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【OGC2008レポート】「『3Dだからおもしろい』ということではない」その価値をもう一度考える

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【OGC2008レポート】「『3Dだからおもしろい』ということではない」その価値をもう一度考える
OGC2008では通常の講演形式のセッションのほかに「ラウンドテーブル」と呼ばれるコマも設けられた。「ラウンドテーブル」はその名の通り、テーブルを囲んで特定のテーマについて議論したり意見交換したりする場だ。定員が約20名と比較的少人数に抑えられているのも議論しやすくするためである。


今回3つあるラウンドテーブルのうち、ひとつがメタバース(バーチャルワールド)に関するものとなっている。THE SECOND TIMESからは編集長の箱田が参加し、株式会社サイメン VWCプロデューサーの渡辺昌宏氏と共にモデレーターを務めさせていただいた。
通常、ラウンドテーブルは非公開とされているが、このラウンドテーブルに限っては前半が公開、後半が非公開という構成で行われた。ここでは公開部分となる前半の議論の模様をお伝えしたい。
なお、ラウンドテーブルには株式会社博報堂DYグループ iビジネスセンター・3Dインターネットラボ チーフクリエイティブプロデューサーの千田光昭氏、起業家/ブロガーであり、株式会社ngicapital イノベーションラボ所長などを務める橋本大也氏、神奈川工科大学客員教授などを務める深野暁雄氏の3名もゲストパネラーとして参加した。
■バーチャルワールドには何が必要か
冒頭にモデレーターより現状のバーチャルワールドに関する国内・海外の動きや温度感が総括されたのち、口火を切る形で、バーチャルワールド普及に向けての各課題がゲストパネラーから語られた。
共通する認識としては、バーチャルワールドは一般への「普及」の前に「理解」がまだ十分にされていないという点が挙げられた。
その理由として橋本氏は「今のバーチャルワールドにハマるには時間が必要。これはテクノロジーによる解決もあると思う」と話す。また、こうした現状に対し、深野氏からは「アニメ『電脳コイル』によってバーチャルリアリティの理解が進んだように、ドラマやアニメといった作品による啓蒙は強い」と、ひとつの対応策が挙げられた。一方、千田氏は、クロスメディアで露出を増やすといったような一般に対する働きかけもさることながら「実は社内の人間がバーチャルワールドを理解していないということも多く、社内での草の根活動も大事」であると体験を交えながら語った。
■「3Dだからおもしろい」ということではない
そうした議論の中で「あえて」と前置きした上で投げかけられたのが、「本当に3Dにする必要はあるのか」という問いだ。同様の問いかけは、午前に行われたソニー・コンピュータエンターテインメントによるプレイステーション3のバーチャルワールド「Home」のセッションでも出ていた。
これについてもさまざまな考えが述べられた。多くの方が感じているのは「コミュニティの共有体験をより豊かにする」といった点での有用性だ。
これに加え、3Dには「テーマパークのライド型アトラクションに乗るようなバーチャル体験の楽しさがある」としたうえで、こうしたモデルケースが足りていないのが現状ではないかという見解も示された。
また、3Dに求められることの多い「リアルさ」についての意見には、ラジオメディアが音だけであるがゆえに「番組を通して豊かな共有体験ができた」という経験をふまえ「リアルさを追求すると、それはテクノロジーの話になる。そうではなく、ユーザーにイメージを『補完』してもらうことでより体験を豊かにする方向もある」という主旨の発言がされた。バーチャルワールドに求められるのは体験の舞台である「空間」であり、リアルさではないのではないかという見解は、初期のドラクエのようにドットで描かれたキャラクターにも感情移入できることを考えるとうなづけるものがある。
そして同時にバーチャルワールドをメディアとして考えた場合、それは表現手段のひとつであることは変わらないという意見もあった。この意見はクロスメディア展開のひとつとしてバーチャルワールドをとらえる現在の動きに通じるものだ。
結局のところ、発言の中にもあった「『3D』だから『おもしろい』ということではな」く、「その軸となるおもしろさが伝えられていない」ということが問題なのだろう。これに近い発言で興味深かったのはゲーム業界関係の方からの発言にあった「3Dだとなんとなく作ってもそれなりに見栄えがしてしまうので、最近の若いゲームデザイナーの中には(ゲームエリアの)マップをきちんとデザインできないものもいる」というコメントだ。3D表現の派手さの前にゲームのおもしろさの「軸」となるマップデザインがおろそかになってしまうことを危惧したものだが、同時に「おもしろさの本質は見た目の奥にある」ということを示す例でもある。
■そして議論は後半へ
今回のラウンドテーブルはバーチャルワールドプラットフォーマーやゲーム業界関係者、メディア関係者、メディアプロデューサー、大学関係者など様々な立場の参加者が集まり、非常に活発な議論が行われた。そのため、すべての方の発言をここで紹介することが難しいのが残念だ。
今回のような議論はおそらく各方面でもされたことがあるだろうが、これだけ多くの人がそれぞれの立場を持ってまとまった時間をとり、議論を行う機会はそうそうない。参加者の方の積極的な議論のおかげで大変に意義のあるものとなった。
この後、ラウンドテーブルが非公開の後半へと進むと話はより具体的な方向に進み、前半にもまして活気を帯びた議論が展開されていた。
バーチャルワールドを取り巻く環境は引き続き動き続けており、継続的に問い続けることが必要である。またこうした機会を持ちたい。
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