2008年バーチャルワールドの展望を語る インタビュー

】第5回「バーチャルワールドエージェンシー」第3部 メルティングドッツ 浅枝大志氏

更新日:

メルティングドッツが編集協力した「Virtual World Walker」はコンビニにも並び、これまでバーチャルワールドの話題に触れる機会がなかった層に対しても「わかりやすく」を追求することで認知の可能性を作り出した。この3月に第2号が発売される予定だ。

同社が目指すバーチャルワールドコミュニティとはどういったものだろうか。話を聞いた。
【特集:2008年バーチャルワールドの展望を語る!】第5回「バーチャルワールドエージェンシー」第3部 メルティングドッツ 浅枝大志氏
CEO 浅枝大志氏

―― 昨年12月に創刊された雑誌「Virtual World Walker」には、メルティングドッツさんも編集協力されたのですよね。
コンセプトとして、とにかく初心者むけの内容としました。また、創刊の時期がバーチャルワールドサミット(※)のちょっと後で、セカンドライフが日本で話題になり始めて約1年経ったあたりということもあり、いろいろと状況も変わってくるだろうと考え、いくつか提案を含めています。そのひとつが「セカンドライフ」のみから「バーチャルワールド」の概念に変えなければいけないということですね。それと、ビジネスユーザー向けにはこうしたアクションをしているということを伝える意味があります。
雑誌というメディアにしたのは、やはりバーチャルワールドはまだまだコアなサービスなので、一般ユーザーに知ってもらうためにはどうすればいいか。そのためにはビジネスとかITとかは関係なしに、そのもので楽しめるものとして「Virtual World Walker」を普通の雑誌の形にしました。
また、「わかりやすく」を追求した結果として今は表紙に大きく「セカンドライフ」というキーワードを使っていますが、内容はセカンドライフに限定しないようになっています。そのほかにもわかりやすくするためにはいろいろな方法をとりました。
メディアによるブームがなかったらこうしたことはできなかったと思いますが、その勢いを変な勢いのまま広げたくないというのがあって、それでこうした雑誌を出しました。
次号は3月の発行を予定しています。

※編集部注:バーチャルワールドサミット
2007年10月に東京・両国で開催。メルティングドッツ社も企画運営に関わっている。

―― イベント開催や雑誌創刊など、ネットメディアを越えた活躍をしていたわけですが、その2007年を振り返っていかがでしたか。
ほんとに早かったですね。(セカンドライフの運営元である)リンデンラボの土居さんに会ったのや、最初のクライアントとの打ち合わせを始めたのも2006年の年末くらいですし、テレビ東京の「ワールドビジネスサテライト」に初めて出たのもそのくらいでした。同じころ、初めてのプレスリリースを出したんですよ。「デジタルハリウッド大学院卒業生がバーチャルワールド専門企業設立」というような内容でしたね。それから思うと本当に早いです。
それと、本(アスキー新書「ウェブ仮想社会『セカンドライフ』ネットビジネスの新大陸」)を出したことがきっかけとして大きかったですね。これがなかったらその後はなかったかもしれません。今あの本を読むと「そんなこと知ってるよ」となるんですが、書いたのは2007年の2月なんです。それでもあまり内容がはずれずに、ここまで予想したように来ているのがうれしいですね。

―― 当時はどういった展望を持っていましたか。
まだ1年くらいは流行らないとおもってました。
その意味で、ブームが早く来すぎてしまったなと(笑)当時は1年くらいかけてコミュニティづくりをしたり、本気で組んでくれるパートナー企業を探したり、そうした準備の時期にしたかったんです。そして、そのあとにブームを作る。ブームを作る自信はありました。
この1年でブームとは関係なしに業界ができてきたと思います。あとは特定の理解している企業の狭い中でだけビジネスをするのではなく、バーチャルワールド業界以外の市場を巻き込んでいく必要がありますね。それがバーチャルワールド業界の課題ともいえます。今は比較的閉じていて特殊な業界になっていますが、穴をあけてはじけると境目がないオープンな業界になると思います。

―― 今年、良かったこと、楽しかったことはなんでしょうか。
楽しかったことというと、(アイドルの)時東ぁみちゃんに会えたことかな(笑)
【特集:2008年バーチャルワールドの展望を語る!】第5回「バーチャルワールドエージェンシー」第3部 メルティングドッツ 浅枝大志氏

―― それは楽しそうですね(笑)
彼女はセカンドライフをあっさり受け入れたんですよね。操作方法を少し教えたらどんどん試し始めて。アバターも自分でいじってすごく変なアバターにして動き回ってました。でも、その変なアバターを操作しているのが時東ぁみちゃんだとは(セカンドライフの中の)まわりの人は誰も思わないわけですよ。それが見ていておもしろくて(笑)。そして、すごいと思ったのはそうやって人にどんどん話しかけていって、たった15分くらいでその場の話題の中心になってしまったんです。
アバターのオーラって本人の魅力が乗り移るもので、同じなんだな、と思いました。そういう意味ではアバターを自分で作ったことで愛着もわいて、外見だけではない本質的な個性がでたのだと思います。
その他でいうと、2007年3月の(バーチャルワールド業界の世界的カンファレンスである)「Vitual World Conference」が衝撃でした。まだ参加者も少なかったんですが、アメリカのバーチャルワールドエージェンシーの方々ともそこで初めて会うことができました。その時は心底「英語が話せてよかった!」と思いましたね。これまでの人生でそんなふうに感じたことは全くなかったんで(笑)。日本はほんとに英語を使う必要なく暮らせますからね。そういう意味では、セカンドライフのようなバーチャルワールドをコミュニケーションツールとして英語を使う場を提供できたりするといいですね。
ちょっと考えたのは「セカンドライフの中であえて英語しかしゃべらない会」とかやってみようかと(笑)。日本人同士で英語をしゃべりあうのは英語学校と同じなんですが、やっぱり「見た目は日本人なのに英語をしゃべる」という不自然さがありますよね。アバターを使うことでこれをなくせるのではないかと思っています。

―― それはありますね。私は以前、セカンドライフ内で会った人がアバターだと逆に日本人とわからなくて、必死で英語で話してしまったことがありました(笑)
ところで、バーチャルワールドが一時期の過熱状態から落ち着いたといわれますが、現状についてどういう印象を持っているでしょうか。

普通のことと思っています。私は(萌え系美容院の)「モエシャン」の創業に関わったのですが、「電車男」が流行った頃、美容室の人気がものすごいことになったんです。そんな中でテレビの取材が入ると1日かかってしまい、営業ができなくなってしまうというような苦労をしました。そうした経験をしていると、現在の急激な流れも受け入れることができました。
なので、あえてブームを利用して認知してもらったり、制作などで売上を上げながら、そうしたブームが落ち着いた後のビジネスモデルを作ることを考えました。
もちろん、ブームとは関係なしに早い段階で取り組むクライアントさんも多いです。例えば、富士通さんは2007年の初めごろから相談を受けていました。でも、公開したのはそのしばらくあとですし。規模もありますが、きちんと進めた結果がこの時期になりました。セミナーで講演をするなど、とてもいい関係を築けていると思っています。

―― 同様のことはユーザーに対してもいえますね。
そうですね。ユーザーも入ってくる時期によって違いがあると思います。初期のユーザーは私たちが導くまでもなくセカンドライフに興味を持つユーザーで、にもかかわらず、登録時にうちのコミュニティを選んでくれたのは日本人、とう基準で選んでいただけたのだと思っています。僕自身も、日本人同士で会いたいと思ってそうした場を作ったので。でも押し付けはしたくなかったので、こちらからメールで情報を送るといったようなことは控えていました。場を作って、ユーザーの能動的な行動に任せる形です。
これからはユーザー層も変わって、「知りたい・教えてほしい」ユーザーが増えると思います。なので、こうしたユーザー向けに今は毎晩イベントやっているんですよ。昼はニュース番組、夜は曜日ごとにコーナーを設けてやっています。続けないと「やっている」と認識してもらえないので毎週やる必要があるんです。こうした情報からユーザーの方が自分のできること、やりたいことなど、それぞれの楽しみ方を見つけ出してもらえればと思っています。
有料レンタルの住居区というのはまだやっていません。需要があれば用意をするつもりはありますが、将来的にはスポンサーをつけて、無料で住めるような形にしたほうがよいかもしれませんね。

―― いろいろな企画が進んでいますね。では、2008年のバーチャルワールドはどういう流れになっていくでしょうか。展望を教えてください。
まずは日本人ユーザーを100万人にしたいですね。もう少し先の希望としてはメルティングドッツユーザーが100万人。日本人ユーザー全体では300から500万人といったところです。
ただ、バーチャルワールドといいつつも、セカンドライフだけではないというのはこだわっていきたいです。ネットコミュニティの概念の中で、ユーザーが個性を出していく表現手段として写真とか画像に加えてアバターもあるというくらいカジュアルなものに進化していくことをイメージしています。
また、広告という面を考えると、CMとテレビ、広告ページと雑誌の関係のように、バーチャルワールドで3DのCMをいれようとしたら番組にあたるものを作らなければなりません。Webとのクロスメディア展開はもちろんやるべきですしね。例えば、ネットラジオやウェブサイトなどネット上のメディアの一番の魅力は、自分のバーチャルワールド内の場所に直接誘導できるというところなんですよ。コミュニケーションを交えながら話題を続ける場所としてバーチャルワールドを活用することでロイヤルティも上げることもできます。また、共通の話題を作り出すことでコミュニティも活性化できます。これは昔、学校で前日のTV番組を共通の話題にしていたのと似ていますね。
これまでは、ビジネスマンやクリエーターが多かったので、共通の話題もそうしたターゲットに偏っていたのですが、メディアのひとつとして一般化するにつれてさまざまな話題がバーチャルワールド内コミュニティの中心になりえます。
バーチャルワールドならではの楽しみ方という視点を越えて、細分化する趣味嗜好の時代に合った、皆が学校で体験していたようなコミュニティの楽しみ方を作りだしていきたいですね。

-2008年バーチャルワールドの展望を語る, インタビュー

Copyright© vsmedia , 2024 All Rights Reserved Powered by STINGER.