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ログインしないでセカンドライフの本質をつかむ本3冊

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セカンドライフや仮想世界の話題がマスメディアでもしばしば取り上げられるようになった。世のオジサン(オバサン)方の多くは、普通のゲームだってやったことがないから、そこで何が起きているのか、よくわかっていない。だが、これだけ騒がれると動揺する。メタバースに次世代のビジネスチャンスがあるなどという特集を読むとドキっとする。ちょっとは俺も知っておかないとまずいかな、あわよくば知ったかぶりをしたいものだなと思っている。

ところが、無理にログインして1,2時間遊んでみたくらいでは仮想世界の面白さなんてつかめないものである。何十時間、何百時間を費やして、仮想世界の中で人脈をつくりあげ、仮想貨幣を増やし、いろいろな体験をしなければ、仮想世界における本物の人生観を構築できないからである。
それでもなお、セカンドライフについて、わかったようなことを言いたい大人のために、数時間で仮想体験の感覚を身につけられる(かもしれない)漫画や小説を紹介しよう。
まずひとつめが漫画「ルサンチマン」である。これおすすめ。
ルサンチマン 1 (1) (ビッグコミックス)
ルサンチマン 1 (1) (ビッグコミックス)
「2015年。印刷工場に勤める坂本拓郎は、今までずっとパッとしない人生を送ってきた。そんなある日、旧友の越後からギャルゲー(美少女ゲーム)を勧められるが、「現実の女が大事」と言って一度は踏みとどまる。だが、その後も彼が女に相手にされることは全くなく、30歳の誕生日、ついに大金をはたいてギャルゲー道具一式を購入する(第1話)」という設定ではじまる漫画全4巻。
主人公はつらい日常から逃避して、仮想世界の美少女との生活へひきこもる。しかし、ひきこもるというのは外からみた見方であって、本人は仮想世界の中で、まっとうに主体性をもっていきているのである。美少女キャラクターと純愛しているのである。心は本物なのだから、この愛も本物なのかもしれない。そもそも愛って本質的にバーチャルなのであるよ、なんてことをいろいろと考えさせられる。
仮想世界では美少年のアバターで華麗な生活を送る主人公の主観世界と、ゴミためのような部屋でヘッドセットディスプレイをかぶり、全身を覆う体感スーツ(性感用のデバイスも装着)を来た主人公がいる客観世界を交互に描く。最初は大きかった、ふたつの世界の隔たりは、やがて両側からその壁を突き破っていってひとつになる。そりゃどんな世界かというと、実際に漫画を読んでみていただきたい。
「中毒するセカンドライフ」という小説は、セカンドライフ周辺の同時代の空気が生み出したメタフィクションである。。
中毒するセカンドライフ
中毒するセカンドライフ
「全世界で1000万以上のユーザーがいる、今最も注目されているインターネット上の3次元の仮想空間『セカンドライフ』自由な経済活動が可能なため、アディダス、アップル、デル、トヨタや日産などの企業も参加し、月に約50億の仮想ドルが動いていて、しかもこのドルは現実の米ドルと交換できる。それに男女の出逢いと、ヴァーチャル・ラブにセックス。この本で、話題のセカンドライフを追体験してみて下さい!」
セカンドライフを収益源にしたベンチャー企業の社長と周辺に渦巻く陰謀、そして仮想世界での恋愛のふたつを軸にした近未来仮想世界の冒険小説。ハイスピードで駆け抜けるように読めた。
そして上級編が「順列都市」。上下2巻の長編小説。
順列都市〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)
順列都市〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)
順列都市〈下〉 (ハヤカワ文庫SF)
順列都市〈下〉 (ハヤカワ文庫SF)
人間の記憶や人格といった精神活動のすべてが脳という物理的システムの上にある情報であるならば、そのコピーを作成することが可能なはずである。コピーを別のシステム上で走らせれば、それはもう一人の自分である。
肉体を持つオリジナルと違ってコピーは不老不死でいることができる。しかし、ソフトウェアである彼らは、それを走らせるハードウェアなしには存在し得ない。ハードウェアが停止されたり、破壊されれば終わりである。物語の舞台は21世紀半ば、ソフトウェア化してスーパーコンピュータの中へ移相し、肉体の死を逃れた大富豪たちの前に、彼らの究極の願いである、未来永劫の生を約束する男が現れる。一方で男は人工生命のアマチュア研究者のマリアに接触し、謎の研究依頼をしていた。
人工知能や情報論の先端知識を駆使してハードSFの最高峰作家グレッグ・イーガンが書いた壮大な仮想世界の未来物語。物語の枝葉の部分でも深い考察をベースに書かれており、読み込み始めるとずぶずぶと深みにはまっていく感じがする。
このままセカンドライフが何百年も進化をつづけたらどうなっちゃうの?という超未来予想がこのグレッグ・イーガンの小説である。1994年に書かれてキャンベル記念賞、ディトマー賞を受賞した名作。
ざっとこの3冊を読んで得た知識や考えたことをベースに「結局のところ、仮想世界ってのはさ」と語っていれば、一度もセカンドライフにログインしていなくても、仮想世界通として周りにレスペクトされちゃうかもしれない。ちょっと試しに読んでみていただきたい。
情報考学 Passion For The Future
http://www.ringolab.com/note/daiya/
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