「博士と万有引力のりんご」は、ニュートンの万有引力の法則発見のエピソードをモチーフにしたファンタジーVRショートアニメ作品です。アニメをVRで見るってかなり新しい体験ですが、既に2014年にはVRアニメを制作するスタジオが出始め、残念ながら今年解散してしまいましたが、Oculus VRも同社独自のVR映像制作スタジオ「Oculus Story Studio」を2015年1月に設立し3本のVRショートアニメを制作しました（過去記事はこちら）。
この「博士と万有引力のりんご」は今年1月にリリースされて以降、海外メディアに取り上げられたり、ドイツ・イエナにて開催された「11th Fulldome Festival」や徳島市にて開催された「徳島VR映像祭」で上映されたりと国内外で話題となり、先日開催された「VRクリエイティブアワード2017」ではVR THEATER賞を受賞しました。
視聴形式は2種類あり、VRヘッドマウントディスプレイを使用する時は2画面式の「VRモード」を選択し、スマホやタブレットでそのまま見る場合は単眼の「ジャイロモード」を選択します。
ここではスクリーンショットの見やすさからジャイロモードを選択しています。ストーリーは自動的に展開するので、どこに視線を合わせるとか何をするとかはありません。ただ眼前に広がる世界を見渡すだけです。
画面右にいるのが本作の主人公の「博士」。博士は何気なく庭のりんごの木を眺めていた時、ふと一つの美しいりんごが実っているのに気付きます。
博士はこのりんごを心底欲しいと思い、木からもぎ取ろうとしましたが冷たく拒絶されてしまいます。
どうすればりんごを手に入れられるのか？博士は家に帰って考えることにしました。
世界観や作風はまるで絵本のようですが、そこはVRコンテンツ、ストーリーが展開しているシーン以外もぐるりと360°見渡して観察することができます。テキストまで3Dオブジェクトになっているのが凄い！
ストーリーとは直接関係のないところもしっかりと作り込まれているこだわり具合で、中にはモーション付きのオブジェクトもあり。是非あらゆるところを見回して世界観にどっぷり浸って下さい。
博士は家で本を読み漁り、りんごを手に入れるための理論を学びます。でもいくら学んでも分からない…
そこで博士はりんごにとっての利益と、りんごを説得するための理論を構築しました。
しかしそれをりんごに話しても完全無視。そのうえ居眠りされる始末。
どうすればいいんだ！と打つ手なしになった博士はパニックになります。
混乱した博士の頭の中を具現化するかのようにめちゃくちゃになる家の中。
このシーンは、無重力状態になった博士の家に吸い込まれるかのような、または落ちていくかのような不思議な浮遊感が味わえ、まさにVRならではの感覚が楽しめます。
どうしたらいいのか分からなくなった博士は、「愛の物語」を見てりんごに愛を語ることを思い付きます。
このサーカスのような博士の心理描写がまた見事！奈落の底へ落ちていくシーンから一転シュールで楽し気な世界へと転換します。
自信満々でりんごに愛の言葉を投げかける博士でしたが…
りんごはつれない反応…。
全てりんごに拒絶され、行き詰ってしまった博士の心は遂に「無」になります。
そこで最後の最後に博士がたどり着いた答えとは？！
ラストは是非実際に見て確かめてみて下さい。
VRで鑑賞すると、「ドラえもんのひみつ道具『絵本入り込み靴』が実際にあったらこんな感じだろうな」と心底思います。きっと藤子・F・不二雄先生はこんな体験を数十年前に既に想像できていたのではないでしょうか？これまでの2D/3DのアニメとVRアニメの違いは一言で言うと「没入感」です。2D/3Dのアニメは第三者の目線からストーリーを「傍観」する立ち位置ですが、VRアニメは本当にストーリーが展開している空間に「入り込める」んですよね。本作は日本に於けるVRアニメの初期段階ですが、そのクオリティは高く「VRアニメってこんなコンテンツなんだな」と実感するには十分過ぎる作品です。
なお、配信形式は様々で、YouTube版（360°動画として公開）、Littlstar版（PlayStation VR、Gear VR、HTC Vive、Andoid、iOSに対応）、Google Play版（Androidアプリ）が無料配信されており、また公式サイト内では高画質版も配布されているほか、VR空間のキャプチャ素材を利用したコミックやオリジナルノート、Google Cardboardの装飾用デザインデータも販売されています。この作風が気に入った方は是非チェックしてみて下さい。
Youtube版はこちら↓
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