10月11日、秋葉原にて日本国内のコンテンツを総合的に取り扱う任意団体「コンテンツ学会」の設立総会とシンポジウムが開催された。今後、産業、政策、技術、表現の4分野を中核領域とし、産官学が連携したオープンな組織を目指し、学術的研究や人材育成などを行っていくという。
まず設立総会では、初代会長に一橋大学の堀部政男氏が、副会長にはデジタルハリウッド大学の杉山知之氏と東京大学の玉井克哉氏氏、慶応義塾大学の中村伊知哉氏、スクウェア・エニックスの和田洋一氏の4名が、事務局長には慶応義塾大学の金正勲氏が選出された。
同団体の設立趣旨によれば、近年では社会科学や人文科学、工学などの各学術領域においてコンテンツに関連する研究の蓄積と公開が行われ始めている。しかし現状では、コンテンツ分野を専門的に取り扱う中心的な基盤が存在しないため各分野が分散的な状況にあり、人材の交流や育成、成果の実社会への還元などが十ではないという。
こうした問題意識に立ち、コンテンツ分野を総合的に取り扱う新しい学会「コンテンツ学会」を立ち上げることになったとのこと。ただし、大学など”学問”の世界だけに閉じないオープンな場所だとしており、コンテンツ分野の実務家やクリエイター、政策担当者らの入会も大歓迎だという。
設立総会に続いてシンポジウムも行われたが、当初予定されていた内閣大臣の麻生太郎氏の登壇は残念ながら多忙のためキャンセルとなり(当たり前だが…)、また同じく登壇予定だった民主党衆議院議員の原口一博氏もビデオメッセージでのスピーチとなった。
その後登壇した総務省の小笠原陽一氏は、「コンテンツのジャンルを問わず、優秀なクリエイターほどどんどん海外に流出しつつある。海外ではクリエイターの報酬が日本と比べ2桁も違うのだから仕方がない。日本は『コンテンツ立国』を目指しているが、このままでは10年後には一体誰がコンテンツを作りたがるだろうか」と、クリエイターの労働環境の課題を語った。しかしクリエイターの報酬UPを実現する政策とユーザーの利益を保護する政策は矛盾する部分もありなかなか大変なようだ。
また内閣官房の大路正浩氏は、「今後の日本は『IT』と『コンテンツ』を2本柱としていく。そもそも儲けるための手法は2種類しかない。それは『コスト削減』と『高く売る』こと。コストを抑えるのがITの方向性で、製品に付加価値をもたらすのがコンテンツの方向性」であると語った。また今後の課題として海外とネット上への展開が不可欠であるとも述べ、「日本の良いものが海外に十分に知られていないことが問題。デジタル時代の新しいコンテンツ利用の形態に柔軟に対応することが必要だろう。今後は知財関連の法案などでコンテンツ業界を側面的に支援したい」と抱負を語った。
今後、同団体では、コンテンツ分野の識者を講師とした「設立記念講演シリーズ」を東京都内の大学などで今月から毎週1回ずつ計48回開催する。また、著作権法制度やコンテンツビジネス、表現活動などのテーマで分科会を設置し、学会誌の発行も予定。2009年5月頃に第1年次研究大会の開催を予定しているという。
コンテンツ学会公式サイト
http://contents-gakkai.org/