東京ゲームショウ3日目の10月10日(土)、カプコンブースのステージに「ロックマンの生みの親」でダレット社長の稲船敬二氏が登場した。
氏はまず、敢えて「ファミコン」ソフトとして復活した「ロックマン9 野望の復活!!」(以下ロックマン9)について説明。同作品はロックマン生誕20周年を記念し、長年シリーズを愛してくれたファンへ向けた「お礼」の意味もこめて製作されたのだという。開発の際はファミコンソフトのコンセプトを生かすために色数やキャラ数も制限をつけたとのこと。現在、Wiiウェアとしてダウンロード販売されている。
氏はここで、同作品の「ネットでのダウンロード販売」という形式にちなみ、”ロックマン9ならでは”の企画を発表。なんと、同作品で使用している楽曲やイラスト、動画などをニコニコ動画(以下ニコ動)の著作物管理サイト「ニコニ・コモンズ」へ提供するという。氏曰く、ロックマンが愛されたのはネットの影響が大きいとのこと。特にニコ動などの動画共有サイトにユーザーによるプレイ動画や作品の楽曲などを勝手に使用した動画が投稿され、それが口コミ効果となって最終的に作品のヒットに繋がったのだそうだ。
本来なら、カプコンの著作物を勝手に使用しているのだから動画共有サイトに対し削除要請を出すのが当たり前だ。しかし氏は対応に迷いながらも、作品を愛しているが故のユーザーの行動を尊重するのが一番だろうとの結論を出したとのこと。そこで今回は、ユーザーが正々堂々と二次創作ができるよう、そしてもっとロックマンをアピールしてもらえるよう、オフィシャル素材をニコニ・コモンズに提供し、「インサイド+ロックマン9チャンネル」を公開。氏は「我々はカプコンという会社が広い心を持った会社であることを示したい。そもそもニコ動に動画を投稿するような人は普通の人よりも面白いものが作れる人。カプコンはその動画でロックマンが面白いものだとアピールしてもらえるので、お互いにメリットがあるだろう」と語った。
ロックマンシリーズ公式サイト
http://www.capcom.co.jp/rockman/
ニコニ・コモンズ
http://www.niconicommons.jp/
このあと稲船氏は堀之内健プロデューサーとバトンタッチし一旦退場。その後今度はダレット社長として登場し、ダレットワールドのインワールドとのコラボスピーチを展開した。
東京ゲームショウの期間中はダレットワールドにもカプコンのブースがそのまま再現され、リアルのカプコンブースで行われているステージイベントも生中継された。仮想空間にも関わらずリアルのステージイベントと同様、ちゃんとアバターの観覧者も床に座ってスクリーンを見ているのが面白い。中にはダレットワールドの中から「社長!」と呼びかける人も。
実際に氏もダレットワールド内では「社長」というキャラクター(?)で頻繁にログインしているとのこと。アバターも氏自身が描いた似顔絵を元に製作されており、過去に学生に向けた講演イベントも開催している。
氏は仮想空間の魅力として、「文字だけの掲示板では顔が見えないから荒れやすい。でも仮想空間ならアバターがいるので顔が見える。そのため思ったよりも荒れることがなく、たまに変なことを言う人がいても、周りにいる人たちが『そんなことを言うのはやめろ』と止めてくれるのでみんなマナーが良く優しい人ばかり」と、Web2.0サービスに見られる「自浄作用」を説明。そして「ダレットワールドは無料で遊べる楽しいところ。もし万が一楽しくなかったらすぐ出て行ってもらっても大丈夫なので、みなさん是非来てください」と観覧者にダレットワールドを勧めて講演を締めくくった。敢えて「万が一楽しくなかったらすぐ出て行ってもらっても大丈夫」と明言したところに、むしろ氏のダレットワールドに対する自信が垣間見られた講演だった。因みに「社長」アバターはカプコンのコンパニオン衣装を着てウロウロしていることもあるとのこと…
一見、この「ロックマン」の講演と「ダレットワールド」の講演は関連のない話題のように感じられる。しかしこの2つの講演を改めて振り返ってみると、ある一つのテーマが見えてくる。それは「ユーザーが著作物で遊ぶことを許す」ということだ。
ダレットワールドの中には、ロックマンの着ぐるみや「モンスター・ハンター」シリーズの衣装、そして先にも出たカプコンのコンパニオン衣装など、カプコンが権利を持つコンテンツがアバター用衣装として提供されている。また、リアルのアパレル企業や漫画・アニメのコンテンツも参入しアイテムを提供しているのだが、ユーザーはそれらを仮想通貨で手に入れ、自由に組み合わせてアバターに着せることができる。例えばロックマンの着ぐるみを着た上に「デトロイト・メタル・シティ」のウィッグをかぶり「BABY, ★THE★STARS★SHINE BRIGHT」のゴスロリ服を着る……なんてコーディネイトもできるわけだ。しかしどんな組み合わせをしようともそれはユーザーの自由。ユーザーにとってはそのアイテムの権利が誰に帰属しようとも、一度手に入れたら「自分の持ち物」には変わりないのだから。
そのような、著作物を使用したUGC(user-generated content:一般ユーザーが作るコンテンツの総称)を受け入れられるがどうかが、これからのコンテンツの活用に重要になってくるのではないかと思う。果たして、”権利”でコンテンツをがんじがらめにするのと、ある程度の二次創作や”遊び”を許すのと、一体どちらがよりコンテンツを愛してもらえるだろうか?
確かに自社で製作したコンテンツで利益を得ている企業が、一部であってもそれらを無償で提供することは非常に難しい。講演中、稲船氏はサラリと軽い口調で語っていたが、二次創作容認に向かうまでの過程には実際は多くの苦労が伴ったはずだ。
このカプコンとダレットが取り組んでいる試みが、今後ゲーム業界及び仮想世界業界にどのような展開を見せるのか、これからも注目していきたいと思う。
ダレットワールド
http://www.daletto.com/pc/dw/
関連記事:
【東京ゲームショウレポート】UGCの発生構造及び伝播構造の双方の確立を---ニコ動とai sp@ceのクリエイティブ・ムーヴメントの仕組み
ダレットワールド内のカプコンブースでTGSステージイベントをいろいろ生中継!
氏はここで、同作品の「ネットでのダウンロード販売」という形式にちなみ、”ロックマン9ならでは”の企画を発表。なんと、同作品で使用している楽曲やイラスト、動画などをニコニコ動画(以下ニコ動)の著作物管理サイト「ニコニ・コモンズ」へ提供するという。氏曰く、ロックマンが愛されたのはネットの影響が大きいとのこと。特にニコ動などの動画共有サイトにユーザーによるプレイ動画や作品の楽曲などを勝手に使用した動画が投稿され、それが口コミ効果となって最終的に作品のヒットに繋がったのだそうだ。
本来なら、カプコンの著作物を勝手に使用しているのだから動画共有サイトに対し削除要請を出すのが当たり前だ。しかし氏は対応に迷いながらも、作品を愛しているが故のユーザーの行動を尊重するのが一番だろうとの結論を出したとのこと。そこで今回は、ユーザーが正々堂々と二次創作ができるよう、そしてもっとロックマンをアピールしてもらえるよう、オフィシャル素材をニコニ・コモンズに提供し、「インサイド+ロックマン9チャンネル」を公開。氏は「我々はカプコンという会社が広い心を持った会社であることを示したい。そもそもニコ動に動画を投稿するような人は普通の人よりも面白いものが作れる人。カプコンはその動画でロックマンが面白いものだとアピールしてもらえるので、お互いにメリットがあるだろう」と語った。
ロックマンシリーズ公式サイト
http://www.capcom.co.jp/rockman/
ニコニ・コモンズ
http://www.niconicommons.jp/
このあと稲船氏は堀之内健プロデューサーとバトンタッチし一旦退場。その後今度はダレット社長として登場し、ダレットワールドのインワールドとのコラボスピーチを展開した。
東京ゲームショウの期間中はダレットワールドにもカプコンのブースがそのまま再現され、リアルのカプコンブースで行われているステージイベントも生中継された。仮想空間にも関わらずリアルのステージイベントと同様、ちゃんとアバターの観覧者も床に座ってスクリーンを見ているのが面白い。中にはダレットワールドの中から「社長!」と呼びかける人も。
実際に氏もダレットワールド内では「社長」というキャラクター(?)で頻繁にログインしているとのこと。アバターも氏自身が描いた似顔絵を元に製作されており、過去に学生に向けた講演イベントも開催している。
氏は仮想空間の魅力として、「文字だけの掲示板では顔が見えないから荒れやすい。でも仮想空間ならアバターがいるので顔が見える。そのため思ったよりも荒れることがなく、たまに変なことを言う人がいても、周りにいる人たちが『そんなことを言うのはやめろ』と止めてくれるのでみんなマナーが良く優しい人ばかり」と、Web2.0サービスに見られる「自浄作用」を説明。そして「ダレットワールドは無料で遊べる楽しいところ。もし万が一楽しくなかったらすぐ出て行ってもらっても大丈夫なので、みなさん是非来てください」と観覧者にダレットワールドを勧めて講演を締めくくった。敢えて「万が一楽しくなかったらすぐ出て行ってもらっても大丈夫」と明言したところに、むしろ氏のダレットワールドに対する自信が垣間見られた講演だった。因みに「社長」アバターはカプコンのコンパニオン衣装を着てウロウロしていることもあるとのこと…
一見、この「ロックマン」の講演と「ダレットワールド」の講演は関連のない話題のように感じられる。しかしこの2つの講演を改めて振り返ってみると、ある一つのテーマが見えてくる。それは「ユーザーが著作物で遊ぶことを許す」ということだ。
ダレットワールドの中には、ロックマンの着ぐるみや「モンスター・ハンター」シリーズの衣装、そして先にも出たカプコンのコンパニオン衣装など、カプコンが権利を持つコンテンツがアバター用衣装として提供されている。また、リアルのアパレル企業や漫画・アニメのコンテンツも参入しアイテムを提供しているのだが、ユーザーはそれらを仮想通貨で手に入れ、自由に組み合わせてアバターに着せることができる。例えばロックマンの着ぐるみを着た上に「デトロイト・メタル・シティ」のウィッグをかぶり「BABY, ★THE★STARS★SHINE BRIGHT」のゴスロリ服を着る……なんてコーディネイトもできるわけだ。しかしどんな組み合わせをしようともそれはユーザーの自由。ユーザーにとってはそのアイテムの権利が誰に帰属しようとも、一度手に入れたら「自分の持ち物」には変わりないのだから。
そのような、著作物を使用したUGC(user-generated content:一般ユーザーが作るコンテンツの総称)を受け入れられるがどうかが、これからのコンテンツの活用に重要になってくるのではないかと思う。果たして、”権利”でコンテンツをがんじがらめにするのと、ある程度の二次創作や”遊び”を許すのと、一体どちらがよりコンテンツを愛してもらえるだろうか?
確かに自社で製作したコンテンツで利益を得ている企業が、一部であってもそれらを無償で提供することは非常に難しい。講演中、稲船氏はサラリと軽い口調で語っていたが、二次創作容認に向かうまでの過程には実際は多くの苦労が伴ったはずだ。
このカプコンとダレットが取り組んでいる試みが、今後ゲーム業界及び仮想世界業界にどのような展開を見せるのか、これからも注目していきたいと思う。
ダレットワールド
http://www.daletto.com/pc/dw/
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