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「セカンドライフを読む。」を読んだ

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セカンドライフを読む。

小説家のティム・ゲストが実際に3D仮想空間「Second Life」にログインし、そこで様々な人に出会い、対話をして仮想空間に迫真したおそらく世界で始めての本格仮想空間ルポタージュ本です。今までたくさん刊行された「初心者入門本」や「ビジネス参入本」とは一味違い、実際に仮想空間で”暮らす”ユーザー個人との対話から「生」の仮想世界の姿を追っています。

著者はインワールドでのインタビューに飽き足らずリアルでのインタビューも敢行し、Second Lifeの運営元であるLinden Labのスタッフからバーチャルマフィアなどの「嫌われ者」ユーザーまで多種多様な人物にインタビューを試みます。最後には韓国まで取材旅行に行き、韓国における仮想空間の現状を調査するほど。
日本版のタイトルは「セカンドライフを読む。」となっていますが、実際の内容の半分くらいはSecond Life以外の話題で占められており、他社のMMORPGについての記述も多いです。また、エッセイの形式をとっているので著者独自の見解や考察も多く、この人は少々悩み過ぎではないか?と思う部分もちらほら。しかしMMORPGも含めた「仮想空間」全体について語られているので、現在の仮想空間を取り巻く状況を俯瞰的視点で知るにはとても良い本でしょう。World of WarcraftやEverQuest、LineageなどのメジャーなMMORPGだけではなく、初めて名前を聞くようなマイナーなMMORPGや仮想空間もとり上げているので興味がより一層深まります。
特に印象に残ったのは、冒頭から最後まで繰り返し登場する心身障害者のグループ。ボストン郊外にあるデイケアセンター「エバーグリーンセンター」では、”ワイルド”と呼ばれる9人のグループが一つのSecond Lifeアカウントを共用しており、困難なことが多い日常生活の中で、彼らはSecond Lifeをプレイ(実際は介護士が代理で操作)する時間を何よりも楽しみにしています。彼らは一つのアバターを通して、歩き、飛び、踊り、笑い、服を着替え、他人と会話を楽しみ、自由の利かない日常から開放されます。その結果、グループのメンバーはリアルライフにおいても以前に比べて明るく生き生きとした性格になったとのこと。
日本でのSecond Lifeの報道のされ方はなぜかビジネスばかりが先行し、今も企業のビジネス参入の話題に事欠かない状況です。しかし本来、仮想世界とはもっと自由で多様な可能性を秘めているものではないでしょうか。ビジネスも結構ですが、日本でももっと上記の心身障害者グループのように「人間」そのものを解放するような、リアルライフをより良くするための活用事例もあってよいのでは?と考えさせられました。

なお、原書はこちら↓
Second Lives: A Journey Through Virtual Worlds
Second Lives: A Journey Through Virtual Worlds

セカンドライフを読む。
セカンドライフを読む。

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