日本電気株式会社(NEC)は3月4日から7日まで東京・ビッグサイトで行われた流通情報システムの専門展示会「リテールテック・ジャパン 2008」で、バーチャル空間とリアル店舗を結ぶおサイフケータイを活用したソリューションの展示を行った。
会場に入ってすぐの好立地にあるNECブース
同社はこの展示でセカンドライフ内で取得したクーポンをおサイフケータイで受け取り、リアルの店舗で利用するデモを実施。バーチャルとリアルを繋ぐ、ひとつの方策を示した。
立ち見も出る中、カウントダウンとともにデモが始まると、プレゼンターの男性がPCを操作してセカンドライフにアクセスする。すると126インチの大画面にセカンドライフの画面が映し出された。プレゼンターがセカンドライフ内でクーポンを発行する機械にタッチすると、傍らに置いたケータイにクーポンが転送される。
セカンドライフ内の端末にタッチすると…
おサイフケータイにクーポンが転送された
バーチャル空間とリアル店舗を結ぶ模式図
「セカンドライフの画面が出ると、足をとめる来場者の方が増えるんですよ。やはりインパクトがあるんでしょうね。」
と話すのは同社ユビキタスソリューション推進本部 FeliCaビジネスソリューションセンター コンテンツ推進グループ マネージャーの深川悟郎氏。実はNECの取り組みで利用したセカンドライフ内の制作物はすべてFeliCaビジネスソリューションセンターで制作したものだ。ディレクションは深川氏をはじめ、同グループ主任の金野大氏と同センターの戸田一彦氏の3名で行っている。NECのモバイルFelica対応のアプリケーションサービス「トクトクポケット」などにおいて今後考えられる展開可能性を模索していく中で、セカンドライフにも取り組み始めたのだという。
ただ、ここまでの過程には苦労もあった。
「セキュリティの関係で通常の社内ネットワークからはセカンドライフにアクセスできないということもあり、会社の地下に『セカンドライフ専用部屋』を作りました。テストのためにいろいろなスペックのパソコンを用意して。ハイスペックなPCは出す熱もすごいので、おかげで夏場は暑くて大変でした(笑)」(深川氏)
そうして最初の「トクトクポケット島」をオープンしたのが2007年の9月、企業によるこうした取り組みの発表としては決して早い方ではなかったが、それは「地に足のついた形」(同氏)で行ってきたがゆえという。事実、その後も金融機関向けプロモーション活動や、月周回衛星「かぐや」の実物大モデルが登場し宇宙遊泳も体験できるアトラクション、そして海外でもスペインのイベントでセカンドライフ内デモンストレーションを実施するなど、安定・継続的に活動してきていることからもそれはわかる。
深川氏(写真左)、金野氏(同右)から説明を伺う
また、今回のリテールテックでの展示でもその姿勢は見てとれる。デモンストレーションではセカンドライフ内でクーポンを受け取るところから始まり、店舗で買い物、最終的にセルフサービスで会計ができる端末を利用しておサイフケータイで支払いを行うという、「少し先の」生活を見せていたが、これらは「今あるソリューションで実現可能なもの」だと金野氏は説明した。
セカンドライフのようなバーチャルワールドとリアルの連動は、その可能性を期待されながらも実際にどういった方策がとれるのか、なかなか現実的な形で提示できていなかったのが現状だ。そうした中、同社が示した方向性は、おサイフケータイという広く一般的になりつつあるデバイスを連携ポイントとして活用している点で現実味が強く、それだけに魅力的なソリューションといえるだろう。
FeliCaビジネスソリューションセンター 深川悟郎氏(写真左)、金野大氏(同右)
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