【インタビュー】マグスル新谷氏が語る毎月30%の成長を続けるセカンドライフの金融事業とは(後編)

   2011/04/01

【インタビュー】マグスル新谷氏が語る毎月30%の成長を続けるセカンドライフの金融事業とは(後編)
セカンドライフで「マグスル東京」などの日本人居住区を展開するマグスルは2007年12月から電子マネー「ネットキャッシュ」でリンデンドルを購入することができるサービスを開始した。サービス開始から4か月、サービスは順調に拡大しているという。そこには今後のバーチャルワールド市場を占うヒントが隠されていた。
マグスル代表取締役社長/CEOの新谷卓也氏(写真)に話を聞く。その後編をお送りする。


(前編から続く)
―― 具体的にはどれくらいの利用があるのでしょうか。
サービス開始から4か月で延べ5000万リンデンドルを販売しました。これは今でも月30%のペースで伸び続けています。購入したユーザーの数は約2500人ほどですから、1人あたり月に3千数百円使っている計算になります。
一方、アイテム課金のオンラインゲームでは、ユーザーがゲームにかける金額は月4500円くらいといわれてます。月額課金のオンラインゲームのほうがもう少し安いので、全体平均では3000円くらいなんですね。つまり、オンラインゲームユーザーとセカンドライフでそれぞれお金を使っているユーザーは同じくらいの額を使っているということです。
―― ユーザー対比で考えるとオンラインゲームと同じくらいの市場規模がみこめるということですね。
これまでバーチャルワールドの市場は新しい分野だけにどの業界と比較すればいいか、という課題がありましたが、少なくとも有料ユーザーのお金のかけ方はオンラインゲームと同じと考えていい、という可能性がわかります。
ただ、実際のユーザーはオンラインゲームとセカンドライフは同じユーザー層じゃないですよね。明らかにオンラインゲームをしない人がセカンドライフのユーザー層には多かったりします。同じユーザー層であれば、お金の使い方が同じでも当たり前なのですが、ユーザー層が違っても同じ数値が出てきたということは、今後さまざまな層の人たちが参加してきた場合の市場の広がりを推し量るうえですごく重要なことだと思います。
―― ユーザーがセカンドライフにかける金額の指標は、他にどのようなものがあるでしょうか。
マグスルの土地レンタルで値段を決める時、オンラインゲームで一般的だった月額1500円という単位を参考にして、「1500円で売れる大きさ」ということから広さを決めました。
これは当時としては珍しいことで、(セカンドライフの運営元であるリンデンラボ社が直接運営している)メインランドの土地を買ったことがある人は知っていると思いますが、売る土地の大きさというのは(特に一般的な区画の広さや形の単位などはなく)売る側が自由に決められるのです。(企業や個人が運用している)プライベートアイランドでも以前は借主とオーナーが話し合って「じゃあ、この広さだけ借ります」というようなレンタルの仕方が普通にありました。そうした中で、マグスルは土地の大きさを固定した「区画」の考え方を取り入れたのです。そうすることによってレンタルにかかる金額がわかりやすく、クリアになるんですね。「1皿いくら」で計算ができる回転寿司みたいなものです(笑)
その後、レンタルを始めて3か月でマグスル東京の土地がすべて売り切れたのですが、その時のひとりあたりの区画が平均3区画。つまり4500円分でした。
―― 先ほど出てきた数字とも近いですね。
そうです。ここからセカンドライフでお金を払って遊んでいる人が月々にかける金額というのはおそらく5,000円弱あたりなのかもしれないと推測できますね。
ところで、よくセカンドライフ内のこうした事業になぜ取り組んだのかということについて聞かれることがあるのですが、実は不動産屋をやりたいというわけではなくて、企業がセカンドライフを活用するにあたって必要なさまざまなデータを得ることが目的でした。そのデータの根拠となる数字やユーザーの声を得るためにベースとなる有料のインフラサービスで成功する必要があり、それが土地レンタルのような不動産サービスであり、リンデンドル販売のような金融サービスなのです。

■日本人クリエイターが育ってきた

―― マグスル東京などにはそうした土地を活動拠点にして多くのクリエイターの方が活躍しています。セカンドライフのクリエイターを取り巻く環境の動きはどうでしょうか。
クリエイターが感じているのは、これまでキャンパー()だった人が(キャンピングする代わりに)リンデンドルを購入し始めているという感触です。購入されたリンデンドルが回っていってクリエイターの作品購入に充てられているはずで、そうしたクリエイターからマグスルが買い取っているリンデンドルも多いです。月に500万リンデンドルは買い取っていますね。
※編集注:キャンピング(前述)でリンデンドルを稼ぐユーザーを「キャンパー」という。
―― リンデンドルが日本から流出していたという頃からの違いは感じますか?
感じますね。まず、クリエイターが育ってきました。稼いでいるクリエイターさんのところには海外からユーザーが買いに来ています。そもそもセカンドライフユーザーの9割は海外ユーザーなので、それなりに意味のある数字の売り上げを上げるためには日本人以外の90%の人たちにも売らないとだめなんですよ。だから日本人がリンデンドルを手に入れたから数字が上がっているというだけではなくて、海外からもお金が流れ込んできているはずです。
―― 使う一方だった日本人ユーザーが、クリエイターとして海外ユーザーを相手に稼ぎ始めている、と。
そうです。メジャーなクリエイターは売上でプライベートアイランドを買ったりしてますし(笑)
―― 「島を買えるほどの売り上げ」というと、リアルで考えたらすごいことですよね(笑)
そうしてリンデンドルを稼いだクリエイターさんの中には(マグスルのリンデンドル買取窓口に)100万リンデンドル単位で売ってこられる方もいたりしますね。そこまでではなく、「ちょっと人気がある」というようなショップのクリエイターさんでも数十万リンデンドルくらいはあります。昨年の夏から考えると1桁上がった感じがしますね。それだけみんながやり方を覚え始めてきたのだと思います。

■「換金できる」ことは必須ではない

―― 「換金できる」ことがセカンドライフの魅力のひとつであるといわれたことがありましたが、これについてはどう思いますか。
「換金できる」ということと、そのサービスの魅力は別に考えるべきだと思います。例えばオンラインゲームで支払ったお金は換金できないですが、みんなお金を使って楽しんでいて、換金できないことがデメリットとはとらえられていません。また、日常生活をみると(JR東日本のプリペイド式ICカードの)Suicaのように換金できるサービスでも、チャージして使い切ることが分かっていれば換金することはほぼありませんよね。(リンデンドルのようなバーチャルワールド内の仮想通貨も)利用する選択肢が多くて楽しむことができれば「換金できる」ことは必須ではないと考えています。
ただ、セカンドライフについてはコンテンツを作っているクリエイターにコンテンツを作ってもらう必要があります。そのモチベーションとして間接的に換金性が関わっているとはいえますね。

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