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【レポート】東北からスケールするビジネスを生み出そう! 「仙台アライアンスピッチイベント」レポート

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12月14日(金)、仙台市内のコワーキングスペース「enspace」にて、グローバルラボ仙台と仙台市経済局産業振興課主催によるスタートアップ向けのピッチイベント「仙台アライアンスピッチイベント」が開催されました。

「ピッチ」とは、あらかじめ定められた制限時間以内(通常3~5分くらいの短時間なことが多い)で起業家が自社サービスやプロダクトを投資家やメンターにプレゼンするイベントです。だいたい起業家向けの大型イベントなどの一環でコンテスト形式で行われることが多く、審査を勝ち抜いた起業家には賞金や資金援助などの特典が贈られます。

ただ、東京あたりの首都圏では大型の起業家向けイベントなんて年に何回も開催されているし、首都圏をベースに起業云々に関わっている人であれば「ピッチ」がどんなものかも知っていますが、一歩首都圏から離れて地方に行くと、起業家向けの大型イベントはなかなか開催されず、そもそも0→1で新しく何かを始める起業家自体が少ないためコミュニティも小さい…という厳しい現実があります。そのため起業家でさえ「ピッチ」という言葉を知らず、当然「ピッチ」をやった経験もないというケースがザラ。そう、地方の経営者が資金調達するといったら未だに「銀行から借りる」なんですよね。もちろんそれも大事ですが、銀行の融資担当者と話すのと、ステージの上に立って投資家やメンター、大勢の観覧者に向けて手短にアピールするのは全然違います。

今回のイベントは、資金調達したい起業家向けに、まずは仙台で「ピッチ」をする機会を増やすことを目的に開催されたもの。コンテスト形式ではありませんでしたが、参加企業はこれを機に審査を担当したメンターから様々なアドバイスを受けたり、事業内容によってはメンターとの協業や出資などの可能性を模索することができました。とりあえず「機会」を創出し、一人でも多くの人に「ピッチ」を体験してもらうところからスタートというわけです。

今回出場したのは書類審査によって選ばれた計5社。いずれも業種やサービス内容が一切かぶらない、バラエティ豊かなラインナップとなりました。

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トップバッターは、機能性衣服「リライブ」の開発・販売を手掛ける株式会社身体機能研究所。「リライブ」は、東洋医学で「経絡」と呼ばれる「気の通り道」を利用して体調を整えるサポーター的な補助衣服です。「経絡」には「任脈」と「督脈」という身体バランスに役割を持つ経絡があり、それぞれ背中にある筋肉「棘上筋」および「大円筋」と連動しています。「リライブ」は、この2つの筋肉の上に鉱石を配合した特殊なマジックテープを貼ることで「任脈」と「督脈」を活性化し、身体バランスを整えて通常よりも楽な動作で大きな力が出るようにします。
なんとなく「気功」や「鍼灸」を連想させる製品ですが、意外にも中国圏に類似商品はなかったそうで、既に特許登録と意匠登録も済んでいるとか。ターゲット顧客層は、アスリートや肉体労働者、介護労働者、高齢者で、今後は身長や胸周りなどより細かい段階別の製品を作ることを計画しているそうです。

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ピッチ終了後の懇親会で実際に「リライブ」を試すことができましたが、確かに装着後はウソのように楽に力が出せるようになりました。最近では介護や肉体労働の現場に外骨格型のパワードスーツを導入する動きがありますが、パワードスーツは一台100万円単位と高価で、金銭的にまだまだ手が出ないところの方が多いでしょう。しかし「リライブ」の販売価格は9800円。パワードスーツを導入する前に試すには手頃な価格と言えます。ただ体験したらすぐに効果を理解できるものの、それを言葉で説明するのが難しい製品なので、持ち時間5分のピッチステージではかなり苦戦していたようでした。

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二番手は、本社が東京で仙台に開発部を置き、画像処理とAIを利用した自社製品システムを開発している株式会社シーデックス
現在同社はAI自動学習を利用した製品の良否判定ソフトウェアを開発しています。これはPC(モデル学習兼検査用)とAI、カメラ、撮影ボックス(固定照明付き)で構成されており、主に製造業のラインで様々な外観検査に応用可能。これまで人の目視によって行っていた検品作業を自動化することができます。
リリースは2019年初頭の予定で、さらに今後もハードと連携した高速化にも取り組むことも計画しており、目下の課題は販売拡大に向けた顧客獲得とのことでしたが、メンターからは、既に競合他社が現れ始めており、サービス内容のブラッシュアップにせよ販路拡大にせよ独自要素がないと強くアピールできない点について指摘がありました。

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三番手は、スマホの位置情報を利用したスポット情報と、スポットについての動画投稿機能を組み合わせたショート動画アプリ「sirube」。既存のスポット情報アプリと似ていますが、それらは自分が欲しい情報を検索して探さなければならないという煩雑さがあります。「sirube」では、他のユーザーが投稿した動画をきっかけに、直感的にふらっと立ち寄れる場所を見つけることができるアプリを目指しているとのこと。

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主なターゲットは、おでかけ中の20代男女(大学生~若手社会人)ですが、近くを歩くウォークイン顧客を獲得したいと思っている小規模なスポットの運営者も対象としており、入店した際にチェックインしたり、アンケートに回答することでクーポンが付与されるといった送客機能も備えています。基本的な投稿やアンケート作成は無料で、収益モデルは位置情報ベース×ターゲティング型の動画広告、タイアップ型動画制作、アンケートによる定性データおよび位置情報データの提供など。リリース時期は2019年1月の予定で、サービス内容や収益モデル、今後のスケジュールも具体的だったことからメンターの反応も良く、「自分の子供にも教えて感想を聞いてみたい」といった声も上がりました。

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四番手は電気乗り物を製造・販売するモービルジャパン株式会社。同社は主に「トライク」「ミニカー」と呼ばれる、前輪1つ後輪2つの「三輪車」を製造・販売している企業で、商品企画・開発・部品仕入れ・販売を仙台で、生産を中国浙江省にある工場で行っています。
三輪車の利点は、二輪よりも安定感があるため転倒事故が少ないこと。そのため意外にも高齢者のオーナーが多く、メインの購入者層は70代で、90代で乗っているオーナーもいるそうです。さらに自動車のように車検がなく、一方で自動車の扱いとなるためヘルメットをかぶる必要もなく、電気で走るのでガソリン要らず。後輪が2つなのでその分後ろに荷物を積むスペースがあり、既にコンビニやヤクルトの配送用に導入されています。まさにバイクと自動車の良いとこ取りといった製品ですが、モービルジャパンの強みは「低価格」であること。同社では生産を中国で行っており、また有名なメーカーではないこともあり、一台あたり20万円台~50万円台で販売しています(大手メーカーの三輪車は70万円台~)。
既に製品があり、かつ直接/代理店販売実績もある同社ですが、目下の”悩み”は三輪車自体の知名度がまだ小さく営業が大変なこと。これについてメンターから、「販売ではなくシェアリングエコノミー型のビジネスを展開するのはどうか?」といった提案も出ましたが、同社代表の木村裕さんは、あくまでも「販売」にこだわりたい様子。そこでメンターからは「敢えて直販エリアを宮城県だけに絞って拠点を固める」「広告代理店を入れて大々的に三輪車をPRする」といったアドバイスが出ました。

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ラストは、子供向けの安価なプログラミング学習ツール「JoinToy」を開発する株式会社あ×4(アーバイフォー)。同社は2012年から小学生向けにプログラミングのワークショップを開催しており、この6年間で約1500人ほどの小学生を一緒にプログラミング学習を行ってきました。その中で、どのコンテンツも一人で作るものが多く、みんなで”ワイガヤ”しながら作れるものがないことや、ツールも動きが単純で安いか、いろいろできるけれど高いかのどちらかしかないこと、拡張するとき都度パーツ購入が必要で時間もお金もかかること等の課題が見えてきたそうです。それを解決するため、「母国語で動かせる」「自分で拡張できる」「考えを他者と共有できる」ことが特徴の「JoinToy」を開発したとのこと。

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「JoinToy」はダンボールとQRコードを組み合わせたツールで、それらを並べる直感的な動作でブロック式プログラミングを体験できます。使い方は、QRコードと日本語のコマンドが描かれているダンボールのカードを並べて、そのQRコードを順番にスマホのカメラで読み込むだけ。すると対応するロボットが動き出し、実際に自分のプログラミングにより物が動く様子を体験できます。基本的にカードや積み木で遊ぶのと同様なので、友達と話し合いながらカードの組み合わせを考えることもできるし、また「カード」という実物を伴ったツールのため、目の見えない人が手触りを頼りにプログラミングできるという独自性もあります。
ビジネスモデルは拡張パーツと教育カリキュラムの販売ですが、拡張パーツについては、子供がお小遣いで買える範囲ということで500円程度を想定しているとか。
こちらもプロダクトやビジネスモデル、ターゲット層が具体的であること、子供向けプログラミング学習市場が今後も拡大傾向にあることからメンター陣に好評で、主に販路や連携ガジェット/ロボットの拡大についてのアドバイスが出ました。

この「仙台アライアンスピッチイベント」はコンテストではなく、プレゼン終了後にそれぞれの優劣がつけられたり賞金や出ることはありませんでしたが、それでも普段なかなか聞くことのできない投資家やメンターの率直な意見に触れられたのは貴重な機会だったでしょう。地方は人口が少ないため、新たな人との出会いが少ないという問題もありますからね。
なお、このイベントは今回開催しただけで終わりというわけではなく、できればこれからも3~4ヵ月に1回のペースで継続開催し、東北を拠点とする起業家に「ピッチ」を体験する機会を提供していく予定だそうです。

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