2008年バーチャルワールドの展望を語る インタビュー

第2回「テレビ業界」第2部 日本テレビ 若井真介氏 / 安藤聖泰氏

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2007年9月、「日本テレビがセカンドライフ内で収録した番組を地上波でレギュラー放送する」という情報を聞いたのは、あるイベント取材の最中だった。それが関東地区で2007年10月から放映が開始された「デジタルの根性」だ。放映開始以来、セカンドライフでの番組観覧はいつも満員となっている。
「テレビ局はこれまでノウハウをテレビでしか生かしてこなかった」と若井氏は話す。テレビ局がバーチャルワールドで生かせるノウハウとはなにか。またテレビ局がバーチャルワールドから得られるノウハウとはなにか。日本テレビのバーチャルワールド活用の経緯と今後の展望について、日本テレビ放送網株式会社 編成局デジタルコンテンツセンター デジタル制作部長 若井真介氏、技術統括局技術戦略センター技術開発部 安藤聖泰氏の両名に話を聞いた。

【特集:2008年バーチャルワールドの展望を語る!】第2回「テレビ業界」第2部 日本テレビ 若井真介氏 / 安藤聖泰氏
編成局デジタルコンテンツセンター デジタル制作部長 若井真介氏

【特集:2008年バーチャルワールドの展望を語る!】第2回「テレビ業界」第2部 日本テレビ 若井真介氏 / 安藤聖泰氏
技術統括局技術戦略センター技術開発部 安藤聖泰氏

(インタビュー文中敬称略)
―― 地上波のレギュラー番組をセカンドライフ内で撮影するという試みはどんな経緯で決まったのでしょうか。
安藤「(2007年)3月くらいにセカンドライフで展開ができないかと考えて、当時はSIM(島)ではなく、実験的に(日本人居住区を運営している)マグスルさんの1区画を借りてやっていました。その後、マグスルさんの2つのSIM群が間に1SIM分空けて並ぶ形に移動するという話を聞き、そこに「SHIODOME ISLAND」をはさんだら面白いかな、という程度から始めたんです。セカンドライフはホームページと違って『となり』が見えるので、『あれはなんだろう』という気にさせるんですよね。そんな感じで興味を持ってもらえるのではと考えました。」
若井「7月くらいから自然発生的に各部署からセカンドライフの隠れユーザーが集まってきました。たぶん、うちの部署が『デジタル制作部』というなんとなくそれっぽい名前だからじゃないですか?(笑)そうしたら、うまいこと各部署の人がバランスよく集まって。クラブ活動みたいな感じでしたね。それで第1回会議をやっている最中に、例の電波少年のT部長(第2日本テレビ事業本部エグゼクティブ・ディレクター 土屋敏男氏)から電話がかかってきて『セカンドライフでなんかやんないか?』と(笑)お互い席は近いのにセカンドライフの話とかしたことなかったんだけど。そのタイミングはすごかったですよ。
で、話しているうちに番組にセカンドライフを『一部』取り入れてやってみないか、ということになったんです。でもそこはさすがT部長で『全部やっちゃおうか』(笑)」

―― (笑)
若井「『えーっ!』って(笑)」
安藤「最初は隔週で生放送という話までありました。ただ、番組は水曜の深夜なんですが、当時、水曜はセカンドライフのメンテナンスがあることも多かったので見送りました。」
若井「番組に合わせてSIMを開設して、両方がリンクしていくような形で行きましょう、ということになった。いろいろ調べた結果、これは世界初じゃないかと。」
安藤「『地上波でセカンドライフ内完全収録の番組をレギュラーで放映する』のは初めて(笑)」
若井「そんな感じでほんとに自然発生的でしたね。普通、こういうプロジェクトは命令があってリーダーがいて、という感じでやるんだけど、そういうのもなく、うまいこといきました。」

―― 制作はほとんど社員の方で行われたとか。
若井「すでに社内に演出家、CGグラフィックのセクション、プログラム書いてる人間もいるし、必要な人がそろっていて。そういう意味では制作の中心メンバーは5人くらいで。セカンドライフ内の一般ユーザーの方も関わってくれました。」
安藤「公式ブログも最初は数人だったんですが、だんだん隠れセカンドライフユーザーが社内から集まってきて『自分にも書かせろ』と(笑)そんな感じでセカンドライフ内のカフェにも人が来はじめたんですが、同じ社内とはいえ実際に会ったことのない人もいます。」

―― セカンドライフで番組を制作するということではどういった試みをされているのでしょうか。
安藤「番組演出もいろんなアイデアがでました。例えば、このHUD(セカンドライフ内でのインタフェース)を身につけると、こんな画面が出ます(画像参照)。これを操作することでコーナータイトルが定位置に飛び出してくるようになっています。ディレクターのアバターがこれを装着しています。」
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若井「テレビの仕組みとほとんど同じ。コーナータイトルで使う静止画のほかに、ビデオも普通の放送局で使っているスイッチャーみたいなものですね。こういったものは放送技術を踏襲しています。」

―― まずは自然発生的に始まったということですが、会社としてはどのような活用を考えているのでしょうか。
若井「自分の立場としては、次の段階でビジネスとしてどうやって展開できるかということを考えていくことがあります。
例えば、X-TRAIL JAMのSIMのプロモーションなどを行ってみたのですが、こういったように日本テレビのSIMから送客したりして、ポータルっぽい動きができないかなと思っています。
あとは無料テレビ。実際に最新ニュースが見られるテレビをアイテムとして無料で配っていて、これが結構出ています。」
安藤「セカンドライフのユーザーの方の中にはこれで世の中の動きを知るっていうこともあるみたいですよ。」
若井「これが数万、数十万台になれば動画CMを打つということも可能になってきます。あと、テレビの外見を、たとえばクライアントメーカー製のテレビのものに変えるとか。そういったことを見越して、サーバ側の設定で一斉に変えることができる仕組みも当初から織り込んでいます。テレビの外見と、そのテレビで流す動画CMをセットにするというのも面白そうですね。」
安藤「テレビを配っているところは他にもあるんですが、やはり(ニュースなどの)コンテンツがあるということが強みですね。」

―― セカンドライフを新しいメディアとして利用しようとすると、権利関係の課題もありそうですね。
若井「権利関係ということでいうと、うちの島では(ゲームやアニメのキャラクターのような)権利的にリスクがありそうな服装などはNGということにしていて、個別に着替えていただくようお願いしていたんですが、最近はみなさんもここはそういう格好はNGなんだと分かってきてくれていますね。」
安藤「最初の頃はそういったアバターを着ている方も番組観覧に来ていたんですが、最近はいなくなりましたね。」

―― 番組収録以外にイベントもやってますね。リアルでのイベントとの違いはありますか?
安藤「日テレジェニックのイベントもやったんですが、チャットだけだと本当に本人たちが操作しているのかわからないじゃないですか。なので、ボイスチャットで『え?これよくわかんなーい!』みたいな声もそのまま流しながら操作してもらいました(笑)。それと、最初は僕らがとなりについてちゃんと教えながら彼女たちにはしゃべってもらうだけかとおもっていたら、いやー、あの年代の子たちは早いですよ。」
若井「もう、どんどんチャット始めちゃってね(笑)」
安藤「話すわ、飛ぶわ(笑)イベントの運営というとお客さんを仕切るのが大変かと思っていたら、日テレジェニックの子たちを止める方が大変だった(笑)」
若井「ビジネス面でいえば日テレジェニックは子会社のVAPの事業なんで、これもその事業を支援するということでビジネスになっています。」
安藤「あと、普通、セカンドライフの中のイベントに来るユーザーは服装なども凝っている人が多かったりするんですが、日テレジェニックのイベントには白いTシャツにジーンズという登録したばかりの初期アバターの人も多かったですね。そういう意味では、かなりセカンドライフユーザーの新規開拓もしていると思いますよ。」
若井「たぶん、イベントに参加するために前日とかに登録してくれたんだろうな。こういうのも月1回くらいのペースでやっていきたいです。
それに、イベント運営に関してもノウハウを持っているので、そういう面をいかせたのもよかったですね。司会もリアルで司会しているプロだったり(笑)(著作権的に問題がありそうなアバターの対応など、)セカンドライフ特有の違いだけに留意すればいいですし。荒れるかな、という懸念はあったんですが、結局BAN(出入り禁止措置)せざるをえなかったケースは1件だけでした。」

―― 十分コントロールできる範囲だったと。
若井「来るユーザーの方も分かっている人がほとんどなんですよ。そこは、やはりセカンドライフをやっている人の意識の高さが出ている気がします。そうなれば企業さんもいろんなとこでスポンサードしやすくなりますよね。」

―― 広告媒体としてのバーチャルワールド活用の可能性はどうでしょう。
若井「『(コンテンツ中に広告商品を埋め込む)プロダクトプレースメント』としての使い方はあるんじゃないかと思います。
こないだ観覧にきたお客さんですごいカメラを持っている人がいて。今、そうしたカメラみたいな商品紹介というとサイトでフラッシュを使ってやってたりしますけど、(アバターを介すると)実際に持ってみたり、いじって体感するような、これまでとは全然違うアプローチができるんじゃないかと。これを広告主の人たちにも伝えていきたい。そうすると、広告媒体としてもバリューを持てるんじゃないか。車や住宅もアバターで体験するには適してると思いますよね。」
安藤「住宅展示場とか。土地代も安いですし。」

―― 今後、2008年からは動きは?
若井「2009年くらいまでにありそうなサーバのオープンソース化とかキャパシティの強化とかによる動きの中で、なにができるかという点を考える必要があります。で、そこで広告効果とかが本格的にでてきたら、そこからが勝負でしょうね。そこまでの1年ちょっとはノウハウを積み上げていく、と。」

―― ノウハウを積み上げていくひとつの方法として、セカンドライフでの収録番組はまずいつくらいまで続く予定でしょうか。
若井「それは編成の決めることだから(笑)3月まではやると思います。あとはセカンドライフ以外のメタバースもいろいろ出てきてるんで、それがつながれば面白いと思います。」

―― セカンドライフでのノウハウを生かして、他のバーチャルワールドを活用する予定は?
若井「今はまだセカンドライフのように(ユーザーがアイテムなどのコンテンツを作成できるような)CGMができるところがあまりない。みんなでいろいろつくったりできるのが面白いので、それはほしいですね。」
安藤「今の出演者の衣装はみなさんがくれたものを着ています。確かにナース服とか、偏ってますけど(笑)作者の方を紹介すると喜んでくれるし、そんなふうにみんなでいっしょに作っていく、というようなのがこの番組のおもしろいところだと思っています。『○○な人募集!』というのもCGM要素があるからできるという面もありますね。」
若井「こっちから全部一方的にネタを出すのではなくて、みんなで共有できるのが面白いと思っているんで。そのCGM的なものができるというのがひとつの条件になるとは思いますね。セカンドライフでできることも今後どんどんバージョンアップしていろいろ変わっていくだろうし、そういった更新感というのには期待していますね。」

―― 現在、そういった条件を満たしているのがセカンドライフなんですね。
若井「こうした仮想世界的なものって実は以前からありますよね。私も昔『ハビタット』(2Dのバーチャルワールドの祖先ともいえるサービス)になぜか入っていたことがあったんですが、なんだかよくわからなくてすぐにやめちゃった(笑)そうした話はセカンドライフでもよく聞きますよね。でも、そういった仮想世界的なサービスはいろいろな形でずっと続いていて、それがまた出てきた。」
安藤「たぶん、もともとやりたいことがあって、それにだんだんハードとかが追い付いてきたんですよね。あともう少しという感じ。」
若井「今後はSIMを拡張して、日本テレビのネット局を含めて参入支援できるといいかな、と。これまで、テレビ局ってノウハウをテレビでしか生かしてこなかったわけです。ネットも含め、テレビ以外のところでノウハウを生かせるところが出てきたんで、生かしていきたいですね。」
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日本テレビ 久保社長もアバターに。投資家向け説明会などで活躍する。

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