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【レポート】メタラーとギーク必見! フィンランド・ヘルシンキのTech&音楽専門市立図書館「Kirjasto 10」に行ったらいろいろ凄かった

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フィンランドはOECD(経済協力開発機構)の学習到達度調査(PISA)ランキングで毎年上位にランクインしており、とにかく「頭の良い国」として知られています。その礎となっているのか国民の公共図書館の利用率も非常に高く、世界の図書館利用率ランキングでもフィンランドはナンバーワンを記録しているとのこと。今回ヘルシンキに滞在した折、ギーク的に非常に興味深い図書館を訪れる機会があったのでここでご紹介します。それがヘルシンキ市立図書館の一つ「Kirjasto 10(Library 10)」です。

【レポート】メタラーとギーク必見! フィンランド・ヘルシンキのTech&音楽専門市立図書館「Kirjasto 10」に行ったらいろいろ凄かった
ここはヘルシンキ中央駅のすぐ側にある郵便局&スーパーマーケットの2階にある小規模な図書館”分館”です。というのもここ、様々なジャンルの本を揃えているのではなく「Tech」と「音楽」にのみ特化した施設だから。分館を作るにしてもなぜこのチョイスで?と不思議に思ってしまいますが、考えてみればこの2ジャンルは現在のフィンランドのイチオシ産業なんですよね。それらに特化した図書館を便利な駅近、しかも郵便局とスーパーマーケットという誰もが利用する施設の上に作るあたりにヘルシンキの市としての戦略が伺えます。

■ここが凄いよKirjasto 10
1.メタルバンドのライブ告知ポスターを掲示
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入って真っ先に目に飛び込んできたのは、ヘルシンキ市内のイベント情報をお知らせする掲示板に貼られていたスウェーデンのメロディックデスメタルバンド「アモン・アマース (Amon Amarth)」のライブ告知ポスター。いや、確かに音楽関連のイベントではあるんですが市の公共施設にAmon Amarthですよ。さすがヘヴィメタル大国!12月13日にヘルシンキでライブか…あと5日滞在日数があったら行けてたのに…。

2.ゲームソフトも貸し出す
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日本の感覚だと、図書館といったらやはり本がメインで、あくまでも”おまけ”的にDVDやCDがちょっとある…という風景を思い浮かべてしまいがちですが、ここは本以外のメディアも充実しています。なんとゲームソフト専用棚がありXbox OneやPS4など各種ハード向けのソフトが本と同様に貸し出されているほど。ラインナップは市内のゲームショップとほぼ同じで定番タイトルや人気作も用意されていますが、やはり発売されたばかりの新作は多くの市民の間で取り合いとなり順番待ちになるようです。なぜ図書館にゲームが?と思いますが、ここはTech&音楽専門図書館。つまり「ゲーム」もテクノロジーのうちだからです。

3.CD&DVDのラインナップが異常に豊富
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専門を謳っているだけあって音楽CDも本と同等、むしろそれ以上の量が用意されていますが、その分類が妙に細かく司書のこだわりを感じます。普通、こういう公共施設のジャンル分けなんて「クラシック」「ポップス」「ロック」などザックリしているものですが、ここは「クラシックロック」「プログレッシブロック」「グラムロック」「パンク」「ハードロック」「ヘビーメタル」「インダストリアル」などいちいち細かく、さらにABC順に並んでいるのでお目当てのCDを探すのがとても楽。その一方、人を殺したり教会に放火したりなどの武勇伝を持つブラックメタルバンドのCDもしれっと混ざっていたりと、どういう基準で選んでいるのか全く意図不明の豊富な品ぞろえで、それらをただ見ているだけでも楽しめます。そして発見したのが…

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LOUDNESS!!
まあラウドネスはフィンランドでも人気だし、もう日本のバンド云々を越えて世界のメタルシーンでも知ってて当たり前な存在なので別にあっても不思議ではありませんが、それでもこうして異国の図書館で不意に見つけると嬉しくなってしまいます。


CDほどではありませんでしたがDVD/Blu-rayも用意されており、内容は映画とアーティストのライブ映像が半々といったところ。映画はフィンランド映画よりも海外映画の方が多く、日本映画ではジブリ作品と黒澤作品がありました。

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なお、DVDのラインナップも意図不明なものが結構あり、しょーもないB級低予算作品やらホラー映画やら絶対これ司書の趣味で買っただろ!というものがちらほらありました。素晴らしい!そこでまたまた発見したのが…

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BABYMETAL!!!
これ絶対に司書の趣味だろ!司書の中にメイト(BABYMETALのファンの呼称)いるだろ!自分たちのライブDVDがフィンランド・ヘルシンキの市の予算で購入され図書館で貸し出されているってBABYMETALのメンバーやスタッフは知っているんですかね?

4.楽譜も貸し出す
図書館の紹介記事だというのにここまで一切本が出てきていませんが、もちろん本も充実しています。PC/モバイル、各種Webサービス/アプリの使い方など初心者向けの本からプログラミングの入門書、技術関連本、アーティストの伝記、自伝本などのほか「楽譜」も貸し出されていたのが印象的でした。

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楽譜はクラシック系が豊富でしたがバンドスコアもあり。この棚のAC/DCの存在感といったら。

加えてこの図書館には無料で使用できるPCやグランドピアノ、完全防音のスタジオ、エレキギター、ベース、ドラム、マイク、アンプ、スピーカー、PA一式が用意されており、ヘルシンキ市民であれば誰でも利用することができます。そのうえ録音機材も用意されているので、ただ演奏を練習するだけでなくレコーディングしてCDを焼くところまで完全無料で行えます。もちろん他の利用者がいるので利用時間は限られており、混んでいる時は自分の番が回ってくるまで待たなければならず時間の融通がきかないというデメリットがありますが、それでも無料なのだから実にお得なサービスです。

5.なぜかマンガのラインナップも超豊富
この図書館で1点謎だったのが、マンガの蔵書までやたらと充実していたことです。確かここはTech&音楽専門図書館のはずでは…
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KISSのコミックをオススメコーナーのど真ん中に置くあたりにお国柄を感じますけどね。

マンガの蔵書はフィンランド国内の漫画家の作品よりもはるかにアメコミや日本のマンガの方が多かったです。フィンランドなんだからムーミンやAngry Birdsの単行本がたくさんあってもおかしくないだろうに、言語の割合はフィンランド語と英語が半々。フィンランド人は最終学歴が高卒でも英語がペラペラなくらい語学が堪能な人達ですが、「英語で書かれた本が身近にある」こともその理由の一つかもしれません。「英語が読めないと面白そうなマンガが読めない!」となったら子供達は何が何でも覚えようとするでしょうし。

【レポート】メタラーとギーク必見! フィンランド・ヘルシンキのTech&音楽専門市立図書館「Kirjasto 10」に行ったらいろいろ凄かった
衝撃的だったのは「日本のマンガ専用のコーナーが設けられていた」ことです。この回転式の本棚が丸ごと全部「日本のマンガ」専用になっています。北米やイギリスで販売されている英語版とフィンランド語版の単行本が一緒に並んでいましたが、ここで”フィンランド語に翻訳されボロボロになっている”作品を探すと、フィンランドで人気の日本のマンガがなんとなく分かってきます。ざっと見たところ、髙橋よしひろ先生の「銀牙 -流れ星 銀-」シリーズなどの犬マンガ全般は鉄板中の鉄板で、あとはあずまきよひこ先生の「よつばと!」も人気のようでした。

【レポート】メタラーとギーク必見! フィンランド・ヘルシンキのTech&音楽専門市立図書館「Kirjasto 10」に行ったらいろいろ凄かった
日本のアニメ情報をフィンランド語で発信するアニメ雑誌もありました。毎号買っているらしくバックナンバーも完備。これが市の予算で購入されているなんて素晴らし過ぎる!

6.DIY工房の機能もあり
こうして図書館を隅々まで見ているうち、このような一角があるのに気付きました。
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「図書館のオリジナルグッズを販売して財源確保してるのかな?」なんて一瞬想像しましたが、よ〜く見ると「MADE HERE」の文字が…

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これは3Dプリンタで出力した造型物では…

【レポート】メタラーとギーク必見! フィンランド・ヘルシンキのTech&音楽専門市立図書館「Kirjasto 10」に行ったらいろいろ凄かった
実はこの図書館、3Dプリンタ、スキャナ、印刷機、ペンタブレット、ミシンなどといったモノづくりに必用なツールまで一通り揃えていました。当然これらも市民なら全て無料で利用できます。もう完全無料のDIY工房&コワーキングスペースみたいなもので、もはや図書館としての役目を超越しています!

おそらくここは、ただ本やメディアを貸し出すのではなく、市民の「何かやってみようかな?」という”第一歩”をサポートする役目を負っているのでしょう。例えば、「プログラミングを始めてみたいけれどどこから手を付けていいか分からない」なんて人も、とりあえずここに来れば関連書籍とPCがあるからすぐにその場で独学を始められます。「バンドをやりたいけど楽器を買う金もスタジオを借りる金もない!」という中学生だって、ここに来れば楽譜、楽器、スタジオ、機材全てをタダで使えます。つまりここは「アイデアだけはあるけどそれ以外何もない」という人達のスタート地点なのです。自治体のこうした手厚い施策も、市民の起業家精神を育むのに一役買っているのではないでしょうか?

【レポート】メタラーとギーク必見! フィンランド・ヘルシンキのTech&音楽専門市立図書館「Kirjasto 10」に行ったらいろいろ凄かった
ところで、こんなにいろいろあるなら司書の仕事はさぞ忙しいだろうとお思いかもしれませんが、これが意外にも忙しそうな雰囲気は全くありませんでした。なぜなら返却作業が全て機械化されているから。全てのフィンランドの図書館には自動貸出機と自動返却仕分機が複数設置されており、利用者自身がATMっぽい自動窓口で借りたものを返却することで仕分作業まである程度自動でできてしまうのです。カウンターでいちいち返却を受け付けないだけでもかなり仕事量は減るでしょうね。

図書館自体は海外旅行者でも自由に入って中を見ることができます。メタラーやギークの方なら、たとえ言葉が分からなくても余裕で半日過ごせるくらい楽しいところです。たぶん言葉が分かったら丸一日居座っても飽きないんじゃないかと思います。


建物の外観からはちょっと図書館だと分かりづらいので(1階は郵便局とスーパーマーケットだし)、行く際はヘルシンキ中央駅の近くにある「K SUPERMARKET」と並んだ「Kirjasto」の青い看板を探してみて下さい。建物の中に入ってエスカレーターを昇ると図書館があります。

学力世界一を支えるフィンランドの図書館
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