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【3Dインターネット・カンファレンス レポート】 国内企業の仮想世界参入の効果は?

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11月7日、東京・六本木の東京ミッドタウンにて、日経ネットマーケティング主催の「3Dインターネット・カンファレンス」が開催された。
これは同日同場所で開催された「NET Marketing Forum Fall 2007」と同時開催のイベントで、各社の代表者及びマーケティング担当者が国内の仮想世界におけるマーケティングの現状について語った。

まず最初に、みずほコーポレート銀行産業調査部情報通信チーム・調査役の野田聡明氏が「メタバースとアバターがもたらすインターネットの新たな進化。その課題と可能性」と題し基調講演を行った。
【3Dインターネット・カンファレンス レポート】 国内企業の仮想世界参入の効果は?
野田聡明氏
野田氏はまず同社の仮想世界分野における活動やセカンドライフの概要などを説明。そして三越やオリックス不動産、PARCO、日産自動車のX-TRAILのアトラクションなどの企業の参入事例を例に比較・分析。先日セカンドライフから撤退したアメリカンアパレルの例も挙げ、既に「セカンドライフに参入したら話題になる」というようなパブリシティ効果は減退し、企業の関心は「今までのWebと何が違うのか?」「どのような利用の可能性・課題があるのか?」など、より本質的なところへ移っているのではないかと分析した。
午後からは博報堂DYグループの相川雅紀氏をモデレータに、パルコシティ取締役の守永史朗氏、日産自動車の工藤然氏、マイクロソフトの関田文雄氏、デジタルハリウッド大学院の三淵啓自氏のメンバーでパネルディスカッション「仮想空間/3Dインターネットにマーケッターはどう向き合うべきか?」が行われた。
【3Dインターネット・カンファレンス レポート】 国内企業の仮想世界参入の効果は?
相川雅紀氏
【3Dインターネット・カンファレンス レポート】 国内企業の仮想世界参入の効果は?
(左から)守永史朗氏、工藤然氏、関田文雄氏、三淵啓自氏
冒頭、相川氏は博報堂DYグループがフジテレビと共同で行った「バーチャル世界柔道まつり」を紹介。これは「世界柔道2007」と連動したセカンドライフ内イベントで、谷亮子選手ら5人の選手のアバターを作成して一般ユーザー相手に決め技を披露するというものだった。
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この試みは話題となり、世界柔道2007開期中の3日間で498人のユニークユーザーがイベントに参加し、その総滞在時間は205時間37分にも及んだという。
さらにセカンドライフのインワールドだけでなく、セカンドライフを利用して作ったマシネマCMも好評で、ユーザーが作成した動画もYouTubeにて累計2000回以上再生されたとのこと。
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余談になるが、この時紹介された”ユーザーが作成した動画”は筆者が撮影したものだった

その後、各社の参入事例が紹介された。
パルコシティは2007年6月にセカンドライフに参入。バーチャル・モールを建設し、実際にショッピングモールで販売している洋服をアバター用のアイテムとして再現し、バーチャル・モールを訪問したユーザーに無料配布した。結果、配布数は合計で600着以上にも上ったという。
さらに同社はバーチャル・モールの模様やセカンドライフで製作したマシネマCMを渋谷の街頭ビジョンやサイト上でも公開した。

守永氏は「セカンドライフは商品を販売するビジネスの場ではなく広告メディアとして使うのが妥当だろう。しかし、セカンドライフに毎日ログインしているへヴィ・ユーザーが当社のメイン・ターゲットなのかどうかは分からない。当面は二次的な広告効果を狙うのが良いのではないか」と語った。
日産自動車は、同社のSUV車「NISSAN X-TRAIL」のプロモーションSIMを開設し、同社がスポンサーになっているスノーボードイベント「X-TRAIL JAM」と連動したアトラクションを展開している。
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日産は北米が先行してセカンドライフに参入しており、SIM内にある巨大な「自動車自動販売機」がセカンドライフの企業参入の代表例として日本でも大きく報道された。
工藤氏は「セカンドライフ参入のPR効果を狙うなら2007年の夏が最後のチャンス。セカンドライフへの参入を狙うのなら、日本語版が登場した今しかない」と強く語った。
現在、国内日産のSIM「NISSAN X-TRAIL ISLAND」では、アバターが実際にスノーボードに挑戦でき、その技の決め具合によって様々な遊び心溢れる無料アイテムを配布するキャンペーンを行っている。
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無料アイテムの中には「骨折用のギプスと松葉杖」も…
工藤氏は「ユーザーは『ここが良い、悪い』とチャットで発言してくれる。その声を聞くためにも、友達と一緒に何度でも遊びに来たくなるような仕掛けが必要」と語った。
マイクロソフトは今年9月に、イベント「REMIX07」を日本製仮想空間「splume」内と連動させる形で開催した。
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関田氏は、同社が仮想世界参入を決めるきっかけとなったことの一つが、同社の”歴史的失敗”と言われている「Hailstorm(ヘイルストーム)」であると説明。
氏曰く、「Hailstormは、現代の言葉で言えば「Webプラットフォーム」で、Googleが普及させたWebカレンダーのようなアプリケーションを実現できるものになるはずだった。」とのこと。しかし、マイクロソフト1社のみで実現しようとしたために同プロジェクトは失敗してしまったのだという。
その失敗を踏まえ、「REMIX07」はマイクロソフトのエゴを弱めて、一般ユーザーも積極的に参加する”参加型イベント”とするために仮想空間「splume」との連動を考えたとのこと。実際に、splume内でユーザーが参加しての「川柳大会」を開催したところ100名弱のユーザーの参加があったとか。
【3Dインターネット・カンファレンス レポート】 国内企業の仮想世界参入の効果は?
しかし開田氏は「splume自体は数千人が同時に参加可能なものだが、あまり人数が多くなっても画面が乱雑になってチャットが読みにくくなる。だからイベントの参加人数としては最高でも100人ぐらいがちょうど良いのではないか」と分析した。
デジタルハリウッド大学院の三淵教授は、「セカンドライフでは、ユーザーがその場にいないと楽しめない”同期型”のコンテンツが人気を集めている。そのため、セカンドライフ自体が同期的なメディアなのではないかと言われることがあるが、セカンドライフの中には同期型のイベントもあれば博物館のような非同期型のコンテンツもあり、同期・非同期どちらの面も持っている」と語った。
氏によれば、電話よりもメールが、テレビよりもWebが便利と言われているのは、いつでもユーザーが好きな時にコンテンツを利用できる「非同期型」なためで、「同期型」のセカンドライフは成功例に反するとするという意見もあるそうだ。
その「同期型」の弱点を補うため、氏はセカンドライフ内にイベントの中継放送を行う放送局「Virtual World Broad Casting」を立ち上げたという。8月に開催した24時間イベント「SL24 ザ・夏祭り2007」ではセカンドライフ外からも視聴・参加するユーザーが集い、延べ2000人ものユーザーが何らかの形でイベントに参加したとのこと。
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