先日、子供向け仮想空間「Moshi Monsters」を運営するイギリスのMind Candy Ltdとグリー株式会社が業務提携を発表しました。この提携により、両社は今秋頃にGREEにてMoshi Monstersのモバイルゲームを提供するとのこと。
Moshi Monstersは、4ヶ月のクローズドβテスト期間を経て2008年4月よりサービスを開始した子供向けの2D仮想空間です。現在150ヶ国以上から6000万人以上ものユーザーを集めています。ちなみにイギリスの人口は約6150万人なので、一つのベンチャー企業が国家とほぼ同規模の経済圏を持っているということになります。さらに現在は仮想空間だけに留まらず、ぬいぐるみや文房具、玩具などのグッズ展開やNintendo DSソフトへの移植、お菓子の販売、スマートフォン向けアプリのリリース、イギリス全土を巡回するイベントの実施、音楽CDのリリースとありとあらゆるクロスメディア展開をしています。
Moshi Monstersはサービス当初は完全無料サービスでしたが、2009年2月より月~年会費制の有料アカウント「Moshi Member」を導入しました。金額は1ヶ月ごとが5.95ドル(約473円)、半年ごとが39.95ドル(約3181円)、1年ごとが49.95ドル(約3978円)です。Moshi Memberになると、キャラクターと一緒に連れて歩けるペットが飼えたり、ワールド内で無料アカウントユーザーが入れない場所へ入れたり、無制限で他のユーザーとフレンド登録ができたり(通常は500人までの制限あり)と様々な特典を受けることができます。
ということで、とりあえず無料アカウントの方だけやってみました!
面白いのは、アカウント登録をする前にまず先にキャラクターを作るということ。確かにキャラクター設定を先にやればそれだけ愛着も湧き、途中で離脱する人も少なくなりそうです。
うさぎっぽいやつ、悪魔、雪男、ゾンビ、謎の生き物、りんごっぽいやつの中から好きなものを選び、さらに色の組み合わせを選びます。
しかし改めて見ると、かわいくデフォルメされているとは言えよくこのコンセプトで「子供向けサービス」として通ったものです。
こうして自分のキャラクターを作った後に名前やパスワード、メアドを入力してアカウント登録します。
メアド認証してログインした後、さらに性別、誕生日、国籍、自分のキャラクターの名前を設定します。
そして遂にモンスター生活スタート!スタート時のお部屋はこんな感じです。部屋は横長の構造で、向かって左側にいろいろな機能がまとめられており右方向へスクロール移動できます。ここから壁紙や床、窓、ドアを変えたりいろいろな家具アイテムを置いたりして自分好みにカスタマイズしていきます。
キャラクターをクリックするとプロフィールが表示されます。その日の気分や好きな色、好きなMoshi Monstersのペット(Moshling)、好きな音楽、好きな食べ物など細かく入力可能。またプレイしていくごとにキャラクターのレベルも上がっていきます。
お部屋はユーザー同士で5つ星評価を加えることができます。素敵なお部屋を作れば作るほど訪問者数と星が増えるのでお部屋作りのモチベーションが上がりますね。
これは友達が増えれば増えるほど育つ木。クリックすると…
友達リストが表示されます。まだ一人もいませんが…。ただ数字で表されるよりも「木が育つ」というビジュアルで表されるのが面白いですね。
この「GARDEN」をクリックすると…
ガーデニングゲームがプレイできます。お部屋の外にある畑に様々な植物の種を植えて育て、収穫するというもの。
これは運営スタッフや友達から貰ったプレゼントを保管しておくスペースです。クリックすると…
このような棚が出現して、これまでもらったプレゼントを一覧できます。さらにこのプレゼント、ただの仮想ギフトではなく…
それぞれにアニメーションが再生される機能が付いています。こんなプレゼントをもらえたら嬉しいかも!
この「PUZZLES」というボタンをクリックすると…
クイズやパズルのゲームがプレイできます。ゲームはその日ごとにプレイできるデイリーチャレンジ、通常モード、他のユーザーと対戦できるマルチプレイヤーモードがあります。
…で、このゲームというのが簡単な算数の問題や色や図形をテーマにしたパズルなど所謂「知育」ゲームばかり。タイムアタック制になっており、短時間にたくさんの問題を解けば解くほどご褒美として仮想通貨が貰えるシステムになっています。これは子供なら喜んでやるでしょう。実はこの「知育」というテーマこそがMoshi Monstersの強みだったりします。教育に役立つサービスとして保護者が選ぶ優れたWebサービスのアワードで何度も受賞歴があるほか、新聞のガーディアン紙が選出する「イギリスで重要なサービス100選」といったリストにも選出歴があり、とにかく子供の保護者から評価されています。
これがMoshi Monsters全体のマップです。それぞれのエリアでまた違ったミニゲームがプレイできたり仮想アイテムショッピングができます。
商店街に行くと他のユーザーもたくさん歩いていました。ただし彼らとリアルタイムチャットをする機能はありません。あらかじめ設定したコメントを時々吹き出しで表示したり、キャラクターをクリックしてプロフィールを見て、そこからお部屋に遊びに行ってコメントをメッセージボードに残したりするくらいです。やはり子供を対象としたサービスなので敢えてリアルタイムチャット機能を切り、”ネットいじめ”が起きないよう対策を講じているのでしょう。
商店街ではお部屋アイテムや服飾アイテムをいろいろ買えますが、キャラクターのレベルによって買えたり買えなかったりするものが結構あるので、正直に言うと最初のうちはあまり自由度がありません。一応モンスターがモチーフになったホラーテイストのサービスではありますが、アイテム自体はカワイイ系、ナチュラル系、ROCK系、アジアン系といろいろあり。こうしたアイテムの組み合わせがしたくて子供は一生懸命知育ゲームをプレイするというわけですね。
また仮想アイテムの販売以外にも様々なショップがあります。ここは自分のキャラクターを使ったトレーディングカードやポスター、マスク、塗り絵などの”紙モノ”アイテムがプリントできるショップ。仮想空間内だけでなく現実でも遊べるグッズを提供しています。
ここはユーザーから送られたMoshi Monstersのイラストを展示しているギャラリー。ユーザーの二次創作作品をサービスの公式ブログで公開する例は既にいくつかありますが、仮想空間内にギャラリーを作ってそこに”展示”するというのは面白い試みですね。また本当に絵画鑑賞しているような気分になれる画面のデザインも粋です。ここに自分の描いた作品が展示されたら子供は嬉しくてたまらないでしょう。
さらに海エリアに行くと、砂をバケツに盛って砂のオブジェが作れるシミュレーションゲームができます。砂の入ったバケツをひっくり返すと砂山ができて、それとデコレーションパーツを組み合わせて自由に砂のオブジェが作れるというもの。出来上がったあとはそれをプリントアウトすることもできます。
お菓子モチーフのエリアに行くとお菓子作りが体験できるシミュレーションゲームができます。お菓子作りの過程で必要な材料の名前や作り方の手順が覚えられるというもの。これはカップケーキを作っている途中です。
そして最後に生クリームやトッピングを乗せてデコレーション。これも上記の砂のオブジェが作れるシミュレーションゲームと同様にプリントアウトすることができます。
こうして一通り見てみると、このMoshi Monstersで提供されているコンテンツは徹底して
・自分で問題を解く
・様々なものを組み合わせて自己表現する
・何かを作る
・他のユーザーと戦うのではなく評価する
をメインに据えています。特にゲームコンテンツは子供の創造性を喚起し育むようなものばかりです。
日本では未だに「子供のうちからデジタル漬けになるなんて!」「子供はPCなんか触ってないで外で遊んできなさい!」と言う大人がたくさんいます。しかし欧米の、特に都市部では子供を外で遊ばせたくてもできない事情があります。それは子供達だけで外で遊ばせたら人身売買組織に誘拐されるから。そんな目に遭うくらいなら家の中でPCで遊んでる方がずっとマシです。さらに現在の海外の学校は授業にもPCやタブレットを導入しているところが増えています。それなら一刻も早くPC操作を覚えさせた方が寧ろ子供のためになる。ある意味「子供は外で遊んでこい!」と言えるだけまだ日本は平和でのほほんとしているのでしょう。
GREEでリリースされるモバイル版Moshi Monstersがどのようなゲームになるかはまだ分かりません。しかしオリジナルにあるような「子供の創造性を育む」要素は無くなってほしくないな…と思います。
モシモンスターズ ぬいぐるみ Moshi Monsters Talking Poppet Plush (from UK)
モシモンスターズ Moshi Monsters Moshling Zoo (FROM UK)
Moshi Monsters: The Moshling Collector's Guide