッションをするのは実はすごく難しい。本当にもの作るときはかなり痛々しいことも話さなければならないが、まだ仮想世界ではそこまでできない。それを埋めるため現実世界で打ち合わせて補っているのだが、それを考えるとチーム1は2人でセカンドライフ内だけでこれだけのものを作れたのは素晴らしい」と講評した。
尚、このチーム1の作品及びレンタル区画はまだセカンドライフ内で公開されているので興味のある人は見に行ってみては如何だろうか。
http://slurl.com/secondlife/delidemo/124/127/22
しかし今回のコンペの結果を見るに、実は「まちづくり」の前にその街を作るチームやコミュニティといった「人の和」を作る必要があるのではないかという気がしてくる。尚これについては、この後行われたパネルディスカッションにおける株式会社マグスル代表取締役の新谷卓也氏の言葉が非常に興味深かった。
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新谷氏曰く、「セカンドライフ内でのコミュニケーションは現実よりも頻度が高い。現実では友達と毎日会うことはあり得ないが、セカンドライフは毎晩ログインして顔を合わせるので急速にコミュニティが形成され、崩壊していく」のだという。ただ傾向として、早い段階で自然発生的にボランティアのリーダーが定まるとコミュニティは長続きする傾向にあるとのこと。
また上手く回っているコミュニティには、ある一定の法則とも言えるほどの「職業」が出来上がっているのだという。それは…
・企画者(ワイワイ騒いで基本的に何もしない)
・ビルダー(建物を建築する人)
・スクリプター(スクリプトを書く人)
・小物作り(ベンチなど小さなオブジェクトを作る人)
・洋服作り
・イベント運営・進行
・ただ遊ぶだけの人

の7”職種”で、それぞれの職種担当が一人ずつくらいだとそれぞれの領域を侵食せずに上手くまとまるらしい。
今回のこのコンペは、先にも述べたとおり”一般の人々に社会が求める「環境を体現したあるべき街の姿」をセカンドライフ内に表現してもらい考察していく”というものだったが、むしろそこから見えてきたのは街の姿ではなく「人々の姿」のような気がした。セカンドライフは何でも好きなものが作れる自由度の高いプラットフォームなだけあり、まずは街(建物)を作ろうと思ってしまう。しかし、その前にまずそこにいる人々とコミュニケーションし「コミュニティ」を作らなければ何も始まらない(しかしそれが一番難しいのだが…)という事実が改めて浮き彫りになった、非常に興味深い試みだったと言えるだろう。
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