2008年バーチャルワールドの展望を語る インタビュー

第1回 リンデンラボ 土居純氏

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【特集:2008年バーチャルワールドの展望を語る!】第1回 リンデンラボ 土居純氏

今年の仮想世界を代表するサービスといえば、ほとんどの人がセカンドライフを挙げるのではないだろうか。2003年に開始されたセカンドライフは2006年後半から登録フローの変更などによりユーザー登録数が飛躍的に伸びてきた。今年は日本でも様々なユーザー主導による活動が目立ち始めると同時に、ビジネスインフラとしても注目され、企業の参入が進んだ年であった。また、クライアントソフトのオープンソース化や仮想世界サービスの相互運用を推進する活動も活発化してきており、各社との協力による今後の動きが期待されるところだ。
しかし、同時に様々な課題も見えてきている。こうした中、日本でセカンドライフの活動を支えるリンデンラボの土居純氏にこの1年と来年に向けての話を聞いた。

――土居さんがセカンドライフに関わったきっかけはなんでしょうか。
「アメリカの友人から『セカンドライフで会おう』と言われたのがきっかけですね。最初さっぱりわからなかったんですが、実際にやってみるうちに可能性を感じました。これを使うとどういうことができるだろうと考えているだけでワクワクしたことを覚えています。その後、昨年の8月にリンデンラボに入りました。」

――この1年はほんとに様々な動きがありましたが、こうした世の中の動きを実感したのはどんな時ですか。
「ITの世界は流れが非常に早いドッグイヤーの世界だといわれますが、メタバース業界はそれ以上でした(笑)。世の中の動きを最初に感じたのは、去年の暮れごろだったと思います。電車に乗っているときに中づり広告で『セカンドライフ』の名前を見たときはなんともいえない感動を覚えました。今や毎日のように動きを実感しています。1年間の間にこれだけ盛り上がるんだということに驚いています。」

――盛り上がりの一方で、セカンドライフの課題も挙げられていました。
「ご存じのとおり、セカンドライフもまだ始まったばかりでこれで終わりというわけではありません。操作性など現在の課題に関してもプロジェクトが進んでいます。また、クライアントアプリケーションをオープンソース化したことで、我々のみならず、各社がそれぞれサービスにあわせて改良したクライアントを作る動きもあります。デバイスも3次元の操作に適したものが開発されるなど徐々に環境は整っていくのではないかと思います。」

――そうした動きも含めて、今年印象に残った出来事を3つあげるとすればなんでしょう。
「セカンドライフは社会活動とも親和性が高いと思います。その意味で、新潟中越沖地震の被害に対する災害支援活動などユーザー主導の活動が出てきて、しかも結果を出したということはとてもうれしくて印象に残っていますね。
2つ目はセカンドライフ以外にも多くの仮想世界サービスが出てきてくれたことです。『自分たちは間違ってなかったんだ』と安心しました(笑)。それぞれのサービスが特徴を持って皆で盛り上げていける、エキサイティングな時期だと思っています。
そして3つ目は、なんといっても、こうした活動を通して多くのイノベーティブな方と出会えたことですね。」

――なるほど。少し気が早いかもしれませんが、これから先、来年はどうなっていくでしょうか。
「よく将来のことを聞かれるのですが、正直言って私にもわかりません(笑)逆に当社が提供するオープンソースやAPIを活用してどのような試みが出てくるのかとても楽しみにしています。APIの提供は今後も進めていくので、各社がこうしたツールを使って様々な体感を作り上げていくことになると思います。日本のコミュニティはやはり日本人が作っていく形になると思いますが、こうした動きの中で企業と住民の方がコラボして展開していけるといいですね。
例えば、今でも音楽などのアート的な活動が盛り上がっています。現実のアーティストとセカンドライフ住民とのコラボなどもすでにありますし、逆にセカンドライフの中の活動を現実にフィードバックする動きもありますね。仮想世界のような新しい技術は、まず表現手段として使われていくと思います。
また、10月に発表させていただいたようにIBMなどと仮想世界の相互運用についての検討を進めています。これもどんな広がりをみせるのか、楽しみです。」
土居氏の言うドッグイヤーを超える仮想世界の発展スピードはユーザーとの協調によって得られた部分も大きい。2007年の日本で仮想世界といえばセカンドライフを指すことが多かったが、2008年は日本でも多くの仮想世界サービスが動きを本格化してくるだろう。今度は各仮想世界サービスがそれぞれの特徴を生かすことによって、業界全体のさらなる発展につながることを期待したい。
次回はテレビ業界の取り組みについて、各局プロジェクトのキーマンに語ってもらう。

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