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【VWCE2008レポート】慶応大、脳波でアバター操作する技術で障害者の”セカンドライフ内散歩”に成功

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「Virtual World Conference & Expo 2008」では、ビジネスの場での仮想世界活用事例だけではなく学術的・教育的な試みも発表された。中でも特に参加者の目を引いていたのは、慶応義塾大学の牛場潤一専任講師らが進めている脳波でセカンドライフのアバターを操作する実験だった。

【VWCE2008レポート】慶応大、脳波でアバター操作する技術で障害者の”セカンドライフ内散歩”に成功
この講演「3Diにおける教育分野利用について」では、株式会社内田洋行のマーケティング本部・コンテンツプロデューサーである高橋祐人氏をモデレーターに、慶応義塾大学理工学部生命情報学科の専任講師である牛場潤一氏と法政大学情報技術(IT)研究センター事務室主任の日野好幸氏が登壇し、両大学のセカンドライフ活用事例を発表した。
【VWCE2008レポート】慶応大、脳波でアバター操作する技術で障害者の”セカンドライフ内散歩”に成功
慶応大学では昨年より脳波でアバターを操作する技術の開発を行ってきたが、この度、世界で始めて筋疾患で手足が不自由な人を対象に行った実証実験でのアバター操作に成功したとのこと。講演では被験者が自宅のPCから実際にアバターを動かしている様子や、インワールドで学生たちのアバターと会話している様子が映された。
同技術は、人間の頭に電極を取り付け、運動機能を司る能細胞が発する脳波を読み取るというもの。欧米で主流の「埋め込み型」よりも精度は低いが、取り外しが可能な分安心感があり、使用に特別な訓練も必要ない。今はまだセカンドライフの中を散歩することしか出来ないが、次はチャットやショッピングもできるよう開発・実験を進めていくとのことで、今後の展開に期待が持てる。
【VWCE2008レポート】慶応大、脳波でアバター操作する技術で障害者の”セカンドライフ内散歩”に成功
法政大学ではセカンドライフ内にキャンパスを構築し、主に大学が所有するコンテンツをセカンドライフと双方向で提供する試みを行っている。元々同大学のIT研究センターではe-ラーニングを取り入れた”ハイブリッド型授業”を提供していたが、その延長でセカンドライフにも講演などをストリーミング配信。先日も春季学術講演会をセカンドライフ内にライブストリーミングしたという。
【VWCE2008レポート】慶応大、脳波でアバター操作する技術で障害者の”セカンドライフ内散歩”に成功
また、同大学ではリアルにも存在する「能楽研究所」をそっくりそのままセカンドライフ内にも再現。ここで実際に能の舞台を再現して見せ好評を博したという。世界中にシームレスに繋がっているセカンドライフでこのような日本独自のコンテンツを提供するのは非常に有効だろう。
【VWCE2008レポート】慶応大、脳波でアバター操作する技術で障害者の”セカンドライフ内散歩”に成功
最後に株式会社内田洋行の「3Di戦略」が示された。今後同社では教育分野でのセカンドライフ活用の実証実験を進めていくとのことで、その手始めにまずは「場」の提供が行われるという。これには、同社がセカンドライフ内に所有するSIMの一部を教育関係者や研究者に無料で提供するというバーチャルな「場」と、東京都中央区にある同社のオフィス「ユビキタス協創広場CANVAS」内の施設を提供するというリアルな「場」の2つの意味がある。「セカンドライフを教育現場で使いたいが何もない」という人に適切な環境を提供するというわけだ。同社の設備には380inchの巨大スクリーンもあるので、これを使用すれば等身大サイズのアバターと会話するというVR(バーチャル・リアリティ)的な体験も可能だ。
国内ではどうしてもビジネスの話題ばかりが先行してしまいがちなセカンドライフだが、そもそも仮想世界は何でもできる「実験の場」、このような学術・教育の分野での斬新な実証実験の事例がもっと出てきてもよいのではないだろうか?
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