OGC2011"会場A”のトップバッターは株式会社サイバーエージェントの技術部門執行役員でアメーバ事業本部ゼネラルマネージャーである長瀬慶重氏。長瀬氏は同社が提供しているブログを中心としたコミュニティサービス「Ameba」の今後のスマートフォン戦略について説明しました。
まず同氏は2006年10月~2010年12月までのAmeba全体のPV(ページビュー)の推移を提示。PC・携帯電話・スマートフォンと全てのデバイスでほぼ右肩上がりと言ってもよい成長を示しており、現在では月間223億PVを数えるほどになりました。
このうちスマートフォンからのアクセスPVは、2010年12月よりスピードアップし2011年4月に約10億PVを記録。5月は10万PVを超える見込みで、現在ではスマートフォンからのPVは毎月1億PVずつ増加しているとのこと。
このスマートフォンからのPV増加を後押ししているのがAmebaのスマートフォンアプリ。サイバーエージェントではiPhoneアプリとAndroidアプリの双方をリリースしていますがどちらも好調。iPhone版のダウンロード数は現在80万件で、Android版はまだリリースから半年ということもあり20万件ですが毎月のダウンロード数では双方とも同じくらいとのこと。
スマートフォンからAmebaにアクセスするユーザーの年齢分布は、PC、携帯電話、スマートフォンのどのデバイスでも20代が多く(PCのみ若干30代が上回る)、特にスマートフォンではほぼ半分の48%を占めています。逆に意外にもどのデバイスでも10代が少ない傾向にあります。
iPhoneとAndroidのプラットフォーム別のアクセス数では、2010年12月の時点ではiPhoneが80%超と圧倒的でしたがそれ以降徐々に比率が下がっていき、2011年4月には67%まで下落。それに反比例してAndroidの比率が上がっていき3月には37%まで上昇しました。これを受け長瀬氏は9月には双方の比率が50:50になるのではないかと予測しました。
長瀬氏によれば、スマートフォンユーザーは1つのサービスを絶えず使うのではなく様々なサービスやアプリを使う傾向にあるとのこと。加えて今後はスマートフォン自体もハイスペック化しモバイルブロードバンド化も進めば、より”アプリが主役”という「クライアント回帰」になるであろう点を指摘。それらを踏まえ、Amebaでは
・国内No.1スマートフォンメディア
・国内No.1アドネットワーク
・2011年、ヒットアプリ100本リリース
・Android向けアプリマーケット Ameba App Market
・スマートフォン向けコミュニティプラットフォーム AmebaSP オープン化
といった目標を掲げ様々な事業に挑戦していくそうです。
現在Amebaユーザーの50%以上が携帯電話、もしくはスマートフォンとPC向けのAmebaサービスを併用しているとのこと。特にアメーバブログは毎月有名人を含む約3000万人が利用しておりサービスの主力となっています。これを踏まえ、今後はAmebaのPCサービスの強みを生かすためスマートフォン向けのWebサイトを強化、6月には主要なサービスのスマートフォン対応を完了するそうです。
また近年のAmebaの成長を牽引する主力サービスに2D仮想空間のアメーバピグがあります。こちらもアメーバブログほどではないにせよユーザー数は700万人を突破し、毎月の仮想通貨・アイテム販売額が約7億円(!)と絶好調。また既にAndroidアプリ版もリリースしています。但しアメーバピグはFlashベースで開発されているためFlash非対応のiOSアプリ化は苦戦しているとのこと。しかし長瀬氏曰く「9月頃にはiPhone向けに何かしらリリースしたい」とのことなので、iPhone&アメーバピグユーザーは楽しみに待ちましょう。
これらのスマートフォン対応を踏まえ、サイバーエージェントでは2013年末まで月間200億PVを達成することを目標に設定しているとのこと。
こうした既存のサービスのスマートフォン対応を進めていく一方で、さらに同社はAmebaブランドのスマートフォン向けネイティブアプリの開発にも着手。2011年内にヒットアプリを100本リリースすることを目標として掲げており、特に「ゲーム」「ソーシャル」「機能系」「教育」「エンタメ」の5つのジャンルに注力し続々と新たなアプリを開発しています。
近日リリース予定のタイトルとしては女性向けのペット育成ゲーム「なでなでフワムー」と男性向けのRPGアプリ「GYAOS~千年の塔~」が予定されており、また数日前にリリースされたゲームアプリ「COIN PLAZA」もアメーバピグのアバターと連動させるアップデートを実施するそうです。
なお、長瀬氏曰くAndroidには魅力的な女性向けアプリが少ないとのこと。そこで有名人をテーマにしたアプリや親しい友達にのみつぶやけるミニブログアプリ「tappie」、壁紙の中からタイムラインの背景画像を選択したり投稿する写真を加工することができる機能を備えた女性向けTwitterクライアント「Guppi」、アメーバブログのリーダーアプリ「Ameba Channel」など女性が楽しめるアプリをリリースしていくとのこと。
またアプリ開発と合わせて新規事業としてサイバーエージェント独自のAndroidアプリマーケット「Ameba App Market」もオープン。但しただアプリを販売するサイトをオープンするのではなく、Amebaの主力であるブログサービスやマイページを利用し、QRコードなどからシームレスにユーザーをマーケットに誘導する導線作りも行うそうです。
またアプリのダウンロード決済にはAmeba独自の仮想通貨「アメゴールド」を使用。アメゴールドはアメーバピグやAmebaモバイルでの仮想アイテム決済などで既に広く利用されており、仮想通貨に慣れているAmebaユーザーの課金への心理的障壁を下げてアプリ購入を促していくとのこと。課金モデルは売り切り型の「ダウンロード販売」、毎月定額の課金を行う「月額課金」、アプリ自体は無料でアプリ内の仮想アイテムなどに課金する「都度(アイテム)課金」の3種類に対応。また7月にKDDI auのキャリア決済も導入されることが決まっています。
この独自のアプリマーケットのオープンに合わせ、スマートフォン向けアプリのディベロッパー向けにAmebaとしては初となるプラットフォームのオープン化「Ameba SP(Ameba Smartphone Platform)」にも乗り出します。公開されるAPIは、ソーシャルゲームの開発で必要な共通機能を利用できる「ソーシャルゲーム開発API」、AmebaをはじめmixiやFacebook、Twitterといった外部のソーシャルメディアとの連携が簡単に利用できる「ソーシャルメディア連携API」、Amebaのプロフィールやブログ、なう、メッセージなどの各種サービスと連携できる「Ameba連携API(Ameba APIs)」の3種類。iOS向けSDKは6月に、Android向けSDKは8月に提供を予定しています。
これと合わせてディベロッパーに対しアプリのプロモーション支援も実施。月間8億PVあるAmebaのWeb画面やAmebaアプリ内にAmebaSPアプリを告知するスペースを設けるだけでなく、有名ブロガーや読者モデルを起用した販促イベントも開催するとのこと。
加えて、スマートフォン向けアドネットワークやアプリユーザーの広告に対する行動に仮想通貨やアイテムを付与する「リワード広告」も提供し、ディベロッパーにアプリの課金収益だけでなく広告収益も得られる機会を提供するそうです。
サイバーエージェントでは2011年を「スマートフォン元年」とし、Web、アプリ、プラットフォーム、広告とスマートフォン市場の全てのドメインに挑戦するとしています。