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3D仮想空間「Second Life」から生まれたファンタジー小説「グリアの夢」

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グリアの夢―セカンドライフ物語

Second Life内でいち早く環境保護団体や人道支援団体、NPO団体を支援するSIM「八国山アイランド」を構築し、ビジネス目的ではない慈善事業を推進する株式会社インターリンクの協力の元に執筆されたSecond Life・ファンタジー小説です。しかし、「ファンタジー小説」というジャンルでありながら、そこに書かれていることのほとんどは事実に基づいており、主人公の「グリアさん」のモデルとなった人物も実在します。また物語の途中途中に現在Second Lifeで活躍している人々へのインタビュー記事も織り込まれているのも興味深いです。
物語は、インターリンクで新規事業を担当する社員の今橋麻衣(=グリアさん)氏の一人称で進行していきます。面白い上司”広島部長”と二人だけで進める「Second Life」という未知の世界での新規事業に、当初彼女は悪戦苦闘しながらも、その世界に入り込むにつれ徐々にSecond Lifeの楽しさや可能性を見出していきます。物語の展開が、グリアさんがリアルライフとSecond Lifeを行ったりきたりしながら進むようになっているので、まるで読んでいるこちら側もSecond Lifeにログインしているかのような感覚が味わえるのが面白く、また「Second Life初心者」の目線からインワールドの様子が描写されるので、Second Lifeを始めたばかりだったりまだログインしたことのない読者でも、なんとなくSecond Lifeの真の姿を理解できるよう工夫がなされています。何より、「インターリンク」という”企業”が物語の起点になっていながらも、Second Lifeは「個人と個人の繋がり」で成り立っているということがしっかりと描写されているのが印象的です。
現在の日本におけるSecond Lifeの報道のされ方はなぜかビジネスばかりに偏っています。どこの企業が参入したかなどのニュースが大きく報じられ、二次報道や評論・分析もそのほとんどが企業の発表を元にしたもの。そして書店に行けば「ビジネス参入」「儲け方」の書籍が並ぶという体たらく。しかし実際のSecond Lifeユーザーは、そのようなビジネスとはまた別のところで個々に繋がり、様々な可能性を試し、Second Lifeそのものを楽しんでいます。そこにはリアルライフでは失われつつある原始的な対話のコミュニケーションや助け合いの精神が生きているのですが、本書ではそれが上手い具合に物語の中に取り上げられています。物語の終盤、グリアさんはビジネス一辺倒な広告代理店からの相談を受け、商店街SIMの活性化のために大学時代のボーイフレンド「彰」が主催する”Second Life内バンド”と”ちんどん屋さん”を呼びイベントを企画。そして最後にSecond Lifeに世界平和に役立つ島を作るべく社長にビジネスプランをプレゼンし、「彰」とちょっと良い雰囲気になったところで物語は終わります現実を元にした小説なので「もしかしたら続編があるかも…?」と思わせるところもミソです。
Second Lifeでの活動を通して、現実世界もより良きものにしたいという本書でのグリアさんの思いに共感するユーザーはおそらく多いと思われます。企業が今後どのようにSecond Lifeを活用し社会貢献していけばよいか、一つの好例を示した本とも言えるでしょう。

グリアの夢―セカンドライフ物語
グリアの夢―セカンドライフ物語

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