2008年バーチャルワールドの展望を語る インタビュー

第3回「インタラクティブ・エージェンシー」第2部 スパイスボックス 飯野正樹氏

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スパイスボックスは国内企業のセカンドライフ活用に初期から関わっていた。ソフトバンクモバイル、三越NISSAN「X-TRAIL」大塚製薬「ファイブミニ」テンプスタッフなどそうそうたる顔ぶれだ。一方、大学などの研究プロジェクトの支援も行うなど、その守備範囲は幅広い。同社はこうした試みから何を読み取ったのか。同社ビジネスプロデュース局チームリーダーの飯野正樹氏に話を聞いた。
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ビジネスプロデュース局チームリーダー飯野正樹氏

―― スパイスボックスさんは2007年、ソフトバンクモバイルや三越、ファイブミニなど個性的な試みを手がけられました。この1年、どのような変化を受け取られたでしょうか。
皆さんも言われているように、以前はまず参入するという時期がありました。世間的には過剰な期待感も強かった頃なんですが、ただ、それでも結構クライアントの方は「よかった」と言ってくれましたね。それには、あらかじめセカンドライフのユーザー数などの状況を正直にお伝えしていたこともありますけど、「初めて」を経験できてよかったという声が多かったです。過度に期待せず、それでも目的として得られる部分を意識していたように思います。
そもそも新しい手段なので費用対効果の指標がないというのもあります。バナーやリスティング、アフィリエイトであれば、だいたい指標がわかるんですが、セカンドライフの場合は「何十人、何百人が来ました」といっても最初は多いのか少ないのかわからない。アイテム配布にしても同じです。それが、この半年やってきて、感覚値でつかめ始めたのかな、と。
ですので、この半年は記事として取り上げられることによるパブリシティ効果を広告費換算で指標としてお出ししていました。

―― 現在は過熱気味だった状況が落ち着き、「参入」が珍しいものではなくなるにつれてメディアで取り上げられる条件がシビアになってきています。そうした波は広告費換算の数字にも表れていますでしょうか。
ソフトバンクモバイルの試みが4月でしたが、それ以降広告効果としては減ってきていますね。年末にかけて「今年を振り返る」というような企画の中で多少露出が上がりましたけど(笑)
ただ、2007年はそれでよかったんですが、2008年は(バーチャルワールドサービスの)meet-meさんとかセカンドライフ以外にも本格的に始まってきます。そうした中で、広告効果のみを目的とするのではないビジネスを考えていく必要がありますね。バーチャルワールドに(建物など)箱だけ作るのではなく、ちゃんとそこに人を割り当てるなどして、企業本来のビジネスドメインの活動をやっていかなければいけないと思います。そうして、バーチャルワールドの活用も含めたビジネスモデルを作っていかなければならない。今はそういったものも含めた提案をしています。

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ファイブミニのプロモーションに登場した上野樹里さんアバター

―― 具体的にはどういった活用でしょうか。
バーチャルワールドは単純に「プラットフォーム」なんで、使い方は自由だと思います。一部で使うこともそうですし、これまでのようにバーチャルワールド内でキャンペーンやイベントもやるでしょう。今まで2DのWebではあまりやっていなかったリアルタイムでお客様に対応することができるようになったら、対応できる人材を派遣するビジネスが出てきたように、他の特徴からも生まれてくる可能性があります。

―― そうした活用を効果的にするために、留意すべき点はどういった部分でしょうか。
セカンドライフなどバーチャルワールドの中でないとコンテンツを体験できませんが、やはりそれだけだとコンテンツに触れるユーザー数は小さなものになってしまいます。なので、バーチャルワールドの中で起こったことをブログや動画で外にアピールしていくことが必要です。ご提案では「セカンドライフを使ってバズを外に起こしていきましょう」とお話しています。日産X-TRAILやファイブミニなどは、こうして動画やブログでセカンドライフ内の様子を外に伝えています。
これはキャンペーンサイトを作った場合を考えるとわかりやすいのですが、「作って終わり」ということはないですよね。やはりバナーをだしたりして告知していく。バーチャルワールドでの試みも同じで、中に作ったらきちんと外に告知して知っていただかなければ。
これまではパブリシティ効果が大きいので特に告知しなくてもよかったのですが、2008年はパブリシティ効果がなくても回っていけるモデルを模索する必要があります。

―― プラットフォームとしてバーチャルワールドの特徴を生かしたモデルですね。
文字だけではなくアバターとして「居る」ことで、完全なアノニマス(匿名)ではない感じというのも2Dとの違いとしてありますよ。その使い方にクライアント企業さんやユーザーの方が気付いていくと「ああ、そうだよね」と感覚として納得してもらえると思うんですが、これはまだ時間はかかりそうですね。

―― そうなれば、例えばWebとは違う接客方法なども可能になってきますね。
もちろん、課題はあります。例えば問い合わせ対応サービスで使った場合、100人が一度に来たらどうするのか、とか。メールであれば順番に対応しやすいのですが、リアルタイムでないといけない部分があるので。でも楽しみな使い方だと思います。
三越さんではオープン当日から1週間くらいは担当部署の方たちがアバターで身分を明かして対応してました。来てくださったお客様も、担当者が対応していることに興味を持って話してくださるということで新鮮な驚きをもったみたいです。

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三越セカンドライフ店

―― 担当者の人の存在を感じられるのはお客さんにとっても新鮮でしょうね。最近はある程度事例が出てきたことで、企業としても何ができるかが分かりやすくなって気がします。ただ、そのことで試みがパターン化する懸念もありそうです。期待するコンテンツの形はありますか。
リアルタイムでインタラクティブに提供されるセカンドライフ内のコンテンツって少ないんですよね。そろそろそういうのもほしいですね。例えば担当の人がいることで、それ自体がコンテンツになっている例もこれに入ります。ブレイクスルーとなる成功事例が出てくれば、今後提案しやすくなりますね。それと、企業でやることは難しくても、実験的に面白いことをやる個人の方がもっとでてくるといいなあと思います。サイトでいえば「バカバカしいんだけど面白い個人サイト」みたいな。そういう意味では、今のユーザーさんの活動は技術的な実験が多い気がします。もちろん、すべてではないですが。

―― なにかイメージはありますか。
リアルタイム性、同期性を生かしたサービスを探すとヒントにしたいものが出てくると思います。たとえば、昔、サイトにいろいろな命令を打ち込むと、画面上のチキンがアクションしてくれるのがありましたよね。あれみたいなが出てくると面白いですね。

―― それによってコンテンツを目的としてアクセスする人を増やす必要がありますね。
親和性が高そうなコンテンツの中では、キャラクターやゲームなどのコンテンツホルダーさんがまだあまり入ってきてないんですよね。期待しているところです。

―― 2008年はどういう年になるでしょうか。
今思うのは、バーチャルワールドコンテンツを作っている使っている人は、これも全員ではないですが、技術的な面が強いかな、と。かゆい所にまだ手が届いていない。そうした中に気の利いたサービスなりがでてくるのだろうと思っています。そこが一気にメジャーになるイメージです。それまでは混沌はまだ続く、と(笑)2007年がバブルで、2008年がやっと「正しく」黎明期になるというような感じだと思います。
私は「枯れた技術の水平志向」という言葉が好きなんですが、今のバーチャルワールドは突き詰めれば「アバターチャット」なのかもしれませんね。要素として3Dがありつつも。
広告としてはメディアミックスを前提として多媒体でも出していく必要があるので、それは進めたいですね。そして、お客様のビジネスドメインに沿った展開をしていければいいなと思っています。

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