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【OGC2009レポート】新たなUGCコミュニティサービス フィギュアSNS「fg」

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自分が製作したフィギュアや模型、ドールの作品写真を投稿・公開するフィギュアSNS「fg」をご存知だろうか?ニコニコ動画や最近話題のイラストSNS「Pixiv」などのUGC(user-generated content:一般ユーザーが作るコンテンツの総称)を主軸にしたSNSの立体作品版だと思って頂ければ間違いはないだろう。

今回のOGCでは、このフィギュアSNS「fg」を運営する株式会社エンタースフィアの代表取締役社長 岡本基氏が登壇し、「オンラインゲーム、コミュニティの潮流を読む ゲームからオンラインコミュニティの展開にいたるまで」と題した講演を行なった。
立体作品と仮想世界と一体何の関係があるのか?と疑問に思う読者もいるかもしれない。しかし過去に3Dプリンタでアバター・データからリアルのフィギュアを製作する話題を取り上げたことがあるし(そしてフィギュアの祭典『ワンダーフェスティバル』のレポートも)、最近では逆にリアルのフィギュアを3Dスキャナでスキャンしてデータ化したり、オーギュメンテッド・リアリティ技術を利用した「電脳フィギュア ARis」が発売されたりと、「フィギュア」と「仮想」は意外と近い関係にあったりする。
電脳フィギュア ARis (アリス) GTE_AR_001
電脳フィギュア ARis (アリス) GTE_AR_001
今回は広く「UGC」コミュニティ及びソーシャルメディアに目を向ける意味も込めて同講演をレポートしてみたい。
【OGC2009レポート】新たなUGCコミュニティサービス フィギュアSNS「fg」
岡本氏はもともと任天堂で「はじめてのWii」や「Wii Fit」の開発に携わったゲーム畑の方で、2008年5月に独立し2008年11月4日より「fg」を開始したという。2009年2月5日現在でのユーザー数は約1万2,000ユーザーで、男女比率は男性が87%、女性が13%。年代別構成では20代が46%と一番多く、30代が35%で10代は非常に少ない状態にあるという。やはり「模型」というと動画やイラストよりも技術的にハードルが高く、一体作るのにも時間がかかり、またフィギュアや模型は金額的にも高額な商品であるため、ある程度技術の蓄積があり経済力もある”大人”がユーザー層の中心になっているようだ。
【OGC2009レポート】新たなUGCコミュニティサービス フィギュアSNS「fg」
「fg」のサイト構成はFlickrなどの写真・画像共有サービスのように”写真”がメインで、ユーザーは1回の投稿につき10枚まで写真をアップロードすることができる。しかし一口に「フィギュア」と言っても、実際に投稿されている写真は多種多様。岡本氏曰く、分かりやすくするために「フィギュア」という言葉を使用しているが、実際に掲載する写真はガンプラなどプラモデルや完成品のカスタム作品、ドール(とその服)、果ては雪像や仏像(お寺の許可があれば)など立体作品であれば何でもいいのだそうだ。
【OGC2009レポート】新たなUGCコミュニティサービス フィギュアSNS「fg」
「fg」の特徴的な機能の一つに、投稿した写真の一部分にメモを表示する「メモ機能」がある。フィギュアを製作する「モデラー」は顔の表情や細かい装飾など”細部”を作り込むので、その「こだわり」をメモにして添付し他ユーザーに見てもらえるようにする機能だ。これはAmazonのサイトからヒントを得て追加した機能とのことで、急遽サービス開始日直前の4日間で作成したのだという。
「fg」のアカウントは、フィギュアを作ったり改造したりする「モデラー」と、市販品を購入して写真を撮影したり他の人が作った作品を鑑賞する「一般」の2つに分かれている。作品を製作しない(製作できない)人でもフィギュアが好きであれば登録できるというのが嬉しいところ。
氏曰く、サービス当初はモデラーユーザーは少なく、一般ユーザーによる既製品の写真が大半だろうと予想していたそうだが、いざオープンしてみたら想像以上に作品を製作している人が多く、また既製のフィギュアに手を加えて作品を製作する、「モデラー」と「一般」の中間に位置する「改造クリエイター」が多く存在したという。そこでユーザーの要望を元にサービス開始6日目に早くも新たなカテゴリ「改造」を追加したとのこと。
【OGC2009レポート】新たなUGCコミュニティサービス フィギュアSNS「fg」
尚、現在ある特徴的なカテゴリに「制作中の作品」というものがある。これは、製作途中の状態の作品写真をUPしていくカテゴリで、これもユーザーからの意見で追加されたものとのこと。製作過程も他ユーザーに評価してもらうことがモデラーのモチベーション維持になるのだという。
これはニコニコ動画の「作ってみた」「やってみた」動画に相当するカテゴリと言えるのではないだろうか。
【OGC2009レポート】新たなUGCコミュニティサービス フィギュアSNS「fg」
続いて氏は、「他ユーザーからの評価(5つ星評価)」と「ラインキング機能」という、UGCをテーマにしたコミュニティサービスを運営する上で常々問題になりやすい要素について言及。
優れた作品が多くの人の目に触れるよう「評価」や「ランキング」を導入すると、これに対しサービス内で「新たな価値」が生まれてしまう。最初は「自分の作品を他の人に見てもらいたい」という純粋な気持ちから作品を投稿していたのに、評価やランキングに価値が生まれてしまうと「どうやったら上位になれるか」とユーザーが”攻略法”を探すようになってしまうというのだ。結果、評価やランキングを上げることが「ゲーム化」し、作品製作そのものより、本来なら何の価値もないはずの評価やランキングが目的になってしまう。
氏はこのようなコミュニティにおける評価やランキングを「ソーシャルスコア」と呼び、「例えるなら『脳年齢』やXbox LIVEの実績などの『1作品1,000点』という実績システムに似ている」と説明した。しかしゲームのスコアはただ機械的に与えられるものだが、コミュニティにおける評価はその裏に必ず生きた「人間」がいる。こうした「他者との関係」に人は価値を感じるのだという。
しかし、この「評価中毒」防止のために評価の「星」を制限し過ぎると、今度は埋もれてしまう作品が出てきてコミュニティ内に格差が発生してしまう。氏はこれらの問題を踏まえ「コミュニティの運営は、バランスをとりながらサイト内の仕組みを作ったり調整を行わなければならない」と語った。
尚、最後に氏は「fg」の今後について語った。やはり今後の課題は黒字化とのことだが、サイト構成が写真メインなのでデータ量も多くサーバー維持費も高くなるといったデメリットがあることから「ボロ儲けできるサービスではない」とのこと。しかし海外展開や携帯電話でも閲覧できるようにすることを検討しているという。
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また課金モデルでは、広告やサービスの月額課金といった安易な収益方法を採らず、先日オープンした3DCGの投稿コミュニティで「fg」の姉妹サイト「cg」を活用し、「cg」に投稿された3Dデータを元にリアルのフィギュアを製作したりといった「データ」と「リアル」を結びつけるビジネスにも注力していきたいとのこと。また、ユーザー間で作品取引ができるようなシステムを提供し、売買が成立した際に仲介手数料をもらう方法も視野に入れているという。
【OGC2009レポート】新たなUGCコミュニティサービス フィギュアSNS「fg」
やはり当サイトとしては「3Dデータをリアル化」するビジネスモデルに注目してしまう。岡本氏の講演では3Dデータをリアルフィギュアにするビジネスモデルが語られたが、逆にリアルのフィギュアをスキャンしてデータ化し、仮想世界でアバターやオブジェクトとして活用したり、iPhoneアプリやオーギュメンテッド・リアリティ技術などで「ヴァーチャルフィギュア」として提供するビジネスモデルも考えられるだろう。
因みに筆者は昨年12月より「fg」にモデラー登録しているのだが、「fg」と「cg」は共通IDとなっており、どちらか片方のIDがあれば新たにログインする必要なくもう片方のサイトも見られるようになっていた。これがなかなか便利で、立体作品とCGの種類の違う作品を一度に管理することができる。この共通IDはそれぞれのジャンルのクリエイター間にある「垣根」を低くする効果も期待できるだろう。
3Dモデリングをしている方、またはセカンドライフでオブジェクト製作をしている方は是非cgにも作品を投稿してみては如何だろうか。もしかしたら近い将来、そのデータがリアルの商品になる日が来るかもしれない。
フィギュアSNS「fg」
http://www.fg-site.net/
3DCG SNS「cg」
http://www.cg-site.net/
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