イベントレポート レポート

【レポート】GLSセミナー2018「バーチャルリアリティ(VR)最前線」レポート~その1~

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1月27日(土)、グローバルラボ仙台TSUKUMOの共催により宮城県仙台市のNTT DoCoMo東北支社にてセミナーイベント「バーチャルリアリティ(VR)最前線」が開催されました。

【レポート】GLSセミナー2018「バーチャルリアリティ(VR)最前線」レポート~その1~

このイベントは株式会社アルファコード代表取締役社長の水野拓宏さんと株式会社エクシヴィ代表取締役社長の”GOROman”さんこと近藤義仁さんをゲストに迎えたセミナー講演会。グローバルラボ仙台は、仙台市とフィンランド・オウル市との産業振興協定を生かし海外連携を促進するため2013年12月に設立された団体で、仙台地域における人材育成支援や企業の海外展開支援などを行っています。これまで同団体は主にゲームエンターテイメント領域に於いて活動を行ってきましたが、今年からはゲームだけでなくIT分野にもフィールドに広げます。今回のイベントはその第一弾として開催されました。

【レポート】GLSセミナー2018「バーチャルリアリティ(VR)最前線」レポート~その1~
最初のセッションはアルファコード代表の水野さん。水野さんは「VRの変遷とトレンド」と題し、これまでのVR研究の歩みを振り返りつつ、これまで同社が手がけたコンテンツを例に現在のVRの状況について解説されました。

■「VR」の歩みと真の意味
【レポート】GLSセミナー2018「バーチャルリアリティ(VR)最前線」レポート~その1~
まず水野さんは1960年代のVR研究事例を紹介。この「The Sensorama(センソラマ)」は1964年に映写技師で映像作家のMorton Heiligによって発表されたアーケード筐体型の五感シミュレーターで、感覚を意味する”Sence"とジオラマ(giorama)の2つの単語を組み合わせて名付けらています。これは座席に取り付けられたフードの中に頭を突っ込みハンドルを握ってコインを入れると、スピーカーからエンジン音が聞こえ、ハンドルが振動し、目の前を街の風景が流れ、それに合わせて前方から風が吹きつけ、ピザ屋の前を通ると美味しそうな香りまで漂ってくるという仮想現実システムで、3D映像からステレオ音響、振動、風、香りと人間の感覚を呼び覚ますあらゆるシステムが備わっていました。現在で例えるとコーエーテクモウェーブのVR筐体「VR センス」や臭覚VRデバイス「VAQSO」みたいことが既に64年当時に研究されていたんですね。この研究により、Morton Heiligは”VRの父”の一人とされています。

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この「The Sword of Damocles(ダモクレスの剣)」は1968年に計算機科学者のIvan Sutherlandによって開発された世界初のVRヘッドマウントディスプレイ(HMD)ですが、当時はまだVRという言葉が無かったので「Ultimate Display(究極のディスプレイ)」というキャッチフレーズが使われていました。これの凄いところは、68年当時に頭の動きに合わせて目の前の映像も動く「ヘッドトラッキング」を実現していた点。またHMDのレンズ部分に透明なパーツが使われていたため、視界に映る現実の風景の上にワイヤーフレームの3DCGが表示されていました。これはまさに現在のARの元祖と言えます。

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こうした研究を経て、1980年代に遂に「Virtual Reality」の名称が使われ始め、現在のVR HMDおよびVRデバイスの元となるガジェットが開発されるようになりました。現在は失敗ガジェットとされているVPL Researchのグローブ型コントローラー「Data Glove」も、もともとはNASAのエイムズ研究センターとの共同プロジェクトによって開発されたセンサー内蔵グローブで、装着した人の動きをトラッキングして接続したコンピューター内にその情報を反映させるという、現在のハプティクス(触覚)技術の土台とも言うべき革新的な試みが行われていました。

【レポート】GLSセミナー2018「バーチャルリアリティ(VR)最前線」レポート~その1~
ここで水野さんは改めて「Virtual Reality」という言葉の意味について言及。この言葉が日本語に翻訳される際にVirtualに”仮想”という言葉が当てられてしまったため、日本ではVRを「CGで作られた”虚構”を見せる技術」であると誤解されています。ところが英語の辞書でVirtualを引くと「(表面上または名目上はそうでないが)事実上そうである」と書かれており、決して”虚構”という意味ではありません。実際、通路を用いた脱出実験に於いて、事前にVRで脱出経路を3回疑似体験したグループが、事前に実物の通路で脱出経路を1回体験したグループとさほど変わらない時間で脱出に成功し、事前に平面図や映像を見ていたグループよりも良い成績だったという結果もあるとのこと。これを踏まえて水野さんは「あらかじめVRで訓練しておくと現実でそうなった時も適切に判断できる。つまりVRは人間の頭の中では”現実”として判断されており、VRには企画や技術を駆使して現実同然の「体験」を配信できる強みがある」と持論を語りました。

■これから来るVR HMDは?
次に水野さんは現在普及しているVR HMDとその種類の違いを示し、今後”来る”であろうVR HMDのトレンドを示しました。

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ハコスコやGoogle Cardboardなどの「スマートフォン利用簡易型」は、既存のスマートフォンに内蔵されているディスプレイやセンサー、タッチパネル等を利用した簡易的なHMDで、手持ちのスマートフォンをそのまま使えるのでとにかく手軽なのが特長。加えて安価で軽量で初心者でも取っつきやすく、低コストで量産できるためノベルティグッズとしても活用されています。一方、ユーザーのスマートフォンに依存しているので機種によってVR体験の品質に差が出やすいのが難点。そのためコンテンツを開発する際は、どうしても下の性能の機種に合わせざるを得ないという制限があります。

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Gear VRやGoogle Daydreamなどの「スマートフォン利用型」HMDは、既存のスマートフォンを利用しながらもVR向けのセンサーやコントローラー等が付加されており、VRとして十分な体験を確保しつつも、価格は1蔓延前後と後述のハイスペックHMDよりは安価です。しかし対応スマートフォンはVR体験が可能なセンサーやディスプレイを備えている必要があり、現時点ではまだ対応異種が出揃っておらず、当然ユーザーも少ないのが現状です。

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これらとは別に、スマートフォンもPCも必要なく単体で利用できる「一体型」のHMDもあります。これは本体に専用ハードウェアと組み込みOS、バッテリーを備えており、どこでも単体で動作するのでセッティングが楽なうえに着脱も簡単に行え、一定のスペックを維持できるので安定したVR体験を提供できるメリットがあります。ただしコンテンツを専用SDKで開発する必要があるためディベロッパー同士でノウハウを共有することが難しく、使用シーンも単発のイベントやテーマパークのため継続使用するユーザーもほぼいない状態です。

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現時点で開発者もユーザーも多いのがOculus RiftやHTCVive、PlayStation VRなどの高機能CPU/GPUを備えた「外部ディスプレイ型」のHMD。コントローラーも使用した多彩なハイエンドVRコンテンツを提供でき、開発者も世界中にいるためノウハウ共有も盛んです。その一方、あくまでもPCやゲーム機などコンソール機器の外部ディスプレイとして動作するためケーブル接続の必要があり、ケーブルのせいでユーザーの動きが制限されてしまうデメリットがあります。とはいえVR専用の背負うタイプのPCや無線化ツールもリリースされているので、「コードが邪魔」は今後改善される可能性があります。

このように一口にVR HMDと言っても様々なタイプが存在するので、VRコンテンツを開発するには最初にどれを対象にするかを決め、それぞれのスペックや対象ユーザーに合ったプランを考える必要があります。

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なお、水野さんは米ラスベガスにて開催された世界最大級の国際家電見本市「CES 2018」に行き、そこで「無線化」と「6DoF一体型」が今後のVR機器のトレンドだと感じたそうです。「6DoF」とは“Six degrees of freedom”の略で、前後・左右・上下への移動に加え、それぞれの軸を中心とした”回転”の移動もサポートしていることを意味します。水野さんは「去年までは3DoF(三軸)のみだったが、それが6DoFになればさらに自由な動きがサポートでき、HMDを無線化できれば複数人での使用が楽になるため同時に複数人がプレイできるVRコンテンツが普及するだろう」とこれからのVRコンテンツの傾向を予想しました。

■ただ綺麗な景色を”見せる”のではなく”体験”を重視する
最後にこれまでアルファコードが手がけたVRコンテンツが事例として示されました。同社は3DCGのコンテンツだけでなく360度カメラを使用し8Kの実写VRコンテンツも開発しています。

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【レポート】GLSセミナー2018「バーチャルリアリティ(VR)最前線」レポート~その1~
この「ぐるっと高知家バーチャルツアー」は、高知県の名所やお祭り、地元の宴会をストーリー仕立てて表現した観光誘引VRコンテンツで、高知県のアンテナショップ「まるごと高知」や地産フェア、移住フェアなどで活用されています。

このコンテンツの特徴は、アンテナショップから高知県へ移動し、海や川、山、街といった名所を巡り、グルメやお祭り(よさこい)、宴会といったアクティビティを”体験”できるストーリー仕立てになっていること。ついて水野さんは「実写VRを作る際は綺麗な景色を表現したがるが、綺麗な景色は世界じゅうどこにでもあるので、そればかりを収録しても面白くない。そこで実写VRは”体験”を重視し、体験をどう共有するかを企画書の段階で盛り込むことが重要」とノウハウを披露しました。

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こうした体験を重視した実写VRの撮影には、通常の撮影にはないVRならではの苦労もあったそうで、特にユーザーの視線を誘導することが難しかったそうです。360度見渡せるのがVRコンテンツの醍醐味ですが、その分ユーザーが好きなところを見るため、提供側が本当に見せたいものに視線を向けてくれないという問題があります。そこで同社では、観光バスガイドのように「こちらをご覧下さい」とガイド音声を入れたり、出演者が呼びかけたり、手を引いたりと自然にユーザーの視線を誘導する演出を行いました。撮影手法も、ユーザーが実際にそこにいて地元民に混ざっている雰囲気を出すため、撮影者の”頭”に360度カメラを付けて中腰の姿勢で撮影し、撮影中も出演者がカメラマンの目ではなく360度カメラに視線を合わせられるようカメラマンの目を隠すといった様々な工夫を駆使。このおかげで「カメラマンは頭を一切動かさずに手足だけ動かす”VR踊り”と”VR歩き”をマスターした」とか。

【レポート】GLSセミナー2018「バーチャルリアリティ(VR)最前線」レポート~その1~
あと同社の代表的な開発タイトルといえば「暗殺教室VR」があります。これは人気コミック/アニメ「暗殺教室」の教室の席に座り殺せんせーを狙って撃つシューティングゲームで、ジャンプフェスタや東京ゲームショウ2017のHTCブースに出展され大きな話題となりました。実は本作は当初、殺せんせーが次々と飛ばす風船を撃ちまくるという、「周りを見渡して体をグリグリ動かせる楽しさ」を味わえる立ってプレイするシューティングゲームとして企画されていましたが、後日クライアントから「最低でも1日500人は体験させたい」「来場者の事故を防がなければならない」「開発期間は実質2ヶ月」といった制約条件が提示され…

【レポート】GLSセミナー2018「バーチャルリアリティ(VR)最前線」レポート~その1~
一度にたくさんの来場者に体験させ、かつ事故防止のために教室の「席」に座ってプレイする形式に変更し、シューティングゲームとしてのアクション性を際立たせるのではなく「3年E組の生徒になった」という体験をしてもらう「体験コンテンツ」に方向転換しました。その結果、1日600人以上の体験者を無事確保し、Twitter上にも多数の反響ツイートが投稿されるなど大成功を収めました。ちなみに、当初の「周りを見渡して体をグリグリ動かせる楽しさ」を味わえるバージョンはシングルプレイのVRシューティングゲームとして復活し、2017年6月よりSteamにて配信されています(配信ページはこちら)。

■ウケるVRコンテンツとは?
最後に水野さんは「ウケるVRコンテンツ」とは「既に無くなってしまった場所に行けたり、通常行けない場所に行けたり、他人の視点で体験できたり、通常は一度しか体験できないことを繰り返し体験できたり、まだ現実になっていないものを体験できたりする”貴重な体験”」であると分析。むしろVRでよく見る「綺麗な景色」はいざ提供すると逆に不評で、同社では綺麗な景色をVRで見せたがるクライアントには、目線も合わずコンテンツとしても面白くない「最悪の動画」を見せて納得してもらっているとのこと。

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そして最後に「よく”〇〇の魔術師”という言葉が使われるが現在ではそれははもう古い。VRでは既に存在する場所やコンテンツを活用して価値を高める「現代の錬金術師」になれる。皆でいろいろなものを錬成しましょう」と呼びかけ講演を締めくくりました。

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会場には両方のバージョンの「暗殺教室VR」をプレイできるデモコーナーも用意されました。東北で「暗殺教室VR」が出展されたのは勿論今回が初めてでした。

レポート~その2~に続く

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