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【OGC2009レポート】Web2.0は奴隷のタダ働き(Crowdsorcing Slave Labor)か?

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一般ユーザーが自分で製作した動画を動画共有サイトにUPする、一般ゲーマーがオリジナルのゲームを製作して他のゲーマーと共有する、個人の開発者がiPhoneアプリを製作してAppStoreで公開する……。このように、以前では考えられないほど投稿型のWebサービスやオンラインゲームが増え、一般人の作品発表のハードルも低くなった。それ自体は非常に良いことだ。

しかしちょっと立ち止まって考えてみよう。こうした所謂「Web2.0サービス」で一番儲けているのは果たして誰か?それは作品を製作しているユーザーではなく、その「製作・発表の仕組み」を提供している企業だ。Youtubeは16億5000万ドルでGoogleに買収されたが、その後その1%でもユーザーに分配しただろうか?企業の「利益の元」を生み出しているのはユーザーなのに、実際のところは企業が一番儲かる仕組みになっている。もしかしたら「Web2.0」とは新たな「搾取の構造」なのかもしれない……
「OGC2009」でのゲームジャーナリストの新清士氏の講演「ブロードバンドと共に成長したオンラインゲームとその周辺コンテンツ。かつてから何が変わり何が変わらないか。」は、そんな”衝撃的な事実”を指摘するものだった。
【OGC2009レポート】Web2.0は奴隷のタダ働き(Crowdsorcing Slave Labor)か?
まず新氏は一般ユーザーの作品製作・公開が可能なゲームとして「うごくメモ帳」「FAR CRY2」「リトルビックプラネット」を例に挙げた。これらのゲームでは一般ユーザーが自分たちの作品を見せ合って評価をつけて遊んでおり、実際ハイクオリティな作品も多い。
Far Cry2 日本語マニュアル付英語版
Far Cry2 日本語マニュアル付英語版
リトルビッグプラネット
リトルビッグプラネット
しかし氏はこうしたサービスのビジネスモデルを「特定の人たちを富ませる構造」であると分析。コンテンツを作っているのはユーザーなのに儲けているのはプラットフォームを提供する企業で、むしろユーザーからはさらにお金を取っている。これについて氏は、池田清彦氏と養老孟司氏の著書「正義で地球は救えない」の内容も例に挙げ「『生産物』自体を所有するよりも、『システム』が利益を生む状況」であると説明した。
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正義で地球は救えない
正義で地球は救えない
それに加え、最近ではユーザー数や売上などの明確なデータを公表しない企業も増え、「市場の”見えない化”」が進み不信感も募るばかりだ。
また、Web2.0サービスは作品製作・公開のハードルが低いので、人気のサービスにはすぐに多くのユーザーが集まり、それに伴い作品数も増える。その結果、作品の供給過剰状態になってしまい、注目を集めるのは一部の人気作品だけ、それ以外の多くの作品が日の目を見ないまま埋もれてしまうといった状態になる。皮肉にも、企業とユーザーの間だけでなくコンテンツそのものにも二極分化が起こっているという。
こんな状況を生き残るには、果たして一体どのような戦略をとればよいだろうか?それについて氏は「イノベーションのチャンスを見て、プラットフォームホルダー側になるチャンスを探る」こと、そして既存のユーザーにコンテンツ作りに参加できる仕組み提供しつつ参加してくれたユーザーに対し収益を提供しながら利益を上げられるシステムを作ることを提案した。
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また氏はmixiや韓国最大規模のSNSであるCyworldを例に挙げ、自国内での伸びしろが少なくなったサービスは「世界全体に出ていくしかない」とも説明。「インターネットでは日本の”極東”や”島国”といった地理的なものが消え、海外の文明も簡単なローカライズだけでやってくる。今後インターネットのクラウド化がさらに進めば、人口の少ない日本はどんどんきつくなってくるだろう。」と語り、島国根性を捨て海外に進出する重要性を語り講演を締めくくった。
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